小一時間は話をしていただろうか・・・ようやく顛末や内容を説明し終わった頃、
官房長官が口をひらいた
「・・・今回は、仕方がなかったとはいえ、我々の対応の悪さで皆さんには本来我々の
やるべきことをやらせてしまった 大変申し訳ない」
と頭を下げた
「特に・・・月森御貴君」
不意に名前を呼ばれて若干吃驚した
「・・・はい?」
「君には特に大きな重荷を背負わせてしまった・・・ベルの王・・・だったか?」
「ええ、そういうものらしいです」
俺にはさっぱり自覚がないのだけどね
「そうか・・・」
官房長官も良く解ってないようで、複雑な顔をしていた
その時
「あの・・・このようなときに大変失礼かとは思うのですが・・・」
不意にずっと黙っていた内閣府の人が口を開いた
「!」
来た、たぶん今後の俺についてだ
「な・・・なんすか?」
アツロウも何かを察したらしく、役人のほうを見る
「・・・・・・・・・」
他のみんなも黙って彼のほうを見ている
「あ、あの えっと・・・月森さんは現在 悪魔が消え去ったとしても
まだその身にベルの王の力を宿してらっしゃるんですよね・・・えと・・・ですから・・・
今後何かあると大変なわけでして・・・・・・その・・・・・・・・・」
みんなの視線を浴びて若干たじろぎながら言葉を発する役人
内容がないようなだけに 言いづらいみたいだ
「・・・つまり、俺に監視のようなものをつけたい と?」
先手を打ってみた
「!!」
書類に目を落としていた役人が
一瞬でこちらに目を向ける
アツロウやユズ、ジンさんまでもが俺の発言に目を疑った
「ちょっ・・・オマエ それは・・・」
「・・・監視って どういうことよ・・・」
「おいおい マジかよ・・・」
三者三様の反応を聞きながら、俺は役人に向き直り 話を進める
「・・・そういうことでしょう?」
「ええ・・・・・・大変失礼かつ申し訳ない話なのですが・・・」
役人は肩をすくめる
「・・・でもそれって、月森君の人権を認めないといっているようなものではないですか?」
ケイスケがもっともな意見を述べる
「確かにそうなんです 憲法上 いかなる人権も犯してはならないと規定されています
ですが、今回の様な事件を再び起こすわけには行かないのです」
「それって、ミタカさんがまた悪魔を呼び出すってこと!?」
ミドリちゃんがその言葉に立ち上がる
「あたしたちは悪魔を消そうとこの一週間頑張ってきたのに! それを・・・っ」
「あの・・・すいません 月森さんが悪いというわけではなくて・・・」
役人がその剣幕に圧されたように若干の弁解を述べる
「へ?そうなの・・・?」
ミドリちゃんはそこで少し頭が冷えたらしくて、また椅子に座りなおした
「えーと、その 言い方が良くなかったですね・・・あの、今回の事件で、
悪魔は総て毒ガスの錯乱 という見解にしてあるのですが・・・
封鎖内にいた人々はそうは思わないため、企業や一般人が、悪魔の力を利用しようと考えないとも限らないんです」
説明にジンさんが納得が行ったように頷く
「なるほどな、それでコイツを利用しようとも限らない・・・と」
「ええ・・・そうなんです・・・彼を無理やり拉致して強制させるなんてことも考えられるわけで・・・」
「でもさ、それはアンタら政府の側にも言えるんじゃないのかい?」
「そうね・・・こう言う言い方はそちらの方には失礼だけれど・・・」
ハルの指摘にマリ先生も同意する
「!・・・・・・そうです それはこちらにも言えることなんです だからこそ
そのどちらもが接触しないように監視を・・・とおもったのですが・・・・・・」
「そもそも監視なんてのは今の世間上ありえてもいいのか?ってことも含めて言ってんだよ」
ハルが若干いらだったように言う
「監視・・・というよりは 定期的に話を伺う という形で憲法上のリスクを回避しようとは考えています」
「そうですか・・・で、その話を伺う人物というのは 誰にやってもらおうと思っているんですか?」
マリ先生が訪ねる
「それは、今回あなた方とともに封鎖解除に手を尽くした イヅナ一尉に依頼してあります」
「!!」
役人の言葉に、ナオヤに前もって聞かされていた俺以外の全員が一斉に後ろのイヅナさんを振り返った
「依頼はされているわ」
イヅナさんは事実だけを端的に述べた
「それで・・・月森さんのほうでそれに同意がなされるか という話なんですけれど・・・」
役人は俺のほうに向き直り、俺の目を窺う 彼の目は怯えている様でもあり、焦っている様にも見える
恐いのだろうか ただの高校生にしか見えない俺が
「・・・ミタカ、どうすんだよ?」
アツロウが小声でたずねる
「イヅナさんならまだ大丈夫だと思うけどさ・・・」
ユズも小声で言う
「・・・構いませんが、交換条件があります」
俺はそのどちらにも返事をせず、役人の目を見据えて言った
「?・・・・・・交換条件 とは?」
役人が若干訝しんだ様子を見せる
まさか断りこそすれ、条件を出されるなんて思わなかったんだろう
「俺を含め、今回の封鎖で俺にかかわった全員の安全の保障をしてもらいたい」
「えっ?」
その言葉に、役人だけでなく、俺の横や後ろに座るみんなからも疑問の声が上がる
「・・・俺個人を脅す可能性だけ出なくて、俺の周りの人間を人質にとって脅すという可能性もある・・・
それが政府かそうでないかの違いがあるにしろ・・・そして政府のほうでその安全を保証すれば、
政府は自分たちが手を出せないし、政府でなければ政府の保護によりどっちにしろ手を出せなくなる」
違いますか? と俺が静かに畳み掛けると役人は黙ってしまった
「・・・・・・・・・」
防衛大臣と官房長官は思わず顔を見合わせた
「割に合わないというのであれば、俺の中にあるらしいそれぞれのベル神の能力について話してもいいですよ」
「ちょ、ミタカ それっていいのか?」
「もう居ないベル神の力を知ったところでどうにもならないとは思うけどね」
小声でいさめてくるアツロウに、同じく小声で答える
政府側でも暫く目での会話がなされたようだけれど 最終的にまとまったらしく
「・・・判った、それで手を打とう」
と官房長官が言った
「では誰を保護するかについてなんだが・・・」
と話を続けようとした官房長官の言葉に割り込むように俺は続けた。
「誰を保護するかについては、そちらで調査して可能性があると考えられる全員を保護してください」
「なっ!?」
俺の一方的な要求に、官房長官が思わず絶句する
「俺が言った人だけだとたぶん言いもらしがでてくる
そこを付け込まれたらイミがないでしょう?それに、人間一人の関係調査くらい
今の日本政府にはたやすいと思いますが?」
しれっといいはなつ俺に全員が唖然としている
「・・・・・・・・・・・・わかった そうしよう」
たっぷり数十秒は固まった官房長官が苦々しくそれを承諾する
やっぱり裏があるみたいだ 俺はその態度にそう当たりをつけておいた
「あと、今回のこの話については、きちんと公式文書でこちらにも提示をしてください
あとで反故にされてはかないませんから・・・それに、口約束だけではどうとでも解釈できる
提示は10日以内 それ以降になった場合はこの話はなかったことにしてください」
これでとどめ とばかりに畳み掛ける俺に、もはや政府の人間はぐうの音も出ないようだった
そこで話はお開きとなり、静寂な空気に若干のざわめきを生む
「・・・・・・・・・オマエ、ナオヤさんに似てきたな」
アツロウが若干の引きつり笑いでそうもらす
「そうかな?」
俺は普段どおりに答えた
「あ、そうそう」
俺は席を立ちながら付け加える
「もしも怪しい動きがあれば俺も防衛本能ってのがありますから」
COMPを取り出しながら
「お忘れなく」
そうしてにっこり笑って部屋から出た
政府の役人たちはもはや呆然と俺たちを見送るしかなかった
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