階下に降りるとすぐ目の前に4体のシャドウが通路を塞ぐように立っていた。
見た目はタルタロスで見かけた《ギガス》タイプのシャドウと《マーヤ》タイプのシャドウだったが、
タルタロスでは見た事のない個体だった。

『シャドウ、複数体確認!待ち構えてたみたいです!
 あ、それと向こうに、上の階で感じたのと同じ反応…』
その声に4人がすぐ脇の通路に目を遣ると、前のエリアで見たのと同じような影が走り去るのが見えた。

『あっ……反応、消えました…』

影はすぐに見えなくなり、足音すら聞こえなかった。聞こえるのは目の前のシャドウの発する声だけだった。
「…もう、なんなのよ!さっきから」
ゆかりがもどかしそうに言うと、真田が
「今は目の前のこいつらを片付けることに集中しろ、さっきから何度も見てるんだ
 奥まで進めば影の正体を掴めるかもしれん」
手に嵌めたグローブをに力を込めながら目の前の番人を睨みつける。
「みなさん、敵はタルタロスにいた個体と似ていますが、未知であることに変わりありません
 初めは下手に攻撃せず、風花さんの解析を待ってください!」
アイギスの声に、全員が武器を構える
そしてそれに呼応するようにシャドウも雄叫びを上げ、こちらに向かってきた。

『シャドウ、向かってきます!注意してくださいっ!』

4体のシャドウを取り囲むようにして立ち、戦闘の準備を整えるとアイギスは以前彼女がやっていたのを
思い出しながら、3人にそれぞれ指示を出した。
「ゆかりさん、SPを温存して戦ってください!」
「任せて!」
「真田さんは補助魔法で戦況を有利に!」
「やってみる」
「メティスは敵のダウンを狙って!」
「わかりました!」
「風花さん、敵の解析をおねがいします!」
『了解、分析してみます。少し時間をください』

全員に指示を出すと、アイギスは一度目を閉じ精神を集中させた。
(…大丈夫、みなさんとなら…きっと勝てる…)
「行きますッ!!ペルソナ、オルフェウス!」

アイギスから薄氷の様な破片が散らばり、竪琴を背負った彼女のペルソナが現れた。
オルフェウスが竪琴を奏でると、燃え盛る火球が《マーヤ》タイプのシャドウに放たれた。
シャドウはのけ反ると、半液体の様な身体を力無く床に預けた。
「さっすが姉さん!」
「奴は火炎が弱点のようだな…いいぞ、アイギス」
「アイギス、もう一丁いっちゃって!」
仲間の声に頷くと、アイギスはもう一度オルフェウスを召喚した。
今度は《ギガス》タイプのシャドウを狙ってアギラオを放つと、シャドウの身体に当たる前に
見えない壁の様なものに阻まれ、放った攻撃がそのままアイギスへと向かってきた。
予想外の出来事に防御が取れないでいると、メティスの放ったクロスロッドが火球を打ち消した。

「あぶなかったですね、姉さん!」

アイギスの方に向かいながらメティスが言うと、
「ありがとう」
アイギスは傍に落ちていたクロスロッドを拾い、メティスに渡しお礼を言った。
「いえ、わ、私は…その、姉さんが危ないって思ったから…咄嗟に…えと、その…」
メティスは顔を少し赤らめながら嬉しそうにロッドを受けとった。

「オイ、何してる!次の攻撃が来るぞ!!」
真田の声に顔を引き締めると、《ギガス》タイプのシャドウがこちらに向かって殴りかかって来るのが見えた。
「くっ!」
拳を避けながら銃撃するもさほど効果が無いように見えた。
「このシャドウには貫通があまり効果が無いようです!」
「わかった!……それなら…これでッ!!」
ゆかりが召喚器の引き金を引くと、彼女の背後に彫像のように輝く雌牛――イシス――が現れた。
イシスが左右に広がるオリエント文化の装飾品を思わせる羽で羽ばたくと、
《ギガス》タイプのシャドウの周りに疾風が巻き起こり始めた。

………が、《ギガス》はそれをあっさりとかわしてしまう。

「え…ウソ、避けられたっ!?」
ゆかりが唖然としていると、再び風花が声を送ってきた。
『お待たせしました!敵は、《不滅のギガス》と《本性のマーヤ》です!
 《不滅のギガス》は雷、闇、光属性が無効…それから、斬撃、貫通属性の攻撃が効きにくくなっています
 注意してください。疾風が弱点ですね。ガル系が有効です。《本性のマーヤ》は斬撃、打撃属性が反射、
 雷属性が吸収、光、闇属性が無効です。……真田先輩とはかなり相性の悪い相手ですね…弱点は炎です。アギ系が
 効果的です。どちらの相手も”見切り”のスキルを持っています!気をつけて!』
その声に、真田が顔をしかめる
「クソッ、俺とは相性が悪いか…」
「…では、真田さんは補助魔法の他にみなさんの回復もお願いします。ゆかりさんとメティスは、《不滅のギガス》を
 優先的にダウンさせてください」
アイギスが即座に指示を飛ばすと、
「分かった。殴るだけが戦いじゃないからな…任せておけ」
「了解!下手な鉄砲も数打ちゃ当たる…ってね!」
「わかりました!」

3人はすぐにそれぞれの敵へ向かって行った。
メティスは《不滅のギガス》の前に立つと、
「願いの大きさが、強さになるんです!プシュケイッ!!」
青白い破片と共に、ウエディングドレスを着た彼女のペルソナが現れた。
木枠で出来た身体の脇に浮いたロンググローブを《不滅のギガス》に向けると、
先程のイシスと同じように疾風が巻き起こり、《不滅のギガス》に直撃した。

『あっ、敵、体制を崩しました!まだ行けますよ!』

メティスは続いて《本性のマーヤ》に向かってプシュケイを召喚した。
「ペルソナ!」
今度は氷結の力が放たれ、《本性のマーヤ》に直撃するが、《本性のマーヤ》は軽くのけ反っただけで、
すぐに体制を整えてしまった。
「…結構しぶといですね」
すると真田が召喚器でこめかみを撃ちぬき、ペルソナを召喚した。
「なら、こうするまでだ……出番だ、カエサル!!」
白いマントをはためかせ、人の何倍もの大きさの英雄が現れ剣を掲げると《本性のマーヤ》に対し
攻撃力を下げる”タルンダ”をかけた。
その隙にアイギスが再びアギラオを放つと、《本性のマーヤ》の身体が散らばり、霧散した。

『敵、あと3体です!!』

つづけてアイギスが《本性のマーヤ》をダウンさせると、敵は総崩れとなっており隙だらけだった。
「よし、畳んじゃいましょう、姉さん!」
アイギスが頷くと、真田とゆかりも武器を構えタイミングを見計らう。

「全者突撃!!」

メティスの声に全員が敵へ突っ込むと、その勢いで煙が舞い、辺りが見えなくなる。
その煙が晴れた時―――残っているのは《不滅のギガス》ただ一体だけだった。
《不滅のギガス》自体も、かなり弱っているのか立っているのがやっとといった状態だ。

「よし、あと一体ね!今度こそ当てるんだからッ…イシス!!」
イシスが再び“ガルーラ”を放つと、先ほどよりも強力な疾風が巻き起こり、
《不滅のギガス》を吹き飛ばした。

「昔の私じゃないんだから!」
そう言って勝ち誇ると、吹き飛ばされた《不滅のギガス》が霧散しかけた状態で悪あがきとばかりに
“疾風斬”を放ってきた。

「ゆかりさんっ!」

アイギスはその様子を見ると即座にゆかりに走り寄り、覆いかぶさるようにしてその身体をかばった。
「きゃあッ、アイギス!?」

「姉さん!!」
『ア、アイギス!』
「くそッ、しぶとい奴め!」
全員が驚く中、真田が《不滅のギガス》に拳を叩き込むと、《不滅のギガス》は完全に霧散した。

『…よかった…二人とも無事みたい……あっ、敵シャドウの消滅、確認しました!』
風花の声に我に返ると、ゆかりとアイギスの二人も立ちあがった。
それから、ゆかりはもう一度イシスを召喚するとアイギスに回復魔法をかけた。

「もう、無茶しないでよね…」
「すみません…」
アイギスが申し訳なさそうに言うと、ゆかりは言い過ぎたと思ったのか
「あー…いいのいいの、ほら、私が油断してたんだし…アイギスは助けてくれたんだから…
 えっと…ありがとね」
と慌てて付け足した。

「わかっているなら初めから油断しないでください」

横からメティスがぴしゃりと言うと、さすがに気分を害したのか
「ちょっと、そういう言い方ないじゃない」
ゆかりがむっとして言葉を返す。
「姉さんに余計な怪我をさせないでください。そもそも……」
メティスがさらに言おうとすると、

『ま、まぁまぁ…無事たったんだから…ね?それにほら、久しぶりの番人戦だったし…』
風花が無理矢理フォローを入れてその場を取りなした。
メティスはまだ何か言いたそうにしていたが、少し不機嫌そうにして歩いて行った。

『そういえば…あの黒い影は何だったんだろう………』
そう言いながら風花が次の道へのナビを開始すると、少し離れた場所に何かが立っているのが見えた。
『あっ!前方に扉が…アイギス!ちょっとその扉、調べてもらえる?
 大丈夫、どこかへ移動するだけで、危険は無いと思うから』
風花の言うとおり、それは時の狭間の入り口にあったのと同じような、白い扉だった。

「…ここが……出口か?」
真田が首をかしげながら言うと、
「みたいですね…他の道も行き止まりだったし」
ゆかりが辺りを見回しながら答えた。
『この扉…何処に繋がっているんでしょう…』
「…姉さん、開けてみますか?」
メティスがアイギスの顔を覗き込みながら聞く。
アイギスは頷くと、扉の前に立ち、ゆっくりと扉に手をかけた。

すると扉から白い光が放たれ、4人を包んだ。






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アトガキの様なもの
遅くなってしまい、申し訳ありません。
今回は番人戦と言う事で、ナビ台詞調べたりだとかペルソナ調べたりだとか
やってました。(けっきょく良いペルソナが思いつかず、今回はオルフェウスに
続投してもらいました)次回は恐らく次の迷宮に入っていくかと思います。
また今後も読んでくださると嬉しいです。



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