ヒルズの前では
自衛隊らしい車両や隊員がヒルズを囲んでいて
なにやら
降参しろだのこんなことはやめろだの騒いでいる
「無理いうなっての」
俺は小さくつぶやく
だったら俺は何で人間を捨てたんだ
 
 
ドクン
 
 
そのとき
俺の心臓がいつもとは違う脈動を打った気がした
「……?」
服の上から心臓を触ってみても
一瞬のことでもうわからなくなっている
「どうした?」
そんな俺に直哉が声をかけてくるけど
「なんでもない」
俺は手を振って誤魔化した
そして俺たちは
霊鳥や幻魔の力を借りて(俺と直哉は要らないけど)
空中に舞い上がった
 
それを合図としていたように
カイドーやマリ、ジャア君も自分たちの持ち場へと移動し、
デカラビアたちが散開していった
 
俺たち空中班は
まずヒルズを囲むように三角形に別れて近くのビルの屋上に降り立つ
そして
つれている仲魔を召喚した
 
「!」
下を見ると
すでに戦闘は始まっているようで
あちこちから爆破音や破砕音が聞こえてくる
マリ先生は巧く立ち回っているようで
クルースニクにつれられて飛び回り
戦車(装甲車?)を壊しているようだった
カイドーはマリ先生が打ち漏らした自衛隊員を
混沌の波動で遠距離から攻撃しているのが見える
ジャア君も同じように攻撃しているようで
遠くから怒号(掛け声?)が聞こえてくる
「下は大丈夫そうだな…」
なんて呟いていると
「ミタカ 来るぞ」
とナオヤが空の向こうを見やる
俺もつられて見ると
遠くから黒っぽい塊がいくつかと
戦闘機らしい飛行機もいくつか見える
「よしっ やってやろうぜ!」
アツロウが気合を入れて構える
俺もすぐに魔法が繰り出せるようにCOMPを構える
「直哉! 何秒後!?」
俺が尋ねると
「……16秒後だ」
とこともなげに言った
「カウント任せていい?」
「かまわん」
直哉の先読みは当たるので
任せることにした
ミサイルはぐんぐんと迫ってくる
タイミングさえ逃さなければ問題ない
 
 
「今だ やれ」
 
直哉の静かな号令とともに
俺たちのつれているレギオンがぺトラレイを放つ
こちらに向かってきていたミサイルは一瞬で徒の石と化し、
俺は左手にCOMPを持ち、右手から魔法を繰り出す
 
”マハザンダイン”
 
ガラッ…
瞬間、ミサイルの形をした石は総て砕けて粉々になった
 
ガガガガガガガンッッ!!!
向こうでも轟音が響いていて、みるとアツロウが
同じく石化させたミサイルをデスバウンドで砕いているようだ
 
下のほうでは自衛隊員の恐怖だか驚きだかの声が聞こえる
 
そうしているうちにも第二波が飛んできていて、
俺はまた顔を戻してミサイルを砕く作業に戻った
 
 
 
 
 
 
「………はぁ」
第何波のミサイルを壊しただろうか
ひたすらに壊している気がする
まぁ、アメリカはミサイルの在庫が沢山あるから
戦争を起こして消費してるって噂があるくらいの
軍事国だからなぁ…でもキリがない…
「直哉!」
俺が向こうでミサイルを壊している直哉に声をかけると
直哉は破壊を仲魔に任せてこっちに飛んできた
「どうした?」
何か問題でもあるのかというような顔をする直哉に
俺は不満を漏らす
「コレさあ…キリないんだけど、本体叩けない?」
「あの戦闘機か?」
と直哉が指を指す先には
いくつかのFなんたらとかいう無駄に高い戦闘機が見える
「そう 無理?」
「中身は殺すと不味いんだろう?」
と直哉が言う
「うん、不時着でもさせればいいんじゃないの?」
「…簡単に言ってくれるな」
「エンジンかどこかを壊せばいいんじゃない?」
「…わかった 俺が行く」
「話が早いね」
と俺が笑うと
「おかげでな」
と直哉も笑う
「その代わり上空のミサイル破壊はオマエとアツロウでなんとかしろよ」
「それくらいは判ってるよ」
俺のその返事を最後に直哉は仲魔をともなって戦闘機のほうに飛んでいった
 
「アツロウ! 今の聞こえた?」
俺がアツロウに聞くと
「おう!守る範囲が増えたんだろ?」
とアツロウが答える
「北側お願い!俺は反対側やるから お互いを背にしてやれば大丈夫だと思う!」
というと
「判った!」
その声を合図に
俺たちは持ち場からヒルズの屋上へ戻り、
それぞれ北側と南側の端に降り立った
 
そのとき
 
ドンッ
 
俺の体に衝撃が走った
「…な……に…ッ…!」
よろけながら衝撃の来た方向を見ると
別のビルの屋上に
自衛隊らしき人影が銃を構えているのが辛うじて見えた
 
「ミタカッ!」
アツロウが叫んでいるのが聞こえる
俺は死ぬんだろうか
普通の人間みたいに
打たれたってだけで
魔王ってだけで
人じゃないってだけで
 
ただ俺はみんなを守りたかっただけなのに
 
 
悪魔を消すだけじゃ悪魔の存在を知った企業とかが
呼び出そうとしただろうし
神に従ってもそれを良しとしない、窮屈だと思う人もいると思う
そもそも俺は今回の封鎖を行った神の存在を認めていない
紀元前何年前かはしらないけどいきなり表れて
仏教も神道もギリシア神話も北欧神話も全部否定して
自分が世界を作った だなんて 傲慢な存在 信じられない
自分を認めないものをことごとく排除して
悪魔を制御するにしても、アツロウには悪いけど 政府のいいように使われて
戦争になるだけだろうし
 
だから
俺は俺の大事なものを守るために
大事なものを捨ててまで 魔王になったんだ
俺が間違ったときは直哉が俺を始末してくれるだろう
だからそれまで俺は俺に出来ることをやろうと思った
 
なのに、
こんなところで
こんなくだらないことで
 
終わる のか?
 
俺は……
嫌だ 終わりたくない
 
何も出来ない政府のせいで終わるなんてのは
 
 
ドクン
 
また、心臓が脈打った
 
ドクン、ドクンドクン…
だんだんと早くなり 俺の躯が熱くなる
「………っぐ」
 
そこで俺の意識は完全にブラックアウトした。



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