私がその電話を取ったとき、ちょうどテレビで東京封鎖の特集をやっているときだった
 
「……今回行われた封鎖についてまとめてみましょう」
「はい、今回行われた封鎖は 宗教法人翔門会の教祖 九頭竜氏が神による試練を予測し、
 それに対抗しようとしたことから始まります 彼はかつてバベルの塔で試練に破れ、
 言語を分かたれた人類が、インターネットなどの技術を通じて再び言語の壁を越えたことから
 再び神の試練が起こると予想し、それを防ぐために…悪魔 ベル・ベリトと契約したことから始まります」
「…そもそもなぜ人間に悪魔が手を貸すんですかね?」
「…それはですね ベルベリトというのは 政府の発表によりますと、紀元前に存在したベル神という存在の一部で、
 今光臨している神が現れる前にこの世界に君臨していたんだそうです、で、
 その現在の神との戦いに敗れ、幾多にも分かれたうちの一体が ベルベリトなんだそうです 
 ベル神はその一件で神をうらんでおり、機会をうかがっていたところ、九頭竜氏の呼びかけを聞き、
 神を退けるという利害が一致したそうなんです そして現在 翔門会の主上として君臨し、信仰を集めて力をたくわえていた と」
「では現在六本木ヒルズの翔門会ビルに君臨する魔王とはベリトのことなんですか?」
「…いえ、そうではないようなんです」
「というのは?」
「ええ、今回の封鎖はそのベリトと手を結んだ翔門会が悪魔を呼び出したことで彼らの夏季大会に
 あわせて行われたものなんですが…どうやら封鎖内で悪魔が増えたことにより、
 ベル神というのはベリト以外にも何体かいまして…それらが王位争いを始めたみたいなんです」
「悪魔が出やすくなったことで他のベル達も好機とばかりにでてきたと?」
「そのようです で、王位争いをしていたところ 封鎖内にいたとある人間が偶然にも
 そのベル神の一体を倒してしまったらしく、彼が王位争いに巻き込まれてしまう…と」
「人間が!?」
「はい、封鎖内の情報なので定かではないのですが…われわれSNBの捕らえた情報によりますと、そのようなんです」
「人間までベルの王になる資格があるなんて…」
「それでその人間が現在ヒルズにいるとされる魔王なんですね」
「封鎖内で力をつけて勝ち上がり、頂点に達してしまったと…」
「はい、彼が…まだ正体は不明ですが…現在数人の悪魔使いを引き連れて封鎖での破壊によって
 移築が検討されていたあの建物を買い取り、先日インターネット上にこのような声明を発表しました」
(画面 アナウンサーの持つフリップを拡大)
 
われわれ魔王軍は、現在神と呼ばれる存在を滅ぼし、
人間が神の一方的な試練を恐れることなく暮らせる世界を
作ることを宣言する
 
われわれの敵は神であり、人間ではない
人間に危害を加えるつもりは一切無いが
われわれに仇成すものには容赦しない
 
また、天使が攻め入った場合市街に被害が及ぶ可能性があるが
われわれは一切責任を取りかねる
 
もしも日本政府あるいは他国政府が交渉を持ちかけてきたとしても
たとえどんな内容でも応じるつもりはない
 
「…このような内容が英語でインターネット上に公開されました」
「…なんなんですかこのふざけた遊びみたいな文章は」
「確かに傲慢だ」(コメンテーターが不快そうに言う)
「…ですが、政府が自衛隊STF(政府特殊部隊)を導入したにもかかわらず対処できず、
 悪魔を出さないためと封鎖を突破しようとした民間人を射殺するなどの暴挙に出るしかなかったなかで、
 魔王は悪魔を統一、そして封鎖解除に導いたのは事実です」
「だからといってこのようなものを認めてもいいのですかね…」
 
 
 
「……」
私はだんだん魔王の非難になってきたチャンネルを別のものに変えた
別の局でも似たような特集が組まれている
 
 
「…これが、封鎖内において悪魔を使役していたとされる携帯ゲーム機 
 コミュニケーションプレイヤー 通称COMPです これは民天堂が開発したゲームソフトで、
 メールやインターネットなどの機能がついているものなんですが…」
(アナウンサーが手に持ったCOMPを開く)
「ご覧下さい このように、トップ画面が違い、改造されたものであることがわかります…
 民天堂はこの”改造COMP”の製造の関与を否定しており、現在調査が進められています…
 また、封鎖内においてこの改造COMPが大量に出回ったことで、悪魔が大量に発生したとの報告もあります」
「なぜ COMPが出回ることで悪魔が大量に発生するんですか? これは悪魔を制御する装置ではないのですか?」
「それには こちらのVTRでお答えします 先日の封鎖で閉じ込められ、偶然COMPを手に入れ悪魔使いとなったAさんに話を伺いました」
 
(画面、とある部屋の画面に切り替わる カメラの視点は低く、モザイクのかけられた人物が椅子に座っている)
 
「…COMPはですね 最初に起動するとまず最初に悪魔がでるんですよ
 ええ、一体だけなんですけど…で、その悪魔と戦って勝つと”契約”といって
 勝った悪魔を使役できるようになるんですよ…はい、…で、その悪魔に負ける
 と…まぁ 要は死ぬってことなんですけど その悪魔は世界に放たれて、まぁ野に帰る
 ってとこですか? それで 俺達人間を襲うんですよ………
 え?COMPをどうやって手に入れたかって?…………
(暫くの沈黙)………路地裏でね、売ってる人がいたんですよ えぇ、
 改造COMPですよ? はい 何か翔門会の服をきててですね…売ってたんですよ 
 俺は友達に教えてもらって買ったんですけどね 契約のことなんか一切知らされな
 かったんですよ? マジで ありえませんって ホント そのせいで俺の友達も何人か
 死にましたよ これ絶対詐欺ですって もし見つけたらただじゃおきませんって…
 えぇ…」
 
(画面切り替わる 再びスタジオ)
 
「…という感じみたいですね」
「なるほど 契約 ですか……」
「COMPのメニュー画面には、メール、チーム登録 
 悪魔合体 などの項目が見られます…現在これらの機能を使おうとすると…
 ご覧下さい」
(アナウンサーがCOMP画面をカメラに向ける)
「…このように ”指定されたサーバーに接続できません” と表示されます」
「コレは封鎖の解除の何か関係があるんですかね?」
「…おそらくそうでしょう」
「COMPを売っていた翔門会の人物とは…?」
「えぇ、はい…封鎖解除の後、政府が調査を行い、翔門会内部でも調べたようなんですが…
 このCOMPを売りさばいていたのは 幹部の東間という男のようで…現在政府はこの男を
 逮捕、内乱罪として処理する模様です 現在は身柄を東京地検に移されており、
 ”金のためにやった”などと供述しているようです」
「…翔門会自体は関係が無いと?」
「…翔門会は現在 教祖が行方不明と言うこともあり、暫定的には教祖の娘であり、
 巫女をしている少女がまとめており、彼女によりますと COMP統括部門の筆頭であった
 彼の裏切りという形のようです ほかの信者もCOMPは総て上位の信者の手に渡っていると
 思っていたようです…」
「なんとも酷い話ですよ まったく…そのせいで 多くの人間に被害が出た…」
「ここで、今回封鎖に巻き込まれた方々に話を伺ってみました」
(画面が再び切り替わる)
……
 
 
私はニュースを聞きながら、この3日前にあった 封鎖について考えていた
直哉さんに呼ばれて、御貴とアツロウと私の3人で渋谷に行ったら突然巻き込まれた封鎖。
私達は必至で生き残ろうとみんなで頑張ってきたのに…
御貴は直哉さんについて魔王になってしまった アツロウもついていってしまって、
残ったのは私とケイスケ君とミドリちゃんだけ 御貴は私達の中でも一番強かったから 
ケイスケ君が暴走したときみたいに止めることすら出来なかった…
ずっとみんなで頑張ってここから出ようとベルの悪魔にも立ち向かって来たのに 
悪魔に襲われる人を助けてきたのに
「……なのに…」
私はテレビの前でひざを抱えて今はいない2人のことを考える
(御貴…アツロウ…今、どこにいるのよ……
なにしようとしてるの……)
 
……
「悪魔がさぁ すげー勢いで襲ってくるわけよ で、俺らふつーの人間じゃん? 
 逃げるしかないっつーか…」(17歳 学生)
 
「私は悪魔だけじゃなくて、やくざみたいな…悪魔使いにも襲われて…
 ちょうど通りかかった高校生くらいの悪魔使いに助けてもらったんだけど…」(24歳 OL)
 
「悪魔!? あんなのはあのピンクの服着た女がやったにきまってるじゃないか! 
 あいつは魔女なんだよ! あいつがいなけりゃ いまこんなことになってないよ!」(51歳 主婦)
 
「警官が悪魔を使って民間人を殺してたんだ! 俺の同僚も殺されて…
 高校生くらいの悪魔使いに助けてもらったんだけど…あいつだけ、助けられなかったよ…」(35歳 会社員)
 
「俺も悪魔使いだったんだけどさ いやマジだって ほらCOMPあるし…で、
 自衛隊のおっさんもCOMPもっててさ ”悪魔使いは全員死んでもらう”とかいってさ? 
 急に襲ってくんの ヤツラ銃もってんじゃん? 俺らかなうわけねーってか 
 俺も撃たれたし COMP持ってんならむしろ悪魔殺せよ! あの自衛隊員マジうぜぇよ!」(22歳 無職)
……

テレビでは未だにインタビューが続いている
私の知らないところでも 沢山の人が被害にあったみたい…
私は恐かった けれど アツロウも御貴も「事態を収束する」
っていうから…確かにそのほうがいいに決まってる けど 私は普通の女子高生で、
そんなマンガみたいなこと…いつも誰かが死んじゃうんじゃないかって恐かった
 御貴に心配かけたくないから、必至でこらえて…それで……
 
ピリリ…ぴりり……ピリリ…
 
物思いにふけっていると
隣においてあった携帯がなった
「…だれだろ…」
表示を見ると
「…ミドリちゃん……?」
ミドリちゃんたちとは、封鎖が解除されて 携帯が使えるようになってからアドレスを交換して
分かれた だからあの後もたびたび連絡を取り合っている
けれどミドリちゃんは今の時間帯 イベントで忙しいって言ってたから 何かあったのかな…
そんなことを考えながら「着信」のボタンを押すと
 
「…あ、ユズさん! 大変ですっ ニュースつけてください! ニュース!!」
と電話越しからも判る、切羽詰った声が聞こえてきた
「…え、何 どうしたの!? てかニュースなら今見てるけど…」
電話をもったままテレビ画面に向き直ると、封鎖についてアナウンサーがまた語っているのが見えた
「あ、そうじゃなくて…あの、えっと 東京中央テレビにチャンネル合わせてください!」
ミドリちゃんはやっぱりイベントだったらしくて、むこうでスタッフさんっぽい声が聞こえてきた
わたしはリモコンを取り上げ、言われたとおり東京中央テレビにチャンネルをあわせた
 
「……ご覧下さい! この沢山の自衛隊員を!!」
 
まず目に飛び込んできたのは、六本木ヒルズのビルを囲む、沢山の戦車と自衛隊員だった
「な…なによこれ…!」
思わず声に出してしまうと
「なんか、アメリカ軍があそこにミサイルを撃つみたいで…」
「はぁ? そんなことしたら…だって…」
ミドリちゃんの言葉に 思わず言葉を失った
 
あそこには今ミタカやアツロウが……
 
再びテレビに意識を向けると
「現在、自衛隊とアメリカ軍は 魔王がいるとされるこの六本木ヒルズ翔門会本部にミサイルを撃ち込み、
 その殲滅を図る模様です 魔王側は一切反応せず、現在周辺住民の避難が……」
 
断片的に状況が聞こえてきた
ミサイル……? 殲滅……?
そんな不吉な単語がいくつも耳に入ってきた
 
「いま控え室でテレビ見てて…それでコレ見て ユズさんにも知らせないとと思って…」
ミドリちゃんが呆然とする私に言う
「これ、やばいですよね!? 御貴さんたち しってるのかな… ユズさん どうしよう…」
ミドリちゃんは泣きそうな声で言った
 
「…ケイスケ君は?」
「さっきメールしたらもう向かってるって」
「…判った、私もあそこ行く」
「…でも、」
ミドリちゃんが弱弱しく反論する
「でも私達にはもう仲魔がいないんですよ?」
「それでも御貴たちにあって話をすることくらいは出来るかもしれない あの時は逃げちゃったけど、私 ちゃんと向き合いたいの」
わたしの言葉に ミドリちゃんも決意したようで
「わかった わたしも行く! あっちで合流しよう」
「うん」
通話を切って、私は家を飛び出した。



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