「触るなッ!!」 その声に背後を振り返ると、自分よりも小さな少年が扉を開け放した体勢で立っていた。 その眼は僕を射抜くように睨みつけており、今にも飛び掛らんとしているようだった。 「あ……え…っと…」 自分が何かを発する前に、少年はそれを遮るようにまた声を上げた。 「触るな…それに、その召喚器に……触るな!」 「…………」 何を言えばいいのか、銃を手にしたまま固まっていると 少年が一歩近づいてまた声を荒げる。 「……お前、誰だ…この部屋に何の用だ!」 「…僕は、………っ!?」 答えようとした矢先、階下からもの凄い音が響き渡った。 二人は暫く無言で顔を見合わせると、即座に部屋を飛び出した。 × ・数時間前 ラウンジ 「…結局、夜になっても真田先輩と荒垣先輩戻ってきませんでしたね……」 風花が言うと、 「…そうだな、今日は来客もあるんだが……」 と美鶴が呟いた。 「来客って……?」 ゆかりがそう尋ねようとしたとき、玄関が開いて天田が帰ってきた。 「……あ、皆さん 何でラウンジにそろってるんですか?」 「お前を待ってたんじゃねぇかよ。桐条先輩がさ、最後だしまた特上寿司頼んでくれるっつーから」 順平が笑いながらそう説明すると、 「…折角ですけど、僕はあまりお腹空いてないみたいなんで…皆さんで食べてください」 天田は言うなり階段を上がっていってしまった。 「あっ…天田君……」 「行っちゃったね…」 風花とゆかりが天田が去っていった階段の方を心配そうに見遣る 「仕方ない、我々だけで頂くとしようか」 小さく息をついて美鶴がそういうと、順平がいそいそと立ち上がった。 「いよっしゃぁー!俺、皿持ってくるッスね〜」 「あ、じゃあ私…お茶とか用意します」 ラウンジは、俄かに明るさを取り戻した。 「ふぃ〜…食った食った……」 夕食のあと、順平がソファにふんぞり返り、満腹になった腹を叩いている 「…もう、順平ったら相変わらずだらしないんだから…」 ゆかりがその態度にあきれ返ると、風花がくすくすと笑った。 「なんだか…前に戻ったみたいだね…」 その呟きに、美鶴が同意する。 「そうだな、こうしているとあの頃を思いだす……戦ってた頃には辛い事の方が多かったというのにな…」 「…………」 その言葉にかつてを思い出したのか、全員が押し黙った。 やがて耐えきれなくなったのか、アイギスがソファから立ち上がって言った。 「…わたし、先にあがらせてもらってもいいでしょうか?」 その言葉で沈黙が破られたのか、黙っていた他の面々が口々に挨拶をした 「うん、お休みアイギス」 「おやすみ」 「うぃーっす」 「ワン、ワン!」 アイギスが去った後、残された一同には再び重苦しい空気がのしかかる。 静かになったラウンジに、ニュース音声だけが聞こえてくる 『…先月から原因不明のまま患者数が激減し、ひとまず収束へ向かっている無気力症… ですが、社会生活に過度のストレスを感じている人の数は、減っていないようです 厚生労働省の調べによりますと…』 「……なんで、あのコだけ…あんなことになっちゃったのかな」 ゆかりの一言に、全員がうつむく。 「…やっぱり、私たちを守るために力を使い果たしたから……」 「クゥーン…」 風花の言葉に、コロマルが寂しそうにこたえる。 「…んな、また暗くなんなって!アイツもそんなの望んでねーと思うんだよ… けど、なんか納得いかねぇんだよな…今の奴ら見てると……俺らが、ていうかアイツが あんだけ頑張って滅びを食い止めたってのに未だにストレガの与太話は収まってねぇし……」 順平がそういうと、 「仕方ないさ、私たちは世直しをしたわけじゃないからな…」 美鶴は泰然自若の面持ちで呟いた。 「そんなもんすかね……」 順平はやや憮然とした顔でまたソファに背中を預けた。 『……以上、気象情報をお伝えしました。…間もなく、午前 0時です』 ”!?” ニュース画面から0時の時報が鳴ったその時、そこにいた全員に奇妙な違和感が訪れた。 何かが”ズレた”ような、そんな違和感だった。 「今の!」 「ワウッ、ワウッ!!」 「……0時丁度って…まさか、影時間!?」 その違和感に全員がソファから立ち上がり、あたりを見回す。 順平が窓のそばまで走り寄り、外を確認する。 「いや…外は、何もなってねーぞ!?」 一同が安堵しかけた時、ゆかりがテレビに視線を戻して呟いた。 「ねえ、ちょっと…なんか変じゃない…?」 全員がまたテレビに視線を向けた時、画面ではニュース番組が始まろうとしていた。 『こんばんは、日付が変わりまして 3月31日のニュースをお伝えします』 「…今日って…4月1日じゃない?…これ……間違えてんの?」 すると順平が、 「なんだよ…そんなことかよ…単にミスってるだけじゃねーの? 脅かすなよ、ゆかりっち」 と大仰に肩をすくめた。 「…でも、携帯も31日……コレ、どうなってんの?」 ゆかりは携帯の画面を確認しながら不思議そうに首をかしげている。 「…つーか、別に何も起きてなくないっすか?」 順平が美鶴の方を見て言うと、美鶴は頷きながらも釈然としない顔のまま呟いた。 「…状況を見れば、そうだな……一応、明彦や荒垣にも連絡を取っておくか…」 「…確かに変な感じがしたのに……」 風花も首をひねっている。 「0時回ったし…今夜はここでお開きっすかねぇ……なーんか、寮の最後の日だってのに 微妙なシメだな……ったく」 順平がそうぼやくと、美鶴が思い出したように一同を見回し、言った。 「そうだ、こんな時間になってしまったが…皆に会って貰いたい人物がいるんだ」 「え、イキナリ何ですか?てか、会って貰いたい人って…お寿司の前に言ってた来客の事ですか?」 ゆかりが聞き返すと、美鶴は 「ああ、一応夕食にも彼を誘ったんだが…”自分はこの寮に住んでいた訳ではないしここに住んでいる人間 との時間を共有していないから気を遣わせてしまうだろう”と頑なに固辞してな…夕食が終わったら紹介 しようと思っていたんだ」 と説明した。 「でも、寮の最後の日に来客なんて…」 風花が呟くと 「まぁ、会えばわかるさ…今、呼んでこよう」 美鶴がそう返し階段をのぼりかけた時、 轟音と共にラウンジの床に鉄扉が現れ、中から人影が飛び出した。 「おわっ、なんだあ!?」 「……っ!?」 人影は飛び出してきた勢いのまま周囲に有った机やソファを蹴散らすと、手近にいた順平を掴み上げた。 「ぐぁっ!?」 「順平君!」 「順平っ……!」 風花とゆかりが駆け寄ろうとすると、侵入者は掴み上げた順平を2人に向けて投げつけた。 「きゃあぁっ!」 3人は壁際まで吹き飛ばされ、そのまま床に倒れ伏した。 「大丈夫か!?」 美鶴が侵入者の前に立ちはだかった。 「…お前は何者だ!何故我々を襲う!?」 美鶴の問いに、侵入者は初めてこちらに顔を向けた。 その顔は蝶の様な装飾のなされたマスクの様なものが覆っており、表情をうかがい知ることができない。 「……―――その質問には答えられない、あなた方を排除します」 マスクによってどこか無機質に見える侵入者は、あまり感情のこもらない平坦な声でそう告げると、 手にしたクロスロッドを構えた。 「………ッ」 美鶴は即座に腰の辺りに手をやるが、その手は空を掻くだけだった。 「…ッしまった!…そうか……」 召喚器は今朝方既に彼女自身の手によって回収され、手元には無かった。 侵入者がその隙を逃すわけがなく、 一気に間合いを詰めると美鶴のガラ空きの鳩尾にクロスロッドを叩き込んだ。 「ぐぅっ!」 美鶴はその場から吹き飛ばされ、ゆかりたちのすぐ横の壁にたたきつけられる。 「美鶴先輩!」 ゆかりが慌てて美鶴に駆け寄ったその時、 「どうしたんですか!?」 天田と、もう一人―――美鶴が言っていた来客の青年が上階から現れた。 「馬鹿、逃げろっ!」 順平の声に2人がラウンジに顔を向けるのと、 侵入者が2人に向かってクロスロッドを投げつけるのとが同時だった。 天田が何とか迎撃できないかとあたりに目を遣った時、隣にいる青年の手に未だ召喚器が握られている 事に気がついた。 「それ、貸してくださいッ!早く!!」 そういいながら彼の手から召喚器をもぎ取ろうとした時 「…………」 それよりも早く青年は手に持ったままのそれをこめかみに押し当て、引き金を引いた。 銃をあてがったのとは反対側から青白いガラス片の様なものが飛び散り、 それと同時に、異形が顕現する。 剣を持ち、幾つもの棺を翼のように背負った異形が。 その姿は、ここにいるSEESのメンバーが一度は目にしたことのある ”彼女”のペルソナ―――タナトスの姿に瓜二つだった。 タナトスは手にした剣で回転しながら迫るクロスロッドを弾くと、己の力を誇示する様に咆哮を轟かせ そのまま侵入者へと斬りかかった。 侵入者はタナトスの斬撃を紙一重でかわすと、弾かれたクロスロッドを拾い横薙ぎに一閃した。 その時には既にタナトスの姿は揺らめき始めており、侵入者の一撃は空を切るだけだった。 「山岸…アイギスを…っ!」 美鶴が苦しそうに息をしながらこの隙にと風花に声をかける。 風花は弾かれたように顔を上げると、食堂の方を回って駈け出した。
アトガキの様なもの
第2話です。何というか今現在フラグばかりで訳わからないような感じかもしれません
普段管理人は小説を書く時はキャラ一人を語り部にして書くことが多いのですが、
今回はそういう書き方をあまりせずに地の文とセリフとを別々…に書いてみてます。
新しい試み…というか、いろんな小説の書き方を勉強したいと思っているので
今回はそんな感じになってます。でも今後の章の内容によってはまた前の書き方も
使っていくかと思います。読みにくかったら直します。
2話書くにあたって1話も若干修正してますので、全体を見ながら各話も加筆、修正して
よりよいものを書いていきたいです。
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