気付くと、四人は出てきた扉を背に再び扉の間に立っていた。
『ここは…扉の間。なるほど、あの扉はこの場所とつながっているみたいですね』

一度探索を切り上げてラウンジに戻ると、ソファで出てきたらしい本などを見ていた美鶴が声をかけてきた。
「ご苦労だったな…とりあえず、時の狭間にある第一の迷宮はクリア……手掛かりは無かったようだな…」
探索の概要を風花から聞いていたのか、端的に言った。

「ええ…中はタルタロスと同じようにシャドウが居るだけで
 …特にこれと言って何かある感じではなかったですね」
ゆかりが同意して肩を落とすと
「手掛かりと言うわけではないが……何度か人影の様なものを見たぞ」
真田が呟いた。

「人影…?」
天田がその答えに首をかしげると
「扉に入る前に一度、それから…迷宮の中で何度か…見たといってもほんの一瞬、って事が多いんですが…」
アイギスが頷いた。
「…見間違いって事はねーのか?」
荒垣の問いに真田が言った。
「俺もそれは考えたが、見たのは俺を含めての全員だ。それに、山岸も何度か気配を察知している」
「なら見間違いってセンはねーか…山岸、気配を察知…っつったが…その影みてーなモンは…人間か?」

「…それが…人間とも、シャドウとも違う感じで…
 ただ、そこに”いる”っていうような…すみません…よくわからないんです」
風花は答えながら申し訳なさそうに言う。
「…時の狭間というものに…誰かが入り込んでしまった…っていうのは考えられませんか?」
宇海が呟くと、即座にメティスが否定した。
「ありえませんよ。この時の狭間は…この寮を中心にして、真下に広がっているんです
 この寮内にいる人間以外に誰かが入り込んでいる以外、他の人間…ましてやこの寮の
 外にいる人間が、時の狭間を察知することはできません」
「入り込むにしても、ラウンジに我々が居る以上…侵入者は時の狭間に向かう事すらできないだろうな…」
美鶴が思案げに呟くと、アイギスが話題を切りかえるように言った。
「そちらはどうでしたか?」
その言葉に、再び風花が口を開く
「出てくるのは昔のオカルト本みたいなものばかりで…どれが手掛かりになるのか…
 まだはっきりとは分からないの」
「どれも終末論や神話…魔術といった類が多くてな…まだ解析していない物に何か手掛かりがあるのかもしれん」
机に積まれた分厚い本を手に取りながら言った。

「そういえば…待ってる時に気付いたんですけど、僕たちのペルソナ…いくつかの技を
 忘れてなかったですか?」
天田が呟くとゆかりと真田がハッとしたような顔をした。
「そういえば…そうかも…」
「いくつかの技が下位の物になっていたりしたな…」
「これって…あのあと暫く記憶を失っていたから………なんですかね…」
天田がさらに言うと、アイギスが
「…私は、特にそんな感じはないんですが……」
と呟き、何かを考えるように頸に手を遣る。

「ねえ、アイギス……さっきの探索の時に気になったんだけど…アイギス、もしかして…
 オルギアモードが使えなくなってない?」

その言葉に風花を見ると
「バックアップの時に違和感があったんだけど…アイギス自身はどこにも故障はないみたいなの…
 それと、メティスは普通に使えてるみたいなんだけど…」
と呟いた。
「そういえば…最初にアイギスがメティスと戦った時…オルギアモードにならなかったわよね?」
ゆかりが思い出したように呟くと、美鶴が言い添えた。
「ならなかったんじゃなく、なれなかった…と言う事か」

「でも…どうして……?」

アイギスは自分の胸に手を遣り体の異常を探ってみるが、風花の言うとおり何処にも異常らしき違和感は
感じられない。
「原因が分かりますか?」
アイギスが再び風花に尋ねると、
「…ただ、何て言うか…アイギス自身が使い方を忘れちゃってる感じみたいな…でも、そんなことないよね?」

(わたしが…オルギアモードの使い方を、忘れている…?)
オルギアモードについての知識は未だ覚えているが、実際に使えるかどうかは彼女にも分からなかった。

「…ここで悩んでいても話は進まんぞ、今は先が見えなくても進むしかないんだ。
 アイギス、探索メンバーを変えるか?それともまた俺たちが続投するか?俺はどちらでも構わんぞ」
思考にはまりかけた時、真田が声を出し皆を思考から引き戻した。

「…そうですね、では…真田さん、天田さんと交代してください」
アイギスは気持ちを切り替えるように頷くと、メンバー交代の指示を出した。
「む、そうか…わかった。天田、気をつけて行ってこいよ」
「わかりました。頑張ります!」


×


扉の間にある扉を調べると、先程出てきた扉の向こうに新しい道が出来ている事が判った。
再び扉の前に立ち、中へ入る。
すると、先程番人と戦ったフロアへと出る事が出来た。戦った時には気付かなかったが、
奥の方に下へと降りる孔が見えていた。
「…ここが時の狭間の中…なんだか普通の部屋みたいですね」
始めてこの中へ入った天田が呟くと
「けど、ここ…普通にシャドウは居るわ、迷路みたいに複雑だわで…あんまりタルタロスと
 大差ないのよね」
ゆかりがその内部を簡略化して説明する。
「そうですか…なら、一層の警戒が必要ですね」
そう言って天田は、手にした槍を握り直した。

『あっ、フロアの雰囲気が変わりましたね…』
降りた先のフロアは、壁に気を抜くと階段と間違えてしまいそうなほどリアルな絵が描かれていた。

『シャドウもこれまでとは違うみたいです。気を付けてください』

その言葉にアイギスは頷くと、また先頭を歩き始めた。
暫くフロア内を探索し、孔を見つけたら下る…という形態で探索を進めていった。
何度か戦闘をこなすうちに、徐々に2ヵ月前の感覚を取り戻しているのか、
だんだんとより効率よくシャドウを倒せるようになってきた。
そんな、探索活動も慣れてきたというような時に、ふと風花が声を挙げた

『ちょっと待ってください』

風花はそう言ってアイギス達をその場にとどまらせると、解析に神経を集中させた。
『………!?少し下のフロアで、階層が途切れているみたいです
 何が待っているか分かりません。気を抜かないでください』
その言葉に、アイギスが
「また、番人が待ち構えている可能性もあります。みなさん回復はこまめに、それから
 疲れた時はすぐに言ってください」
と声をかけた。
「相手がなんであれ、倒して先に進めばいいだけです。そうすれば、時の狭間の謎だって
 すぐに解決できるようになるんですから」
天田はそういうと、先へ進みだした。
「あっ…!ちょっと天田君!?」
ゆかりが制止するが、天田は止まることなく先へ進んでいく。
「もう、1人で行ったら危ないのに…」
「行きましょう、姉さん」
その言葉にアイギスは頷くと、すぐに天田を追った。

それから先へ進むと、先程のフロアとは明らかに様子の違う場所に出た。
全体的に遺跡の様な、厳かな雰囲気が漂った場所だ。宙に浮いているように見える足場からは、
とめどなく砂が流れ落ちている。
『ここで行き止まりの様ですね…途中に何度か見かけたあの黒い影はいったい…
 ……。あっ、すみません。これからみんなでそっちに向かいます。何かないか調べてみてください。』
その言葉に辺りを見回すと、
広場のようになった石畳の向こうに、西洋の宮殿にあるような立派な扉があった。




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アトガキの様なもの
色々と補足の回。戦闘前のメンバー選択での会話を全て入れるわけにもいかないので
普通の会話に入れてみたり、P3FESの後日談では居ない人(荒垣、女主人公兄とか)の台詞増やしたり
そんな回です。戦闘は本当に省略が多いかもですが、あまりに物足りない場合は
付け足したり、あるいは何か探索中の会話だとか、そんな感じの物を入れていきたいです。



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