アツロウたちが出て行ってから、俺は管制室のPCを操作し、ヒルズ内の警戒レベル
を引き上げ、窓を含むすべての出入り口をロックした。
夏場だが先端技術の集まったこの建物内ではクーラーが完備されており、外の気温
など関係無い。
アツロウに頼んだ機器が届くまであまり作業は進まないためその間先ほど様子のお
かしかったミタカの様子を見に行くことにした。
建物のちょうど中間の階には、食堂や仮眠室などの事務とは関係の無い部屋が多く
、俺たちはそこをプライベートルームとして利用していた。ミタカは自室ではなく
空き部屋になっている仮眠室のベットに寝かせ、アマテラスに任せておいたが……
果たしてどうなっていることやら
ガチャリ―――と戸をあけると、
なかなか壮観な景色が広がっていた
もともとそんなに狭くは無い部屋に置かれたいくつかのベットのシーツやマットは
引き裂かれ、壁は若干へこんでいる。
あえて表現するならば、地震の後の惨状と大差が無いだろう。
「…………」
俺が部屋の入り口でその惨状を眺めていると
奥の方にいたらしいアマテラスが俺を見留めて近寄ってきた
「あら、直哉さん」
「どうだ、ミタカは」
たずねると、アマテラスはため息をついて
「……なんとも言えませんわね」
と言った
確かにこの部屋の惨状を見てあいつが大丈夫と思う奴はいないだろう
「S魔導結界・陽をつけていらっしゃったので、ギガジャマでスキルを封じるんです
が…如何せんあの術はすぐに解けてしまいますから…それで時たま暴れましてこん
な状況に……今は多少落ち着いてますがたぶんまたすぐにでも暴れなさるかと思い
ますのでご注意を」
アマテラスの先導で奥へ進むと、入り口近くよりもさらに物が散乱し破壊されたそ
の中心に、ミタカが立っていた。
「…………………」
きていたマントはズタズタに破け、壁の破片か何かで切ったのかだらりと下げた腕
からは血がにじんでいる。
もっとも、傷の名残はその血だけで、先ほどの銃創と同じく傷自体はすでにふさが
っているようだったが。
入ってきた俺の気配を感じたのか、ぴくりと肩が震え、次の瞬間には
まっすぐにこちらに襲い掛かってきた
(やれやれ…見境すらもついていないとはな)
俺はそれを避けず、あえてそのまま押し倒される
「直哉さん!?」
アマテラスが助けようとするが、俺はそれを手で制し、俺の上にのしかかり今にも
技を繰り出しそうなミタカを見据える
「………………」
「――……………」
ミタカの眼は俺のそれと同じように真赤に染まり、そこに意思の光は無く、無表情
で虚ろだった。
俺は軽くため息をつくと、そのままミタカの眼前に手をかざし、技をかける
“ギガジャマ”
「!?」
するとミタカが驚いたような顔をして、俺の上から跳び退る
俺は起き上がると距離をとったミタカに声をかける
「お前の力はそんなものか?たかだかベルの力を取り込んだくらいでその力を律し
きれず、あまつさえ暴走を許すとはな……ルシファーにすら認められた、この俺の
弟であるお前の力とは……その程度か?」
そういって軽く凄んでやると、ミタカの発していた殺気が緩み、眼が元の青みがか
った墨色に戻っていった。
「……直哉………」
「ようやく気が付いたか」
「おれ………ヒルズの…屋上に……いたんじゃ…なかった………っけ……?」
「!」
そういいながら力が抜けたようにまた倒れてしまいそうになるのを、駆け寄って支
え、そこまで破壊されていないベットに寝かしつける。
「……事情は後で説明してやる、今はとにかく休め」
返事は無かった
それはすでにこいつが眠りに落ちていたからだろう
「さすがですわね 一時はどうなることかと思いましたよ」
アマテラスに後を任せ、俺は部屋を出た。
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