「…深宙ちゃんの……お兄さん…?」

美鶴の言葉に、誰もが言葉を失った。
唖然とした顔のままソファに座る青年を見ると、確かに良く似ていた。

「…そんなっ、そんな話…深宙さんからは、一度もっ……」
「………俺も初耳だ」
「でも、確かに似てるっちゃ似てるわよね…」

それぞれが思い思いの言葉を発したところで、再び美鶴が口を開いた。

「彼の名前は有里宇海…彼女の二卵性の兄だ……十年前――”彼女”と共に事故に遭った後、
 彼女とは別の親戚に引き取られてな…今回彼女の事を聞いてこっち来ていてな…」

「………」
事故という単語を聞いて、アイギスが表情を曇らせ俯くと、再び天田が口を開いた。

「…だったら!何でさっきの戦いでアイギスさんを攻撃したんだ!!」

座ったままずっと黙っている宇海を睨みつけ、さらに激しく言い募る。

「それにペルソナ能力や召喚器の使い方だって……おかしいじゃないか!」

「…………」
宇海はそのどの質問にも答えず、目線を逸らすだけだった。

「何とか言ったらどうなん……」
天田がそこまで言ったところで、彼の肩を荒垣が叩いた。
「…焦るな、天田……俺は後から来たから詳しい事はわからねぇ……けど、
 ここで感情に任せていっちまったら…見えるもんは見えねぇしわかるもんもわからなくなる…」

「…でもっ……」

天田は反論しようとしたが、そこで頭が冷えたのか口を噤む。
それから僅かに頭を下げて
「…ごめんなさい」
と呟いた。

荒垣は天田の頭を軽く叩くと、宇海に向き直り口を開いた。
「…言いにくいかもしれねぇ…だが、ここにいる全員がお前の真意を測りかねてる…
 言える範囲でいい、教えてくれねぇか」

他の全員が荒垣と宇海の行動を見守る中、宇海は逸らしていた目線を戻し、話し始めた。

「…僕は…、さっき桐条さんに説明していただいた通り…侑里深宙の兄で有里宇海といいます。
 今日で寮が閉鎖となると聞いて、彼女の荷物の引き取りと、転入の報告にこちらに来ていました」

「…ん…?」
そこで順平がふと首をかしげた。
「どうしたの、順平君」
風花が声をかけると順平は、
「…あ、あぁ!悪ぃ…なんでも…ねーんだ、続けてくれ」

宇海はその言葉に頷き、話を続けた。
「僕は男だからという理由から有里の本家に、彼女は分家筋に引き取られ別々に暮らしていました。
 ずっと離れて暮らしていて、もう会うこともできないかもしれないと思っていた時…風の噂で彼女が
 月光館学園に入ったという事を聞きました。その噂を聞いた本家の人間が、分家の人間が彼女をダシに
 桐条名士会に返り咲こうとしているのではないかと考え、その情報を得たがっていました。
 僕はただ単純に妹…彼女の事が心配でした。事故のあとすぐにそれぞれの家に引き取られてしまって…
 それでこの機会にと僕は月光館学園への転入を決め、彼女に会いに来たんです……でも、彼女は…………」

その先に彼が言いたいことは全員が察したようだった。

「………」

沈黙が場を包む中、口を開いたのはやはり天田だった。
「…あなたがここに来た理由はわかりました。けど…まだペルソナを持っている理由と
 アイギスさんを攻撃した理由は聞いてません」

「…そこ、割と重要どころよね……」
ゆかりが呟き、他の面々も静かに彼の言葉を待つ。

宇海は複雑そうな顔で向かいのソファに座るアイギスを見ると、前髪で顔を隠すように俯いたまま小さな声で言った。
「…貴方達は……深宙が事故に遭ったことはご存じなんですよね…?」

「…ああ」

真田の答えに俯いたまま頷くと、
「…僕も……10年前のあの日…彼女と、両親と一緒にあの場にいました…」
絞り出すように話し出した。

「…突然起きた爆発で後部座席にいた僕と彼女は車外に放り出されました。それぞれ別の方向に
 飛ばされて……僕は彼女を探したら…橋の真ん中で茫然と立つ深宙の前で……化け物とそこの…
 彼女が戦っていました。それから……それからその場に立っていた深宙が…その場に、居合わせただけの
 何の関係もない、深宙が……っ…」
だんだんと冷静さを失い、呼吸が荒くなる宇海の言葉を美鶴が遮った。

「有里、もういい……事情は大体わかった…」
それから何かを思案するように黙り込んだ彼女とは入れ違いに、アイギスが口を開いた。
「……あなたは…わたしを恨んでいますか…?…」

その言葉に、宇海の方を向いていた面々が一斉にアイギスを振り返る。

「…確かに、わたしは深宙さんに…デスを封印しました……それは言い訳のしようがない事実です…
 あなたがわたしを恨む事は…当然だと思います……」
「アイギスさん!何言ってるんですか!!」
天田が庇うが、アイギスは悲しそうに宇海を見るだけだった。

少し落ち着いたらしい宇海はその言葉に対して静かに首を振った。
「貴方の事は恨んでません……ただ、あの時僕はただ怖くてその場を動くことすらできなかった
 兄である僕が、妹である深宙を守ることができなかったんです…怖くて…ただ、それだけの感情で
 彼女を救えなかった……そしてさっきも、かつての恐怖に任せて…あの銃を使ってしまった……」
そう呟いて再び俯いた彼に対し、風花が疑問を投げかける。

「…あの、召喚器の使い方は……どこで…」
宇海はその問いに対し短い回答を伝えた。
「……わからない」
「わからないって…」
言い淀んだゆかりに彼は説明を付け加える。

「…ごめんなさい、本当に…わからないんです…あの時ただそうしなければならないような…
 そんな焦燥感に襲われて……気が付いたら、引鉄を…」

「…そんな曖昧な話、信じられると思うんですか?」

その場に疑念の感情が漂い始めたころ、順平が突然大声を出した。
「そうだよ!綾時だよ!!」

「ちょっ……順平?いきなり大声出さないでよ!うるさいわね!!」
隣にいたゆかりが彼を嗜めるが順平は聞いていない。

「綾時だって!さっきからずっと気になってたんだよ、俺…コイツの声、綾時そっくりなんだよ!」
その発言に、かつて彼に会った事のある数人が同じようにハッとする。

「…言われてみれば……確かに…」
「で、でも…別に綾時君ってわけでも…ないですよね…」
「…そんな、どうして…?…だって彼は……」

突然の一致に驚く面々の後ろで、別の人物の声が聞こえた。



「…ん…何…?」




←戻 次→



すいません。また本編行けませんでした。
まさかコイツ(ある意味オリキャラ)の説明でここまで行を食うとは…
予想外でした。本編期待してらした方本当にすいません。
次回から入れる…はず…(汗)
設定に少々無理があるかなーと思いつつな今回。
また別のうまい書き方ありましたら修正しますね。



フレーム未対応、携帯電話の方は以下のリンクから戻ってください。
対応している方がこちらを押すと携帯用Topに戻ってしまいますのでご注意ください

◇Index
◆Top
◇Novel