俺たちはミサイルの根幹を断つために直接戦闘機を攻撃に行った直哉さんの抜けた
穴を埋めるべく、
ヒルズを囲むようにたった場所から、ヒルズ屋上に戻ってきた
そして、
それと同時に、ミタカが撃たれた
うずくまるミタカに駆け寄りたかったけど、やむことの無いミサイルがそれを阻んだ
「ミタカっ!!」
攻撃をしながらも叫ぶけれどミタカはうずくまったまま動かない
ヤバイ!
早く治療をしないと
いくらミタカが魔王になったからって、身体はまだ人間のはずだ
「くそっ」
俺は目の前のミサイルをすべて壊し、連れていたセイテンタイセイとレギオンに後
を任せて身を翻した
ヒルズはなかなかでかくて、すぐにミタカのそばまで行けない
・・・はやく、早くしないと・・・
焦りが余計に足をもつれさせて、思うように身体が進まない
それでもようやく側まで来てその身体を支えようとした時
ふいにその身体が掻き消えた
「え?」
空を掻く俺の手の先には何も無く
周りをみても見当たらない
「ミタカっ? どこだ!」
すると上空から
「アツロウ上だっ!」
戦闘機の破壊を終えたのか、直哉さんがこちらに戻りながら叫んでいた
上?
俺が上を見ると
ミタカは屋上のさらに上空に浮いていた。
「・・・ミタカ?」
「――……………」
呼んでも聞こえていないのか
上空で静止したままあいつは動かない
「おい、だいじょぶなのか? ミタカ!」
もう一度叫ぶと、今度は聞こえたのか 顔をこちらに向けた
「!?」
そのとき、フードの下から見えたあいつの目は
いつもの蒼っぽい墨色じゃなくて、
血を流し込んだみたいに真赤だった
―――あれは、あの眼は
封鎖中の……
俺はその目を知っていた
ユズやみんなが不安になるからと思って黙ってたけど
アイツがあんなふうになるのを俺は前にも見たことがあった。
封鎖の3日目と6日目 ベル・デルやベル・イアルと戦った日の夜
夜中に眼が覚めたときに、ミタカがいなくなっていて
探しに行ったらあいつは誰もいないところで仲魔も召還せず悪魔を一体残らず倒し
ているのを見つけた
・・・・・・倒している というよりは 俺には一方的な虐殺に見えた
そのときに長めの前髪からちらっと見えたのが、あの眼だった
朝になってそれとなく聞いてみたけど
アイツは「知らない」っていうから、俺が寝ぼけたんだと思っていた
けれど
6日目も同じようにふらりと姿を消して同じように悪魔を虐殺していて
夢じゃなかったんだと確信した
アイツがどうかなるんじゃないかと思っていたけど
その2日間以外は普段どおりで、俺の杞憂だと思っていた
「アツロウ ミタカをとめろ!!」
直哉さんの声に俺は我に返って
もう一度ミタカを見ると
アイツの広げた両手のあたりに魔力が渦巻いているのが見えた
あれは、確か永田町で戦ったルシファーとか言う悪魔の技………
フィールド上にいる敵全員に万能属性で最大ダメージを食らわせる―メギドラダイ
ン―とかいう奴だ
「そんなもん放ったら この辺一体全部死んじまう! おいミタカやめろ!」
―――殺したらまた面倒になるからね
作戦会議であいつが言ってた言葉を思い出した
けど今、それを言ったあいつ自身がその言葉をぶち壊そうとしている
このままじゃミタカが人殺しになっちまう それ以前に 本当の魔王になっちまう
それだけは、それだけはやめさせないと・・・!
「クソッ セイテンタイセイ!」
俺は直哉さんが戦闘機を倒したことでミサイル攻撃が止み、待機状態になっていた
仲魔を呼び、
どうやってとめるかとか そんなことは一切考えず
とにかくアイツの所まで行こうとした
(ヤバイ まにあわねぇっ!!)
あと数十メートル、というところで
ミタカが技を放とうとした
そのとき
「ぐうっ!?」
「!・・・直哉さん・・・・・・」
俺が行くよりも早く
直哉さんがミタカのところにたどり着いて
その鳩尾に拳を叩き込んだ
両手に溢れていた魔力が霧散し、ミタカは失神したらしく
目の前で拳を繰り出した直哉さんにもたれ掛った
「危なかったな」
直哉さんがミタカを担ぎながら言う
「すんません 俺、間に合わなかったっす」
俺が謝ると
「いい、気にするな 先ほど向こうにロキを向かわせた ミサイルはもういいだろ
う 俺はこいつを中に運ぶ、お前は下の後始末を手伝って来い 奴らが撤退したら
デカラビアに周辺の警戒を任せて、お前らは戻って来い いいな」
そう言って無限の具足か飛翔でその場から掻き消えた
俺は仲魔に下に運んでもらって、マリ先生とカイドーと一緒に自衛隊を倒すことに
専念した。
その間もミタカのことが気になってあまり集中できなかった
その後暫くして自衛隊は撤退していって、アメリカの戦闘機も(直哉さんに壊され
たもの以外は)同じく撤退していった
俺たちはデカラビアとオーディンに後を任せて ヒルズ内に戻って来た。
「オイ」
廊下を歩きながら、カイドーが俺に声をかけてきた
「何?」
「ミタカだがヨ・・・アイツどうしちまったんだ?」
「なんだか様子がおかしかったみたいだけれど・・・」
マリ先生も言う
「俺も・・・よくわかんないんだけどさ・・・・・・」
俺はさっきの顛末と、封鎖中に俺が見たことを説明した
・・・・・・・
説明を終えた後、カイドーはいきなり俺の胸倉をつかみ上げた
「馬鹿かテメェはっ!!」
さすが(元、というべきかも知れないけど)不良のリーダー 俺はその剣幕に思わず
首をすくめる
「タダシ君 乱暴は…」
マリ先生が止めようとするけど
「うるせぇっ!」
カイドーはそれを一蹴して俺に向き直る
「何で、そんな大事なこと俺たちにいわねぇんだよ!いえねぇってのか? なら 俺たちは仲間じゃねぇってのか!? あぁ?」
「違う、そうじゃないさ…忘れてたんだよ…あいつ、普段はああだから………」
俺は精一杯言い訳するけど
「それが馬鹿だってんだよ アイツは、普段どおりでも “人間”で魔王になっち
まったんだ 何も無ぇわけがねぇだろ! なんかあってからじゃおせえんだヨ!」
「!!」
・・・そうだった、アイツは自分の意思でも、人間のまま万魔の王なんてものになって
まだ不安定なんだ、・・・俺は、まだアイツに頼ったままだ…
うつむいた俺に言い過ぎたと思ったのか、カイドーは胸倉をつかんだ手を離して、
また歩き出した
「……まぁ なんだ 分かったならいい 次気ぃつけろ……行くぞ」
俺が乱れた襟ぐりを直していると
マリ先生が
「ふふふ…タダシ君は友達思いだから……乱暴したこと 許してあげてね?」
といって笑った
「…マリ先生」
「何?」
「俺……封鎖中も ずっとアイツに頼ってたんすよ 最後の決断とかそういうのも
全部あいつに任せて…あいつの負担とか、封鎖内でアイツも参ってるんじゃないか
ってこと あんま考えて無くて……そんなんじゃ、アイツの親友 失格ですかね……」
思わず本音が口をついて出ていた。
(…やべ、俺 何いってんだ急に……)
内心羞恥とかその他の感情で真赤になった俺に マリ先生は
「そんなこと無いと思うわ やっぱりいきなり魔王っていうのは不安だと思うし、
それに会って日が浅い私やタダシ君だけじゃミタカ君も遠慮してしまうかもしれな
い けど、アツロウ君が一緒で、気の許せる人が側にいるっていうのは 案外安心
するものなのよ?」
そういって微笑んでくれた
「そ…ですかね」
「そうよ、みんなで支えあって生きていくのよ」
そう言って歩き出した
「オイ、行くのか?いかねーのか? 早くしろよ」
カイドーが少し先で立ち止まって俺たちを催促する
「あ、ああ 今行くよ!」
俺たちが部屋に入ると 直哉さんはPC端末に座って何か作業をしていた
「ふ・・・アメリカ軍は俺たちをどうにかすることをまだあきらめていないらしいな」
「どういうことだ?」
カイドーが聞くと、直哉さんはPC画面の一つを反転させて俺たちに見せてくる
また英語の演説で、今度はニュースの画像なのか下に字幕がついている
“この圧倒的戦力を放置するわけには行かない”
“人間の脅威”
“戦争の発端となる可能性も…”
などという文章が見える
「ハッ 負け犬の遠吠えだろうがヨ」
カイドーが不愉快そうに吐き捨てる
「そうだな 奴らはいま軍事力の40%を使用不能にされたからな 暫くは動けん
さ 今はその修復で手一杯だろうな」
と笑う
「それで・・・ミタカ君の異変については何かわかったのかしら?」
マリ先生が聞くと
「ああ、単純に言えば―――ベルの暴走だな」
「暴走 だと?」
直哉さんの言葉に、カイドーが聞き返す
「何だ じゃあアレか、倒したベルの悪魔がアイツん中で暴れてるってのか?」
「いや、そうではない ベルの悪魔自体は倒され、力となってミタカに吸収され一
つになった…だが、アイツの身体は他とは違うとはいえ、人間と代わりが無い 基
本俺たちはスキルを精神力を使って放つが、アイツが得たものは魔力だ 馴染むの
に時間がかかるということさ」
直哉さんの説明に、俺たちは納得する
「で、今はどうなってるんすか?」
俺の質問に、直哉さんは
「今は仮眠室でアマテラスに看病させている 正直前例が無いからな、いつ目を覚
ますかは分からん」
「それ、大丈夫なんすか?」
「問題ない、あいつは普通の人間とは違い少々特殊だからな…」
「? どういうことだ?」
カイドーの質問に
「気にするな とくに今後に関係する話ではない」
「…そうかよ」
カイドーは釈然としない様子だったけど、あっさり黙った
「これからどうします?」
マリ先生の質問に直哉さんは
「…悪いが、各自怪我の治療や着替えなどが済み次第、2時間ほど外へ出ていろ」
「………………………?」
「何でです?」
全員が疑問の表情を浮かべたけど、俺が代表して聞いてみた
「あぁ、ここのセキュリティを強化せねばならん…ここの基礎セキュリティは以前
のままだから以前ここに勤めていた連中のパスが有効な可能性がある また、ヒル
ズの広さに対してこの人数では警備もなにもあったものではないだろう?」
直哉さんの言葉に、俺たちはまた納得する
「でも、わざわざ外に出なくてもいいんじゃ?」
「センサーに引っかかっていちいち警報が鳴っては煩いからな、こちらで警報をな
る端からとめていくと作業の邪魔になりかねん」
「なるほど・・・あ、なら 俺手伝ってもいいっすか!?」
俺が興味津々で聞くと、直哉さんは
「言うと思って用意してある」
と軽く息をつきながら俺にメモを差し出してくる
「? なんすか コレ」
疑問を浮かべながら受け取ると
「ここの設備じゃ道具が足りん 外出ついでに買って来い」
「えぇ〜! 俺、プログラミングのほうやりたいっすよ」
俺が文句を言うと
「何もやらずに外に出るか、何か多少は役に立って外に出るか のどちらかを選べ」
とつめたいことを言われた
「……分かりました 分かりましたよ買ってきますって」
「ならばいい お前たちが全員外に出たら、ヒルズの入り口をすべてロックするか
らそのつもりでいろ 携帯とCOMPは有効にしておく 何かあれば連絡しろ」
そう言ってその場はお開きになった。
俺は、とりあえず石化したミサイルの破片をもろに被ってざらざらするマントを脱ぎながら、
自室として使っている休憩室の一つへ向かった。
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