和解してからは、この二人の状態は俺が見た限りでは以前と同じようだった。

なんでかミタカはナオヤさんの膝の上に座り、
時折見上げては嬉しそうにする。

(…よっぽど辛かったんだな……拒絶されたこと…)
さっきまでの狂騒を思い出して、それからこの二人の誤解とかがなくなってよかった
そう思った。
「…さっきお前は俺の敵になるために救世主になった訳ではない…といったな」
不意にナオヤさんがミタカを見下ろして言った。

「うん?……うん、言った」
ミタカが不思議そうに言葉を返すと
「あれは…どういう意味だ?お前は俺が神を憎む事をあの時点で知っていただろう」
詰問するでもなく尋ねたナオヤさんにミタカは

「俺…ナオヤは神が勝手に人間界に干渉するのが嫌なんだと思ってたんだ…だから…
 俺が救世主になって、神の言う通りに動いて地位を上げたら…俺が人間界に干渉
 しないで…って言ったら、聞いてくれるんじゃないかって思ったんだ……」
気まずそうに顔を背けて呟いた。

「…お前が手の内に入った所で奴が人間界への干渉をやめるとは思えんが……」
ナオヤさんがそれに対して反論すると、
「…俺は、もし神や天使と戦争になってナオヤが死んだら、そっちのほうがヤダ…
 だから、俺がそういう風にアレを説得できたら…って思ってた……ヒルズで
 ナオヤの事……聞いたけど…アレって要するに神がナオヤの供物を拒んだから
 ナオヤはアベルを殺したんだろ?」
ミタカはある意味では自分のこととも取れる事さえもあっさりと言った。

「……………まぁ、…そうだな」
ナオヤさんはその事を気にしてんのか、言いづらそうに呟いた。
「…けどさ、それってどう考えても悪いのは神じゃんか ナオヤがあげたものを受け取らない
 だけじゃなくてさ、天使の言う平等を神自身が破ってることになるじゃないか」
ミタカはさらに言う。
「だから俺はそれを神に認めさせたいんだよ ナオヤを怨んでるとか、嫌いだとか
 人間のためとか、そんなこと一切関係ない…俺の自己満足だけど……」

「…だが、それでお前が奴の為に汚れる必要は無い筈だ」
ナオヤさんは何かを反論しようとして、それだけ言った。

「いい、ナオヤが転生だとかで苦しまないで済む様になるなら…構わない」
ミタカは首を振った
「待て、俺が構う」
ナオヤさんが言うけど、ミタカは聞かなかった。
「大丈夫……心配しないで 俺、頑張るから…」

そこまで言ったところで、不意に玄関のインターフォンが鳴った。

「!!」
ミタカはビクリと身を硬くし、ナオヤさんは眼を眇めて扉の向こうを睨んだ。

「あの、俺出て来ましょうか…?」
二人の妙な反応にとりあえずそう言うと、
「いい、俺が行く………天使だ」
ミタカがナオヤさんの膝の上から立ち上がって歩いて行った。
途中でナオヤさんを振り返り
「じゃあね、ナオヤ……また来るから」
と微笑んで手を振った。

ナオヤさんは最後まで何か言いたそうにしつつも
「……ああ」
と頷いた。

俺はとりあえずミタカを追いかけつつ、同じ様にナオヤさんを振り返り
「俺も…また来ます。 次着た時は…COMPの事とか…教えてくださいよ」
遠慮がちにそういうとナオヤさんは苦笑して、
「……考えておく」
と呟いた。



玄関先では、20代前半に見える男と、30代くらいに見えるサラリーマン風の男が立っていた。
それから20代の方の男が
「…やぁ、か弱き人間君……探したよ」
と言った。
その後すぐにサラリーマン風の男が
「…ライラ、失礼ですよアベルに対して……」
と諌めた。

ライラ…らしい20代の男は肩をすくめながら
「だって彼はその呼び名を気に入っていないようじゃないか それならまだ普通に呼んで差し上げたほうが
 いいんじゃないですか?アニエル」
と答えた。

「…えっと……」
ミタカはそんな二人(?)に何と言ったらいいのか戸惑っているようだった。
それから気を取り直したようにライラが
「アマネに聞きましたよ 貴方は日頃学校という職務があるそうですね」
と言った。

「え?……うん、まぁ…」
とミタカは俺から目線を逸らしながら答えた。
…ずっとサボってたのが気まずいらしい
そんな様子に俺が苦笑していると

「我々からの職務でそれを行えないと言われましてね…貴方の日常を妨げるのは
 まだ早い…と神も判断されたようです。」
アニエルらしいスーツ男がさらに付け足す。
「今後はもう少し頻度を減らすそうですよ?良かったじゃないですか」
とライラが微笑んだ。

アマネは俺の部屋で言ったことをちゃんと守ってくれたみたいだ。
これなら今よりもミタカの負担が減るんじゃないかな…
俺がそう思っているとミタカは

「…そっか、ありがとう……それと…勝手に連絡切っててごめん…」
と呟いた。
「…今後気をつけてくださいよー?あの封鎖ならともかく、私ら擬態までして探さないと
 いけないんですから」
とライラが冗談めかして言うとまたアニエルが
「またそんな気安い態度を…貴方は天使としての自覚があるのですか? まったく…
 アベル、今後のことはまた我々がアマネを通して連絡いたしますので…今日はこれで」
とライラを諌めつつミタカに向き直って言った。
それで用件は済んだのか、それ以上のことは言わずに二人は去っていった。

「…今のってさ、要するにミタカが学校に行けるって事だよな?」
と俺が隣に居るミタカを見ると
「…そうみたい」
とミタカが呟いた。

「やったじゃん!また俺達一緒に過ごせるんだ!!…ユズにも知らせないとな…アイツ
 ミタカ来ねぇのすっと心配してたんだぜ!」
俺がそう言ってミタカに飛びつくと、
「はは、うん…ありがとう……明日からちゃんと行くから」
と笑いながら言った。

「じゃあ、帰ろうか…」
とミタカが呟いたので俺は
「その前に俺んち寄ってけよ?お前服俺んち置いたまんまだから」
と言った。

空はいつの間にか晴れて、雲の間から光が差し込んでいた。



×



ミタカが俺の為に救世主に…
だが、アイツがいくら地位を上げたところで奴が聞き入れるとは思えん
ミタカが根負けするのが先か、あるいは奴が根負けするのが先か…
あるいは…

「…ミタカ君の精神が壊れるのが先か…ってね?」

不意に隣に聞こえた声に顔を上げると、特に見たくもない奴が立っていた。
「……お前」
俺が呟くと、ロキは愉しそうにニヤリと哂って
「あーホント君ら見てて飽きないよ…ボクが弟殺しの再現見せてねーっていったのにさぁ…」
と言った。

「…誰も貴様の希望など聞いていない」
俺が言った事を聞いているのかいないのか、ロキは勝手に部屋の中を歩き回りながら
「さーぁて…ここからがお楽しみだよねぇ?…クククッ……神相手に説得を試みようとする
 魔王…それを見ているしかない君……どうこうしてる内に彼の中の魔力は大きくなり……
 彼の友人は次々と彼を置いて死んでいく……置いていかれた彼は今後どうなっていくだろうね?」
考えていたことをあてつけのように声に出しながら俺を見る。

「……ロキ、黙れ」

「フフフ……ホントに楽しみだよ…君の為にあの彼が穢れて壊れていく様を一番近くで眺められるなんてね…」
どこか遠くを見たような、妙に恍惚とした顔でロキが言う。
「それとも耐え切れなくなって神に反旗を翻すか……そうなったほうが君は嬉しいのかな?」
抉る様に、舐める様に俺を見るロキに嫌気がさして

「…黙れッ!」
手近にあったものを投げつけるとロキは姿を消した。

”まぁボクは気が済むまで君の弟を鑑賞させて貰うよ…本当に君達は見ていて飽きないねぇ……”
と空間に絡みつくような声を残して


「…ミタカ……俺は…」
俺は…お前をどうしたいんだ……?
このまま黙って見ているのも訳にも行かず、俺の為だと言うアイツの行動を止める方法も判らない…

「…お前に、残される痛みを味あわせてなるものか……」
大切な人間が次々に自分を置いていく…それ程の地獄がこの世にあるだろうか
「……お前には、決してそんな思いをさせはしない……この俺が…」

いつの間にか雨は止み、
がらんとした部屋に俺の呟きだけが響いていた。




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アトガキのようなもの
だいぶ妄想入れまくってます。このセリフ最早お約束…orz
何だかんだいって主人公を憎みきれないどころかやっぱり愛してるよナオヤさん
的な感じになりました。いやぶっちゃけ力量不足が否めませんが…すいません
最後を華麗に(!?)掻っ攫っていくどころかナオヤすら動揺させるチャラ男ってどうなの
とセルフツッコミ入れつつ微妙に薄暗く終わる辺りがアマネルートなんじゃないかと思います。
毎度意味不明申し訳ないです(笑




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