先に動いたのは、メティスだった。
彼女は一歩踏み込むと、クロスロッドをわたしの脇腹めがけ一閃した。

わたしは体をひねって避けると、五指に内蔵されたマシンガンを向けた。
手首が回転し、メティス向けて銃弾が放たれる。

「……っ!」

けれどメティスはその場から飛び退り、わたしの攻撃を回避した。
わたしは即座にまた銃口をメティスに向けるけれど、彼女の背後には皆さんがいる。
無茶苦茶にメティスだけを追って銃撃を行えば当然皆さんも銃弾に晒される危険性がある。

わたしはそう考えると一足飛びでメティスに接近し、先ほど彼女がクロスロッドでやったように
彼女の脇腹めがけ回し蹴りを叩き込んだ。
メティスはそれを縦にしたクロスロッドで防ぎ、またわたしから離れると食堂にあった椅子を投げつけてきた。
わたしがそれを受け止めるのと、メティスが咆哮するのはほぼ同時だった。

「プシュケイッ!!」

メティスの前に現れたのは、蝶の様な仮面をつけた白いドレス姿の異形だった。
木枠でできた身体の左右には白いロンググローブの腕が浮いている。
「行けッ!」
彼女の合図と共に、ペルソナがこちらに攻撃を放ってきた。
わたしは防御が間に合わないと考え、椅子を投げ捨て声を張った。

「アテナッ!!!」

わたしの目の前に黄金の兜を付けたペルソナが現れ、身に付けた楯で攻撃を防ぐと槍を構え
メティスへと突進した。
メティスはそれをもろに食らい吹き飛ばされたけど、すぐに空中でバック転して体制を整え、
再びわたしに向かいクロスロッドをふりかぶった。

「…お願い、大人しくしていて……っ…!」
「何をっ……」

腕でクロスロッドを受け止め、一瞬だけメティスと睨みあう。
わたしは受け止めた方とは反対の腕を彼女に向け、銃撃を試みようとする。
彼女は至近距離での銃撃に焦りを覚えたのか、とっさのその場から飛び退いた。

「………予想以上の力です…仕方ありません、」

着地の姿勢からゆっくりと身を起こすと、彼女は再び武器を構えた。
「…!?」
わたしがその言いようのない何かに身構えると、風花さんが何かを察知したのか驚いたように声をあげた。

『まさかっ…オルギアモードッッ!?』

「えっ…!?」
「…そんな、嘘ッ…!?」
その声にわたしと皆さんが耳を疑った。
そして実際にメティスの身体は、その力を表すかのように赤紫の光に包まれ始めた。
オルギアモードは、一時的に身体に付けられた制御装置を解除することで、短い時間ではあるけれど
全能力を引き上げる事が出来る。その能力を持っているわたしは、十分にその威力を知っていた。
だからこそオルギアモードに対抗するには、オルギアモードになるしかない。

「オルギア、発動!!」

―――けれど、わたしの身体には何も起こらず、ただ小さい駆動音が聞こえるだけだった。
「そんなっ!?」
2ヵ月前の戦いでは普通に扱えていたはずのオルギアモード…どうして今になって…………まさか……

メティスはそんなわたしの隙を見逃すほど甘くはなかった。

「アイギスっ!」
風花さんの声にハッと我に返ると、既にメティスは目の前に迫っていて避ける間もなくクロスロッドを
胸部に叩きこまれた。その衝撃でくの字に折れ曲がったわたしに追い打ちをかけるように頭部に回し蹴りを放ち、
わたしは食堂の机や椅子を巻き込んで吹き飛んだ。

「あぁっ…!」

頭部に衝撃を受けたせいか、視界が狭まり白黒に映った寮のラウンジにはノイズが走っている。
(身体…が……)
その視界の中でメティスは箒を持ち応戦しようとする天田さんをクロスロッドのリーチを生かした一撃で
無力化すると、そのまま彼の首に手をかけ、締め上げる。
それだけの映像がわたしの眼に映った。
どこかの回線がショートしてしまったのか、どこか平坦な、風景としてとらえているような視界の中で、
メティスは徐々に天田さんの首を掴んだ手に力を込める。
”障害となるものは排除します”
どこか遠くから聞こえるようにしてメティスの声がわたしの集音マイクに伝わる。

力がこもるのとは逆に、天田さんの眼からはゆっくりと焦点が失われていく。
わたしはその光景にで平坦だった視界が現実味を取り戻していくのを感じた。

(……このままじゃ、天田さんが……死んでしまう……行ってしまう……
 わたしは…また、傍にいながら……守れないままま…、……そんなの………)

「…もう、……絶対ダメぇっ!!」

わたしは咆哮をあげて無理矢理に立ち上がった。
その声に応えるようにアテナが具現化し、メティスに向かって行く。
そして、弾丸のように放たれたその姿が、突進していく途中で揺らめき変化した。

金色の兜が褐色になびく長髪に、白く女性的な仮面の顔つきが変わり。そして、環状の楯が
白い竪琴に―――数秒のうちに変化したアテナの姿は、全くの別物――”彼女”が最初に発現した
ペルソナ、オルフェウスへと変わっていた。

「…これは…っ」
メティスはその様子に驚き、たじろいだ。
オルフェウスは口を大きく開き、その咆哮を響かせながらメティスへと向かって行く。
「まさか……」
皆さんが茫然とする中、メティスは手にしていた天田さんを叩きつけるように放すと、
こちらに向かってこようと僅かに動いた。

その瞬間にオルフェウスは、内蔵されたスピーカーで自身の咆哮を何十倍にも増幅し、
メティスへと放った。

「ぅあっ……」
集音マイクかどこかがショートしたのか、メティスがよろめきカウンターに背をぶつける。
その衝撃で顔を覆っていたマスクが上がり、彼女の顔が露わになる。
それは、わたしとは逆の赤い眼をした少女の顔をしていた。

わたしもまた無理矢理立ち上がったせいか、視界のノイズが酷くなり
身体に襲いかかる重力に耐えきれず感覚が反転した。
その中で僅かに聞こえたメティスの声は、わたしに向けられていたような気がした。

「……姉…さん…」






次に目を覚ますと、わたしは見知らぬ場所で椅子に座っていた。
深い青色に包まれた部屋で、壁も、床も全てベルベット張りという奇妙な空間だった。
それもただの部屋ではなく、良く見るとエレベーターの内部のようだった。
僅かに振動を感じるけれど、上っているのか下りているのかまでは感じ取ることはできない。

そして周りに向けていた意識を正面に向けると、そこには椅子に座った一人の老人と、
傍らには整った顔立ちの男性が立っていた。

老人はわたしの視線に気づくと、大きな眼を見開き 言った。

「……―――ようこそ、ベルベットルームへ…」




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アトガキの様なもの
ようやく本題に入りそうです。展開遅くてすいません…
というか戦闘描写が下手でごめんなさい。ほぼ初めてです…
回りくどいというかわかりにくいというか…精進しますっ!
小説版とゲーム本編の中間みたいな表現に落ち着いたんじゃないかなと思います。
最初アテナが変化する時普通に原作通りに書いてしまって男性主人公版オルフェウスの
描写をした事は内緒です(笑



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