「…で、わざわざ酒を手土産にCOMPについて聞きに来たという訳か」
玄関先で俺たちを迎えたナオヤさんは、特に驚きもせずに俺たちを部屋の中に上げた。

ミタカがジンさんのところでもらってきた料理をつまみに、ナオヤさんは酒を飲みつつ、
俺の質問に順番に答えていった。

「…だから、何度も言わせるな この構造を見てみろ」
「あっ、それがこっちのパーツと関連して動くんすね!」
「…俺、ぜんっぜんわかんないんだけど」
「ならそこで大人しくつまみでもつまんでいろ」
「……(いつか殴ってやる)…」
「まぁまぁ…」

みたいな会話を夜中まで続けて、
COMPの話題が一段落した所で、ナオヤさんがふと切り出した。

「・・・ミタカ、政府でも聞いたが・・・・・・何故お前は俺の誘いを蹴った?」

俺はその質問に思わずミタカを見る。
ミタカは俺の視線に気づいているのかいないのか、
特に表情を変えずに言った。

「・・・だってさ、こんな判りやすいタイミングで反乱なんて起こしても 返り討ちがオチじゃない?」

「・・・なんだと?」
「・・・・・・どういう意味だ?」
声に若干の怒気を滲ませたナオヤさんと、
余り良く解っていない俺の声が重なった。
「・・・・・・・・・」
俺とナオヤさんは顔を見合わせると、またミタカの方を見た。
「・・・今回の封鎖はさ、悪魔が大量に呼び出されたことに神が気づいて行われた訳でしょ?」
と俺達に向かって問い掛ける。
「あ、ああ・・・」
俺の返事にミタカは頷いて、
「だからさ、神は一応予測したはずだよ。俺が封鎖を何とかする以外にも・・・
逃げる、あるいは力に溺れて好き勝手する・・・・・・もしくはアツロウが言ったみたいに
悪魔の力を利用する・・・後は・・・・・・神に仕える・・・とかね」
と指を一つづつ立てながら言う。
「!!」
その言葉にナオヤさんが頬杖をついていた顔を若干浮かせた。
「?」
首を傾げたミタカに対して、
「・・・いい、続けろ」
と、ナオヤさんは続きを促した。
ミタカは仕切直すように一つ頷くと、今立てた四つの指をひらひらとさせながら、
「神としては多分自分に仕えてほしいと思ったんだろうけど・・・・・・俺は御免だった」
と言った。
「・・・どうして?」
俺はミタカが何を言いたいのかがよく解らなかった。
「だってさ・・・そんなことしたら、この世界全部丸々 神の手に落ちることになるじゃない・・・・・・
そうなったら、間違いなくアレの都合のいいように世界は動くよ」
「・・・!!」
絶句する俺を余所に、ミタカは続ける
「・・・今じゃアレがこの世界を作ったなんて言われてるけど、
そんな事言ったらベル神や他の神話の説明がつか無くなる。・・・・・・だから、
俺はそんな胡散臭い見たことも無い奴に仕えたくなかった。それに、
支配されると解ってそこに出向くなんてのは・・・馬鹿のすることだよ」
「・・・そ、そうか」
納得する俺の隣で、ずっと黙っていたナオヤさんが言った
「・・・だが、それだけでは俺の誘いを蹴った理由にはならんぞ。支配を拒絶するならば、
俺が言うように奴を倒せばいいだろう・・・・・・」
「・・・だから、最初に言ったじゃない。そのくらいアレは予測してるって 
今そんなことしたら蟻地獄の作ったスリバチの中に墜ちる蟻位愚かだよ・・・
反乱したら間違いなく大人数・・・ってカウント人でいいのかな・・・・・・ま、いいや
天使の大群に攻め込まれて長期化して劣勢になって・・・
天界でも魔界でも無い俺達の世界が被害を被るんだよ」
「・・・・・・・・・」
俺はある意味ナオヤさん並の予測を立てるミタカを呆然と見遣った。

「・・・・・・お前はいつもそうだ、俺の話を聞いた上で予想と違う行動をする」
どこかウンザリしたようにナオヤさんが言うと、
「俺には俺の考えがあるの・・・・・・アマテラスの話だと度々俺達の世界はなんか裏で危険になったりするんだけどさ、
俺達以外の昔からいる悪魔使いがいたりとかで、そういう人のお陰で結構平和なんだって・・・
だから、そういうことに悪魔を使うのは黙認してるのに、自分に火の粉が降り懸かりそうになると
妨害する神の姿勢が俺は気に食わないね・・・・・・まぁ、今回俺は現状維持を選んだけど
・・・もしまたこういうことが有れば俺はナオヤに従うよ」
それでいいでしょ?
とミタカがナオヤさんに言うと、
「・・・まぁ、そうだな」
とナオヤさんも納得したみたいだった。
それを区切りに話しはお開きになって、
俺達はナオヤさんの部屋に泊めてもらう事になった。

「…あっちぃ…」

俺はリビングの床を借りて寝てたんだけど、8月も終り近いとはいえ まだまだ暑い
月明かりが差し込んでぼんやりと明るい部屋を見回すと、
ナオヤさんが俺と同じく床で掛け布団を被って眠っていた。
身じろぎもせず、規則正しく寝息が聞こえることを除けば、
まるで彫像のようなナオヤさんの寝姿を見て、俺は思わず
(寝相までかっこいい人種って居たんだ…)
なんて考えた。
部屋はスタンバイモードになったデスクトップ型のPCと、ソレにつながれたLANの光が
ぼんやりと部屋を照らして奇妙な陰影を作り出しているだけで、
深夜独特のぴんとした空気に包まれている。
「…あれ」
ソファを見ると、そこで寝ていたはずのミタカがいなかった。
(どこで寝るかはジャンケンで決めた)
「どこいったんだ…?」
俺は辺りを見回して、それから水でも飲みに行くついでにキッチンのほうも見てこようと思って、布団から抜け出した。

ミタカは厨房のシンクの前でぼんやりと立っているのが見つかった
なにもせず、ただ窓から見える月明かりを眺めてるような感じだった。
(寝ぼけてんのかな…)
俺は極力音を立てないように厨房に入ると、小声でミタカに声をかけた
「ミタカ?」

ミタカは俺の声に反応すると、ゆっくりとこちらを向いた
「!!」
そこで俺は思わず絶句した。

ミタカの目が―――真っ赤に染まっていた

ミタカは…というか、ミタカの家はみんな色が薄くて(ナオヤさんなんかはその極端な例だ)
髪や瞳の色なんかが、俺たちよりも非常に薄い。
だから…外なんかで見ると、ミタカの髪は青空を写してるせいか、全体的に青っぽく見える。
瞳も同じように、髪よりは若干深い青色に俺は見えていた。
…けど、今見えているミタカの目は、充血とかじゃなくて・・・
…本当に瞳全体が真っ赤に染まっていて、そこだけが現実離れした雰囲気を作り出していた。

「おい…どうしたんだよ…その眼」
俺が声をかけても、寝ぼけてんのか焦点の定まらない目線をこっちに向けるだけで反応が無い
俺はミタカに近寄ると、肩をつかんで揺すってみた。
「……。」
今度はわずかに反応があった。
俺はソレに安堵すると、肩をつかんでいた手を離した。
すると、ミタカの眼は徐々に元の色に戻り、焦点も定まってきた。

「………アツロウ」
意識がはっきりしてきたのか、ミタカが俺の名前を呼ぶ
「ようやくおきたか?」
俺が尋ねると、ミタカはそのまま俺にもたれかかってくる。
「おい、だいじょぶか?」
俺はミタカを受け止めながら、尋ねる

「アツロウ……俺、ヘンなんだ」

もたれかかったままミタカは、普段とは打って変わった弱弱しい声で、ぼそりといった
「え?」
俺がミタカの頭の載った右肩のほうに顔を向けると、ミタカは小さな声で言葉を連ねた

「俺…おかしいんだ……封鎖が終わってから…ずっと、気にしないようにしてたけど……
けど、今日…あの チャラ男に言われて、分かったんだ…」
俺の知らない話が混じっているけど、何も言わずに続きを待った。

「俺の…俺の、中に……何かいて、ずっと ずっと蠢いてるんだ…!
…機会を狙うみたいに……」
そういって自分の服の心臓の辺りを掴む
「このままだと……俺が、得体の知れないもんに変わっちゃいそうで……
怖いんだ、俺がもうみんなとは同じように過ごせなくなることが…………
アツロウや、ナオヤと……一緒に過ごせなくなるのが……怖いんだ!…・・・ッ」

そういって、俺の背に腕を回してミタカがしがみついて来る。
ぱた、ぱたり と何かが床に落ちる小さな音が聞こえた。
それはこいつがコレまで過ごしてきて俺にはじめて見せた弱さだった

「…大丈夫」
俺はミタカを抱き返しながら、あやすように背中をたたいてやる。
「俺は今ここにいるし、これからもずっと傍にいるから……ナオヤさんだって、
ユズだって…みんな、お前の傍を離れたりしねぇよ……大丈夫だから…」
そういって暫く、震えるミタカを抱きしめていると

「ほんとに……だいじょうぶ、なんだな…」
とつぶやいた。

「ああ、……俺は、絶対にお前から 離れないから…」
(絶対に、お前を 放さないから…)
その言葉がミタカを安心させるためだけじゃなくて、自分自身のエゴでもあるってことは気づいていた。
けど、それでも俺はミタカを離したくは無かった。
お前は、俺の…たった一つの居場所なんだから……

もっと力を込めて抱きしめると、ミタカも同じように力を込めて抱きしめてくれた
暫くそうしていたら、俺たちはいつの間にか眠っていた。

×

俺はいつもの時間に眼が覚めると、部屋で寝ていたミタカとアツロウが居ないことに気がついた。
リビングを出て、いくつかある部屋を見て回っていた時に
厨房でお互いに身を寄せ合うように眠る二人を見つけた。
「・・・居ないと思ったら・・・こんな所で眠っているとはな」
(寝ぼけていたのか・・・それとも部屋が暑かったのか・・・・・・)
俺はそう呟くと、二人をそれぞれ肩に担ぎ上げ、来た道を引き返す。

「・・・・・・まぁ、今回はお前の奴に対する感想が聞けて良かったよ・・・」

そう呟き、堪え難い愉悦に口端を吊り上げる
「ククク・・・いずれお前は本当の意味で逃れられなくなる・・・そうなった時、
あるいは・・・そうなる前に・・・俺はお前と共に奴を倒す・・・・・・そうだろう?ミタカ・・・・・・」
俺は二人を寝室のベッドに下ろすと、慈しむ様にその髪を撫でる。

「それまでは・・・俺もお前と共に在ろう・・・例えお前がどれだけ変わろうとも、
俺にとってはたった独りの弟なのだからな・・・・・・」
俺は暫く弟の寝顔を眺めると、二人に掛け布団を被せ部屋を後にした。


やがて、部屋はまた元の静寂を取り戻した



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アトガキのようなもの
だいぶ妄想入れまくってます。展開がナオヤルートと大差ない気が…しないでもないです
今回はチャラ男に揺さぶられてアツロウに癒される主人公みたいなのを書こうかと
んでもってちゃっかりナオヤに愛でられるみたいな(意味不明すいませんorz)
なんというか管理人の嗜好なのかやたらと主人公がへタレですいません…神に対しては
なんかえらそうなことを言ったりしているのに…なぜでしょうか…笑
作中のアツロウの居場所云々のネタもいつか書いてみたいです。



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