「……行かないでッ…!」

自分の声で眼が覚めた。
深夜の学生寮、わたしはいつの間にか伸ばしていた手を力無く下ろすと、深い溜息を吐いた。
湊さんが居なくなってから、もう4日程経った。
あれからずっと部屋から出ていないから、正確にはわからないけれど…

昨日は彼とのお別れ会があったらしい
…けれど、私は参加しなかった。
彼と縁のある人たちを見ていると、嫌でも彼との思い出が蘇ってしまう


いくら悲しんでも消えない喪失感
わたしは夢の中でずっとずっと彼を追いかけていた。
……どれだけ追いかけても――本来ならわたしの方が脚は速いはずなのに――追いつけなくて、
暗闇の向こうに消えていく彼に手を伸ばしても、わたしの手が彼に届くことは無い。

「わたしは……あなたを守る事を…生きる証にすると決めたのに……あなたは、もう…
 手の届かないところへ…行ってしまったんですね……」

人間は死んでしまったら魂があの世へ行って……
お彼岸やお盆に帰って来るんだと前に何かで聞いた気がする。

…けれど、わたしは機械……どれだけ願っても人間にはなれない。
わたしが機能を停止したところで…わたしには魂が無い………
湊さんに会って、”こころ”を持つことが出来ても、こればかりはどうしようもない…

「…わたし、これから……どうしたらいいの…?あなたを失って……生きる証を失って……
 ”生きて”ゆけるの………?」
夢を見るようになってから、毎夜問いかける事
わたしにとって、彼は…本当に大きな…こころの大部分を占める事だった

ニュクスを退けて…影時間が無くなって……わたしの、対シャドウ非常制圧兵装としての存在意義も無くなって…
それからずっと記憶を失って……思い出した時に”あなたを守る”と湊さんと約束したこともすぐに守ることが出来なくなって…
どうして、もっと早く思い出すことが出来なかったのか…あるいは、どうしてもっと早くに彼の体に起こる異変に
気づくことが出来なかったのか…わたしはずっとその後悔に苛まれていた。
わたしは湊さんが一人ニュクスコアへと向かって――そして、帰ってきて――
桜の舞う屋上で眠りについた――その情景を何度も何度も思い返す

何度思い返しても、後悔しても、彼が戻ってくることは無い
彼が死んでしまったのは、誰のせいでもない
それはわかっているつもりだった
けれど、それでも”もしも”を想像することを止められない


自分がどうにかなってしまいそうだった
朝も夜もずっとわたしのこころには彼を失った喪失感がくすぶっていて
体を引き裂かれるような悲しみが全身を支配していた。

”僕は今ここに居るよ”

”泣かないで…大丈夫だから……”

大丈夫だと言った彼はもういない…
同じようなことが何日もぐるぐると頭の中を巡っていて
自分ではこの悲しさをどうしようも出来なかった。



「…………湊さん…」

わたしの声は、暗闇に溶けて消えるだけだった





×



――――それから、数日後








「………ここは……?」

気づいたとき、私は巨大な円形闘技場の中心に立っていた。
赤茶けた石造りの建物…そう、古代ローマのコロッセオの様な…

「…私は……」
自分の両手を見下ろす。蝶の様な装飾の付いた……機械の掌を
下げた視線の先には、床に置かれたクロスロッドの柄も見える。
(………どうして、ここに…)
心の中で呟いた時、悲鳴が響いた

”……行かないで!!!”

聞き覚えのある声に、ハッとして顔を上げる
辺りを見回しても、声の主は見えない
(……今の声は………私は…)
ふと、私の中にひとつの"予感”が湧き上がった
どうしようもない不安のような…耐え切れない悲しみのような…
どこか遠く一点を見つめて、私は”予感”の先にある人物を思い浮かべる


「………姉さん…」



私の頭の中にあるのは金髪碧眼のショートカットをした少女の姿
暗闇の中に一人座り込み、項垂れている

その少女が像を結んだとき、私の中の不安感が一層強くなった
鼓動の代わりのパピヨンハートの胎動に合わせる様に、どんどんと大きくなる――予感



(……姉さんは………必ず私が助けてみせる…)

私は決意と共に表情を引き締めると、
クロスロッドを掴み、円形闘技場の豪奢な扉を開け”外”を目指した。
どうしようもない運命から、姉さんを助け出すために。
……その為ならば、私はなんだってしてみせる











この時、わたしたちには知る由も無かった。
”彼”がいなくなったわけを
シャドウとペルソナ…相反する二つの力の関係を
わたしたち自身が招きよせた現象を……


そして時は3月31日へと進む―――




←戻
アトガキのようなもの
だいぶ妄想入れまくってます。というかほぼ妄想です(汗
書くきっかけは、主人公が死んだ事を神木さんが知ったら、
「…君が僕よりも先に逝ってしまうなんてね……」って言う、絶対言う
と妄想したところから始まりました。(ラストは知ってましたがクリアはしてなかったのです)
…しかしアトラスはそこを大きく裏切って、3月の3日か4日に彼を先に行かせてしまいましたorz
P3Pクリアしたときにはもう書き始めていたので諦めてできる限りコミュキャラを出して
主人公が死んでしまってどんな思いを抱いたか、を書くことを目指しました。
(一部田中社長とか末光とかでてないんですが…すいません)
葬式ネタも無達出したいが故です もうなんでもありです
できるだけリアル感出そうと迷走してる感じですが、無事完結できて幸いです。
サイト内で一番初めに書き始めた小説のはずが…こんなに遅くなってしまいました
待っててくださった方、お待たせしました そして読んでくださりありがとうございました。
この小説でキャラクター達をいかに上手く表現するかとか、そういう部分が磨かれたと思います
次はP3Pで何か書いていきたいなと思います。長々と失礼しました



フレーム未対応、携帯電話の方は以下のリンクから戻ってください。
対応している方がこちらを押すと携帯用Topに戻ってしまいますのでご注意ください

◇Index
◆Top
◇Novel