「あー直哉さんって普通に人使い荒いんだよなぁ……」
俺は秋葉原の家電量販店で指定された品物をいくつか見て周り、値段の安いものを
探していた。
指定するだけ指定しておいて、その資金をもらうことを忘れていたため、すべて自
腹で買う羽目になったっていう……俺って馬鹿?
いちおうひととおりは買い揃えて、あとは2,3個の部品を残すのみだった。
今は近くのベンチで休憩中だった
「んーこれとこれがあるってことは多分…プロバイダー経由なのか?それとも多段
ルータを使うのか?」
俺がメモを眺めながら直哉さんがどんなプログラムやシステムを組むのか予想して
いたとき

「あっ…アツロウ?」
横のほうで知った声が聞こえた
「!」
見ると、つい4日前までは一緒に封鎖内で行動していた慶介だった
俺とミタカが直哉さんに着くと知って、袂を分けたのだったけど…
俺は慌てて立ち上がり、急いで走り出した。
何故走ったかは自分でも良く分からなかったけど、後で思い返すと 正義感の強い
ケイスケに、俺たちのやっていることを非難されて罵られるのが怖かったのかもし
れない。
「待って!アツロウ! 何で走るんだよ」
ケイスケはすぐに追いかけてきて俺の肩を掴む
荷物が多かったのが仇になったみたいだ
「………………」
俯く俺に、ケイスケは
「………ちょっと、話をしない?」
と俺がさっきまで座っていたベンチを示した。
俺はそれに促されるまま一緒にベンチにすわった
「今日、自衛隊とかアメリカ軍が来てたけど…怪我しなかった?」
ケイスケは俺が考えていたのとは違う言葉を発した
俺はてっきり魔王になって神を倒すことをやめろとか そういうことを言われるん
じゃないかと思ってたのに
「…いや、大丈夫だったよ 俺は、吸収追加で怪我一つしなかった 破片被って身
体全体がじゃりじゃりしたけどな」
と苦笑いすると、ケイスケも笑みを返した
「うん、見てたよ 月森君の様子がおかしかったけど…何かあったのかい?」
と心配そうに尋ねてきた
「よく見えたな そこまで」
と俺が言うと
「近くのビルの屋上に上ってね、ユズさんとミドリちゃんとで見てたんだ。 ユズ
さんがすごく心配してたよ、彼のこと」
「そっか…」
ユズたち、俺たちのやり方についていけないっていってたけど…
まだ心配してくれる“友達”でいてくれてんのかな…
「アイツ、な……直哉さんが言うには、ベルの力が暴走したんだ って…今はヒル
ズで休んでるよ」
「そっか……これって急に起こったものなのかな…急に魔王になったから……」
「いや、そうじゃないみたいだ 封鎖中も…ホラ、ベル・デルとベル・イアルを倒
した日の夜もあったし…」
俺が説明を付け加えると
「えぇっ!? なんで言ってくれないんだよ!」
案の定ケイスケも怒った
「わ…わりぃ……あいつも自覚して無くてさ…不安あおるよりは…って思っちまってさ」
「そう………」
ケイスケは釈然としないようだったけど、その辺の事情は汲んでくれるみたいだった
「で、今君たちは……その、神を倒すために…動いてる、んだよね……」
ケイスケが言いづらそうに言う
俺も正直その話題は今こいつと話したくなかった けど、袂を分けた後でも心配を
してくれる三人に対して、それは失礼だと思った。
だから俺も、話せる範囲でしっかり話をしておかないといけない。
「……ああ、そうだよ」
「それは、あの 月森君の従兄の人の意思なんだよね?……それとも アツロウも
神を倒そうって、ほんとに思ってるの?」
ああ、ケイスケは 俺やミタカにも神を倒す意思があるのか ってのが知りたいんだな…
意思も無いのにそんなことする必要はない って心配してくれんだな……
「…俺は正直、まだ迷ってるよ ミタカは…どうだろう 神を倒す意思かは分からないけど、
アイツに前訊いたんだけどさ…ほら、悪魔の中にはさ 神話の中の存在とか多いじゃんか?」
いきなりの話題の飛躍に若干呆然としつつも、ケイスケが話に付いてくる
「? …ああ、うん そうだね……シヴァやアマテラスなんかはわかりやすいね」
「うん、そうなんだよ で、ミタカがさ、あいつ すげ―本読むんだよな それも
節操無く、だからさ神話とか伝承もそれなりに知ってて、前にアマテラスに訊いてたんだよ
“日本の象徴である天皇の血統である天照大神が、なんで魔界で悪魔なんてやってるのか”って」
「またすごいことをするね……」
ケイスケが驚く
「ああ、俺も思った……で、アマテラスはさ それに対して、こう言ったんだ…
“確かに、日本は私が主神として祀られておりますがその日本に封鎖を行うように指示したのが
貴方がたのいうキリスト教というものの神である ということに疑問をもたれましたか?”って 

そこでミタカは“そういえばそうだ 言われてみればおかしい”って言ったんだ…

で、アマテラスは“現在日本では…いえ、日本だけで無く、他の国でも同じなのですが…
絶対的な 神 というときりすと教の神がイメージとして根付いているんですね。
これは、近代化によるわれわれを祀り、信仰する…貴方がたの言葉で言う…
宗 教…の力が弱まっているんですね それと、われわれは紀元前より世界のあちこちに存在しておりましたが、
西暦元年…つまりきりすと教の起こった年… このときに、世界の運行の全てを、今の神が握ってしまったのですね
 それで、われわれ他の神は 悪魔 として魔界におとしめられ、今にいたるというわけですわね”って」
「ベル神と同じだ……!」
ケイスケが驚く
「ああ、ミタカも同じようにいったんだ それで、アマテラスは今の世界についてさらにこんなこといっててさ…

“かつて世界は天界も魔界も人間界も同じ時空に存在していたんですね…
 北欧神話でいうアスガルド とミドガルド それと ニブルヘイム…でしたっけ…
 まぁ、それみたいなもので、それで、我々は我々で、また、人間は人間で暮らしていたんですね。
 超常の力を持つ我々を人間は恐れ、あがめ祀っていたわけなんですが…
 その中で最も力をもっていたベル神がいまの神により倒され…その神によって、
 世界は天界、人間界、魔界と時空を分断されるのです。当事は我々もまだ天界にいたのですが…
 われわれと世界を分断された人間たちがせめてもの統合の象徴として作ったバベルの塔を見た神が、
 人間の結束の力を恐れ、その言語を分断 そして、大天使長ルシファーの反乱により、
 我々も同じように反乱するのでは…と恐れ、彼と彼を補佐する天使たち以外の神、あるいは精霊、
 あるいは妖怪などをすべて魔界へと堕としたのですね。それで、人間界はかつて我々や
 精霊たちと暮らしていた頃のなごりとして、神話や伝承だけが数多く残った…
 というわけなのですね”って…俺、それきいて、ますますわかんなくなっちまってさ…」
「それは……また衝撃的な…」
さすがのケイスケもあまりのことに言葉が出ないみたいだった。
「俺は、正直どうしたらいいのか分からない アマテラスの話を聞く限りは、
 確かに元凶?とかは今の神かもしれない、けど 封鎖内で悪魔…っていっていいのか?
 まぁ、悪魔に人間が襲われたのも確かだ。悪魔は今ミタカが統率してるから大丈夫だろうけど…
 魔界にマッカって通貨があるみたいに、あっちにも国や町があるんだってジャア君が言ってた 
 だから、その時空の分断?とかを壊したりとかそういうことはしたらいけないと思うんだ…
 けど、神が言語を分断したのって、俺たちのためとかじゃなくって、あれの都合だろ?
 だから、そんなのに世界を任せていいのか…でもだからって人間が世界を支配するのは結局同じなんだよな……
 ああ、悪い 俺もまだよくわかんないんだ」
俺は考えるまましゃべってたら、なんか分けわかんないこと言ってたみたいだ。
「まぁ、確かにアツロウが悩むのも仕方ないんじゃないかな……」
ケイスケは今の俺の悩みが理解できたらしくて、同じく悩むような顔をしている
「まぁ、ミタカは俺と違ってその辺の理解力はあると思うから、ただ神を倒すって
 ことだけ考えてるわけじゃないと思うぜ」
俺の言葉にケイスケは
「うん、彼は封鎖内でも僕たちを引っ張ってくれてたもんね……」
「ああ、俺は あのときあいつに頼りすぎてた だから、今度は俺があいつを支えてやらなきゃ…」
ケイスケは
「そっか、神を倒す意思とかはまだ分からないけど、アツロウは月森君の助けになりたいんだね」
なんかケイスケなりに納得してくれたみたいだ
「うん? うん、まぁそうだな…そんな感じ…なんだろうな」
「僕はもうこのことに関しては何もできない、けど2人が今後も無事であることを願うよ」
「ありがとな」
「……うん、そういえば今日はどうして秋葉原に?あの騒動で疲れてるだろうに」
「ああ、直哉さんが…ってコレ言っていいのか?……まぁいいや なんかヒルズの
 セキュリティを強化するらしくってさ…その部品の買い物」

「そうなんだ…ここに来る前にユズさんが月森君のお見舞いに行く 見たいなこと
 いってたから…もし会ったら会わせる事 できないかな? すごく心配してたから」
「うーん…どうだろう まぁ、善処するよ」
直哉さんがなんていうだろう…まぁ、ユズ見ただけで決意が揺らぐような奴じゃな
いと思うけど…ミタカは…
「うん、頼むよ 後さ、封鎖最終日に空が真っ赤になっただろ?でも今は元に戻ってる
 これはどういう原理でやったの?」
ケイスケが俺たちと別れていた後のことを尋ねてきた
「んーとな、あの時 ベルの力の大元のバベルはベリトの手によって魔界にある って話は聞いたんだっけ?
で、それをミタカが手にするのに、ここと魔界を一つにしないといけなかったんだってさ 
直哉さん曰く で、アマネが前に倒した浅草のジゴクテン以外の四天王を倒して…
あ、こいつらは東京と魔界を隔てる結界を維持する役割だったらしいんだけど…
で、そいつらを倒して、魔界化したから世界が真赤になったんだってさ」
「…それ、危なくなかったの?」
今更だけどと前置きしながら、慶介が聞いてくる
「ん〜これも直哉さんからの受け売りなんだけどさ、あと数日もすれば霊的因子?
 のバランスが崩れて人間界は魔界に呑まれたんだってさ…だから、危ないのに何も
 しないのと変わらないってことで、倒したんだ で、その後にミタカが魔王になって、
 魔界つなげたままじゃ神倒して試練の足かせをはずすのに人間界がなくなって意味がない 
 ってことになって、合体で四天王…ジゴクテンだけ作れなかったんだけど…こいつらに
 また結界を張ってもらって、封鎖が起こる前の状態と同じにしてもらったんだ。
 悪魔召還も一応俺たちだけがやってるからバランスはそんなに崩れないみたいだ。
 オークションでも分かるようにさ、悪魔使いは俺たちだけじゃないから多分大丈夫だと思うぜ……
 まぁ、俺たちがやってることは大丈夫じゃないんだろうけどな……」
「なるほど……ごめん、アツロウ いろいろと話させて…なんかスパイみたいで…」
ケイスケが神妙な顔をしていう
「いいって、きにすんなよ 直哉さんも言うななんていってないし…
 それに、俺も誰かに話聞いてもらいたかったしな、まだ迷ってるけど、俺には俺のやるべきこと
 がわかった気がするからさ それに…賛同して無くても、理解してくれる人がいるってのは やっぱ大事だと思うんだわ 俺」
そう言って俺はベンチから立ちあがった。
「いくのかい?」
「ああ、あと2,3個買い残しがあるんだ」
「そっか、気をつけてね」
「ああ、サンキュな ケイスケ」
俺はなんだか軽くなった気持ちで残りの買い物を済ませ、帰途に着いた。



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