その報告が来た時
俺はナオヤの部屋(ヒルズを占拠して適当に割り振った部屋)で小説を読んでいた
 
なんか見たものの確実に死に至らしめる部位が視える眼を持った女の子が、
ナイフと格闘で異形だったり異常だったりする敵を倒していく話
 
「なー 直哉ー」
ソファにごろ寝した格好で、椅子に座りパソコンに向かっている直哉に声をかけると
「何だ」
と眼鏡をかけた直哉が振り返る
「あのさ コレあったら便利じゃない?」
と読んでいる小説のその眼の描写について説明してやると
「そんなものが無くともお前ならば十分に神など殺せるだろう」
「んーでもさー 今のままじゃどこが弱点かわかんないじゃん たぶん全門耐性くらいは
つけてるんじゃない?」
「ならばその体全体に万能属性で攻撃を仕掛ければいいだろう」
「………」
身も蓋もあったもんじゃない
なんでこう、押して駄目なら引いてみろ的な思考なんだ……
「…そもそもそんな眼がこの世に本当にあると思うのか?」
むくれた俺に対して呆れながら言い捨ててパソコンに向かってしまう直哉
この人小説とかファンタジーに対してなんかシビアなんだよね・・・・
「悪魔がいるんだから あってもいいんじゃない?」
「お前が身につけていなければ意味が無いだろう」
「………………」
駄目だ この人と論戦とか無理がありすぎる
なんて思ってまた小説に眼を落すと
 
「ミタカ!直哉さん!!」
 
と激しく扉を開けてアツロウが入ってきた
どことなく焦ってるってか慌ててる様に視える
「あ、アツロウ」
「どうした?」
俺たちの反応に答えるのにもそこそこに
「ヤバいっすよ とにかくちょっと来てくださいよ!」
と俺たちを上の方の階の管制室に連れて行った
 
「あらま」
そこで俺が見たものは
今から数時間後にここ――俺たちの根城のヒルズ――に落ちるであろう
ミサイル群の軌道画面だった
「どうするんだよ! このままじゃ俺ら爆発に巻き込まれちまう!」
アツロウが青い顔で言う
ここでハッキングかなんかやってたら見つけたんだろうな
「ネットでも騒いでいるぞ」
そういって直哉が俺たちに別の画面を見せる
そこではアメリカの大統領だか防衛庁官だかなんだかが
英語で力強くまくし立てている
「………」
固まるアツロウと俺
直哉はいいんだろうけど(テストで常に1位だったから)
俺ら、英語できないんだけど
そんな俺たちに気づいたのか
軽く息を吐ついて(なんだよそのやれやれみたいな態度!)
「こいつが言っていることを要約すると、だ
この世界を作った神を滅ぼそうとするなど言語道断 われわれの神を守るために
アメリカ合衆国は魔王を抹殺するためにミサイル攻撃を行う
ということだ これには日本政府やら自衛隊やら
唯一神信仰のアラブ諸国も関与しているらしいな 馬鹿どもも多少考えたようだ 無駄なことを」
とこともなげに締めくくる
え…それ、ヤバイんじゃないの
「どうすんすか…」
あっさり言った直哉に対して アツロウが若干呆れ気味に言う
まぁ、このまま追撃されたら終わりだしね
「簡単なことだ 俺たちには悪魔の力がある それを使ってヤツラを叩くぞ」
カイドーとマリを呼んでおけ
とナオヤはさっさと部屋から消えていった
「………」
置いていかれた俺たちは
とりあえず手に持っていたCOMPを起動して
カイドーとマリ先生に召集のメールを書き始めた。

×

「さて、今からミサイル迎撃に対する対策を立てるんだが…」
何でアンタが仕切ってんだよ
俺は軽く突っ込みを入れたくなったが 放置して好きにやらせてやることにした
「俺が対策を立ててもいいが 俺たちは魔王軍だ つまり、頭はミタカだ」
「へっ!?」
いきなり名前を呼ばれたので何かと思った
「何だ」
「いや、別に…」
「続けるぞ」
そういってまた顔を全員に向けて話を始める
「これまでの戦いは総てミタカの指示で動いてきて そしてその総てで勝利を収めている
よって今回もミタカに指揮を任せてみようと思うがいいか?」
アンタ仕切っといて言うことそれかよ…ってか俺がやるの?
なんてナオヤの隣で無言で座っていると
「俺はかまわねーぜ ミタカに付いて行くって決めたんだ 
それにコイツなら俺よりも戦略的に動いてくれそうだしな」
にやりと俺に笑いかけながらカイドー
「そうね…私はそういうものは良くわかってないから むしろ指示してもらえたほうがありがたいわ…」
と頬に手を当てながらマリ先生
「オイラは戦略とか疎いからミタカに任すホー!」
と椅子に脚が届いていないジャア君
「俺はいつもミタカの指示だったから やりやすいかな」
とアツロウ
「では、決まりだ できるか?」
とナオヤがまたサラリと無茶振りしてくる
けれどいちいち騒いでてもいつものことなので
俺はとりあえず考えた戦略を伝える
「えーと…まず攻撃は2地点から 自衛隊による陸地からの攻撃 
これはたぶん包囲網も兼ねてる 次に、アメリカ軍からのミサイル攻撃 
コレは単純にビルを破壊して俺らを倒そうってヤツ
だから 今回はチームを2つに分けようと思う」
「何でだヨ ゾウチョウテンとコウモクテンんときは一個撃破だっただろうがよ」
とカイドーが指摘する
「たしかにそうなんだけど 今回は陸と空だろ?前回は陸と陸だった
だから、空を攻撃している間に陸から打ち落とされたら困るわけ
逆に、陸の攻撃中にヒルズを爆破されても困るわけ 寝るとこなくなるしね?」
と言うと
「ああ、なるほどな」
「で、そのチーム分けなんだけど…3:3でどう?」
とナオヤを見ると
「構わん」
と端的な返事をもらった
どうやって分けようかな…
「今回はミサイルと戦車がメインだろうから 陸地を魔法系で 空を物理系で固めようと思うんだけど…」
というと
「じゃあ、俺やカイドーは空か…」
とアツロウがつぶやく
「ほぉ 俺が空をネ…楽しめそうだぜ おいパソコンヤロー…いや、アツロウ
デスバウンドは置いてけよ?」
「なっ あれないと攻撃できないだろ!」
「八相発破でもいいだろ」
「あれは外れが大きいんだよ!」
なんてアツロウとカイドーが若干喧嘩しだしてしまった
しまったな スキルセットは一人一個だった…なんて思っていると
「チームを解除すればいいだろう」
とナオヤが助言を出してくれた
「へ?」
と今にも殴り合い(しだしたらどっちが勝つ以前にこの部屋壊れるな)しそうな2人が
直哉のほうを見る
「スキルセットが共通なのはチームを組んでいるからだ ならばそれを解除すれば事足りる」
もう一度だけ多少判りやすく(なったのか?)説明する直哉
「でっ でもそれじゃ俺たちミタカのチームじゃなくなるってことだよな…?」
アツロウが不安そうに言う
「チームなど別にCOMPでつながっていなくとも忠誠心があれば十分だろう」
と言い放つ直哉
「そっか そうだな…」
アツロウとカイドーはそれぞれの席に戻った
直哉はそれを見て 話を戻せといわんばかりに俺を見る
「えっと、じゃあ役割分担なんだけど…」
といってホワイトボードに役割を描いてみる
 
地上班
・直哉(指揮)
・マリ先生(回復と戦車)
・カイドー(撃破漏れ防止)
 
空中班
・俺(指揮)
・アツロウ(攻撃)
・ジャア君(攻撃)
 
こんな感じかな
書き終わると
「俺は地上か」
とナオヤが不満そうだった
「オイラ移動が遅いから空中は難しいホー」
とジャア君が言う
あ、そこまで考えてなかった
「んじゃー2人入れ替えようか あと、空を物理っていったけど スキルセットの自由が利くから
何でもいいかと思って バランスよくしてみた」
とマジックで修正を入れる
 
「おい、ミタカ お前らの攻撃とかの役割はわかるんだけどヨ
おれの撃破漏れ防止ってのは何だ?」
「あーそれはね 遠距離で戦車とか倒しても 自衛隊員とかがそれをかいくぐってくることあるじゃない 
だからそれを倒すのがカイドーってこと」
ガチバトルのほうがすきでしょ?
というと
「なるほどな」
とニヤリとわらった
これで大体の姿勢は整ったかな
「あ、そーだ ジャア君とマリ先生とでデカラビアとオーディン呼んどいてくれない?」
というと
「わかったわ」
「どれくらいホ?」
「んーできるだけ 沢山 オーディンはLimit付だから 出てきたデカラビアの統制に当たらせて」
2人はすぐに部屋を出て行った
 
「何に使うんだ?」
とアツロウが聞いてくる
「今回のことで、人間が敵に回る可能性が出てきたから それを今後防止するために 
作戦をいくつかね」
「へぇ どんなだ?」
と続きを聞きたそうだったので
簡潔に説明してやる
 
・アメリカ軍と自衛隊を有る程度徹底的に倒す
・民間人と軍人の死者はださない(軍人なら怪我くらいはOK)
・俺たちの力を出来るだけ誇示しておく
 
「なるほどな…フ、お前にしては上出来だな」
さすがに直哉はすぐに理解できたらしい
「ゴメン 俺、まだ良くわかんないんだけど」
「俺もだ」
というアツロウとカイドー2人に
俺が説明しようとしたら
「…簡単なことだ 死者を出せば政府はまた敵討ちだなんだとやかましいが 死者をださなければ 
また、力を誇示しておけば 俺たちを殺そうとする勢力は弱まるだろう」
「別に敵なんざ殺しちまえばいいだろうがヨ 全部殺せば文句は言えネェ」
「奴らは仮にも人間だぞ それを見た知人やらなんやらがいきり立つだろう 
だが、戦地に赴いて重症を負いつつも帰ってきた仲間を見てみろ 次は自分がああなるのかと戦意を削がれる」
「はぁ…そういうもんスか」
とナオヤの(珍しく)判りやすい説明に 2人が納得する
ってか 俺の見せ場取るなよ…この人出番少なくてむくれてんじゃないの…
と思ったけど(反撃が恐いので)言わずに続きを話す
「そういうわけで ミサイルとかをやたらめった反射しちゃうとあっちに落ちて多分死んじゃうから、
今回は物理吸収にして悪魔の大群にアメリカを襲わせようか そのほうが恐怖を煽っていいし」
とさらりと提案した俺に
「ハッ やっぱオマエは魔王だよ」
とカイドーが呵呵大笑した
「さっきのデカラビアたちは何に使うんだ?」
とアツロウがたずねてくる
「うん ミサイルとか瓦礫とかで近隣の人が死ぬとさ 魔王がいるからこうなるんだー 魔王を
倒してしまえーっていう過激な人が出るから そういうのが出ないようにね」
「…人間など 自分に被害が及ばなければ所詮対岸の家事だしな」
と俺とナオヤが言った
アツロウはそんな俺を見て苦笑していた
「アメリカ軍とかの攻撃はどうすんだヨ?」
「…ロキにでもやらせておけ」
直哉があっさりと言った だから台詞とるなって…
あいつだけじゃ不安だから へカーテあたりもつけておこう
と俺はこっそり思った
そして作戦が決定した
 
陸地側
・マリ先生(指揮&攻撃)
・カイドー(追撃)
・ジャア君(攻撃)
・デカラビア多数(近隣保護)
 
空中側
・俺(指揮&攻撃)
・直哉(攻撃)
・アツロウ(攻撃)
・オーディン&デカラビア多数(近隣保護)
 
攻撃班
・ロキ(一応 指揮)
・へカーテ(ロキの見張り)
・他多数
 
「じゃあ、作戦開始はミサイル落下予想時刻の1時間前で それまでは各自準備しといて」
俺の締めで会議は終わった





「そういえばさ、爆弾ってあれ 火炎属性でいいの?」
俺の質問に
「爆破すればな、爆破しなければ徒の鉄の塊だな」
とナオヤが答えた
「じゃあ、物理属性ってことっすか?」
アツロウがさらに質問する
「そうだな 爆破させなければ物理属性で処理できるだろう」
「そっか…」
アツロウは納得したようで、一人でうんうんと頷いている
 
落下予想時刻の数十分前
俺たちはヒルズの入り口で最終確認をしていた
「じゃあ、作戦は手はずどおりに 俺たちが散開したと同時にデカラビアたちは近隣の防御に
当たって 守りの盾を3体で作れば多分50メートルから100メートルは防げると思う」
俺の指示にデカラビアたちは頷く(ってか首どこ?)
「ロキは俺たちがミサイルを全部しとめたらすぐに向かって」
俺の指示に人間形態のロキはにやりと笑って
「了解だよ 魔王様」
あぁ、コイツのこの笑顔が胡散臭い……
なんて俺が思っていると
「・・・ロキ お前予定に無い行動をしてみろ…わかっているな」
直哉も同じことを考えていたらしく、苦い顔でロキに言う
「だいじょぶだって ほら、大事なだいじな御貴君のためじゃないか 
僕がそんなへますると思うかい?」
なんてまた満面の(ニヤニヤした)笑みで言う
アツロウやカイドーはもうこいつのテンションについてけずに若干唖然としている
「へま以前に余計なことしそうだから言ってんだよ」
とロキの頭を(ぐーで)はたきながらヘカーテが言う
「ひどいなぁ…ぼくって君を裏切ったことあったかい?」
はたかれた後頭部を押さえながらロキが言う
「…今までの行いのせいだ」
直哉が額に手をやりながら言う
相当いろいろあったんだな…昔
なんてしみじみしていると
気を取り直したカイドーが
「まぁ とにかくヤツラを叩きゃいいんだロ 殺さない程度に」
「そうだな とにかく攻撃を全部防げばいいんだな」
とアツロウも賛同する
「…行くか」
とナオヤも気を取り直して(ロキは無視することにしたらしい)出口(屋上の入り口)に体を向ける
 
あ、忘れるところだった
「ちょっと待って」
俺の一言にいままさに出て行こうとしたみんなが足を止める
「…なんだヨ」
カイドーが 早く行かせろといわんばかりに怪訝な顔をする
「ごめんごめん 行く前にさ、みんなにはコレを被っていってもらいたいんだ」
と俺が差し出したのは
 
フード付の黒マント
 
「なんでだ?」
マントを受け取りながらカイドーが尋ねる
「今回顔をさらすのはマズイと思うんだよね ほら
 アメリカなんかはネットとかでもう攻撃のことを公表してる だから たぶんいろんな報道が来る
そんなときに俺たちの顔が知られたら たぶん外歩けないし鬱陶しいよ ヒルズは悪魔に守らせてる
から入れないだろうけど 隠遁生活みたいになる それに誰が魔王かはまだ判らないほうがいいと思う 
まぁ、見た目的に直哉あたりで勘違いしそうだけど」
と俺がにっこり笑って直哉を見上げると
直哉は鼻を鳴らしただけだった
「あ、ロキとヘカーテも被ってって 人と背格好にてるし」
と同じようにマントを渡す
そして指示の確認をする
「いい、ミサイルには衝撃を加えない 素手でとめるかザン系の魔法で爆発を避けるかして、
自衛隊は車両はどうしてもいいけど 大破はさせない 要はキャタピラとか砲塔を壊せばいいんじゃないかな?」
と俺が言うと
「わかったわ やってみる」
とマリ先生が拳を握る
「そこで俺が出てきた自衛隊員をぼこればいいんだな」
と獰猛そうなカイドー
「殺したらまた面倒になるからね」
「わぁってるよ」
なんて会話をしていたら
「ミタカ」
と直哉が口を出した
「何?」
とマントをかぶりながら直哉のほうに顔を向けると
「言おうと思っていたんだが…ミサイルはぺトラレイで石化させて破壊したほうが楽だぞ」
と俺の指示を修正してくる
「あ、そうか それなら殴るだけでも壊れるもんな」
とアツロウも平手をうった
「ミサイルにぺトラレイって効くの?」
「あんなものに魔力耐性があると思うのか?」
「……ないね」
そして全員でマントを被り
ヒルズを後にした。

×

ヒルズの前では
自衛隊らしい車両や隊員がヒルズを囲んでいて
なにやら
降参しろだのこんなことはやめろだの騒いでいる
「無理いうなっての」
俺は小さくつぶやく
だったら俺は何で人間を捨てたんだ
 
 
ドクン
 
 
そのとき
俺の心臓がいつもとは違う脈動を打った気がした
「……?」
服の上から心臓を触ってみても
一瞬のことでもうわからなくなっている
「どうした?」
そんな俺に直哉が声をかけてくるけど
「なんでもない」
俺は手を振って誤魔化した
そして俺たちは
霊鳥や幻魔の力を借りて(俺と直哉は要らないけど)
空中に舞い上がった
 
それを合図としていたように
カイドーやマリ、ジャア君も自分たちの持ち場へと移動し、
デカラビアたちが散開していった
 
俺たち空中班は
まずヒルズを囲むように三角形に別れて近くのビルの屋上に降り立つ
そして
つれている仲魔を召喚した
 
「!」
下を見ると
すでに戦闘は始まっているようで
あちこちから爆破音や破砕音が聞こえてくる
マリ先生は巧く立ち回っているようで
クルースニクにつれられて飛び回り
戦車(装甲車?)を壊しているようだった
カイドーはマリ先生が打ち漏らした自衛隊員を
混沌の波動で遠距離から攻撃しているのが見える
ジャア君も同じように攻撃しているようで
遠くから怒号(掛け声?)が聞こえてくる
「下は大丈夫そうだな…」
なんて呟いていると
「ミタカ 来るぞ」
とナオヤが空の向こうを見やる
俺もつられて見ると
遠くから黒っぽい塊がいくつかと
戦闘機らしい飛行機もいくつか見える
「よしっ やってやろうぜ!」
アツロウが気合を入れて構える
俺もすぐに魔法が繰り出せるようにCOMPを構える
「直哉! 何秒後!?」
俺が尋ねると
「……16秒後だ」
とこともなげに言った
「カウント任せていい?」
「かまわん」
直哉の先読みは当たるので
任せることにした
ミサイルはぐんぐんと迫ってくる
タイミングさえ逃さなければ問題ない
 
 
「今だ やれ」
 
直哉の静かな号令とともに
俺たちのつれているレギオンがぺトラレイを放つ
こちらに向かってきていたミサイルは一瞬で徒の石と化し、
俺は左手にCOMPを持ち、右手から魔法を繰り出す
 
”マハザンダイン”
 
ガラッ…
瞬間、ミサイルの形をした石は総て砕けて粉々になった
 
ガガガガガガガンッッ!!!
向こうでも轟音が響いていて、みるとアツロウが
同じく石化させたミサイルをデスバウンドで砕いているようだ
 
下のほうでは自衛隊員の恐怖だか驚きだかの声が聞こえる
 
そうしているうちにも第二波が飛んできていて、
俺はまた顔を戻してミサイルを砕く作業に戻った
 
 
 
 
 
 
「………はぁ」
第何波のミサイルを壊しただろうか
ひたすらに壊している気がする
まぁ、アメリカはミサイルの在庫が沢山あるから
戦争を起こして消費してるって噂があるくらいの
軍事国だからなぁ…でもキリがない…
「直哉!」
俺が向こうでミサイルを壊している直哉に声をかけると
直哉は破壊を仲魔に任せてこっちに飛んできた
「どうした?」
何か問題でもあるのかというような顔をする直哉に
俺は不満を漏らす
「コレさあ…キリないんだけど、本体叩けない?」
「あの戦闘機か?」
と直哉が指を指す先には
いくつかのFなんたらとかいう無駄に高い戦闘機が見える
「そう 無理?」
「中身は殺すと不味いんだろう?」
と直哉が言う
「うん、不時着でもさせればいいんじゃないの?」
「…簡単に言ってくれるな」
「エンジンかどこかを壊せばいいんじゃない?」
「…わかった 俺が行く」
「話が早いね」
と俺が笑うと
「おかげでな」
と直哉も笑う
「その代わり上空のミサイル破壊はオマエとアツロウでなんとかしろよ」
「それくらいは判ってるよ」
俺のその返事を最後に直哉は仲魔をともなって戦闘機のほうに飛んでいった
 
「アツロウ! 今の聞こえた?」
俺がアツロウに聞くと
「おう!守る範囲が増えたんだろ?」
とアツロウが答える
「北側お願い!俺は反対側やるから お互いを背にしてやれば大丈夫だと思う!」
というと
「判った!」
その声を合図に
俺たちは持ち場からヒルズの屋上へ戻り、
それぞれ北側と南側の端に降り立った
 
そのとき
 
ドンッ
 
俺の体に衝撃が走った
「…な……に…ッ…!」
よろけながら衝撃の来た方向を見ると
別のビルの屋上に
自衛隊らしき人影が銃を構えているのが辛うじて見えた
 
「ミタカッ!」
アツロウが叫んでいるのが聞こえる
俺は死ぬんだろうか
普通の人間みたいに
打たれたってだけで
魔王ってだけで
人じゃないってだけで
 
ただ俺はみんなを守りたかっただけなのに
 
 
悪魔を消すだけじゃ悪魔の存在を知った企業とかが
呼び出そうとしただろうし
神に従ってもそれを良しとしない、窮屈だと思う人もいると思う
そもそも俺は今回の封鎖を行った神の存在を認めていない
紀元前何年前かはしらないけどいきなり表れて
仏教も神道もギリシア神話も北欧神話も全部否定して
自分が世界を作った だなんて 傲慢な存在 信じられない
自分を認めないものをことごとく排除して
悪魔を制御するにしても、アツロウには悪いけど 政府のいいように使われて
戦争になるだけだろうし
 
だから
俺は俺の大事なものを守るために
大事なものを捨ててまで 魔王になったんだ
俺が間違ったときは直哉が俺を始末してくれるだろう
だからそれまで俺は俺に出来ることをやろうと思った
 
なのに、
こんなところで
こんなくだらないことで
 
終わる のか?
 
俺は……
嫌だ 終わりたくない
 
何も出来ない政府のせいで終わるなんてのは
 
 
ドクン
 
また、心臓が脈打った
 
ドクン、ドクンドクン…
だんだんと早くなり 俺の躯が熱くなる
「………っぐ」
 
そこで俺の意識は完全にブラックアウトした。

×

私がその電話を取ったとき、ちょうどテレビで東京封鎖の特集をやっているときだった
 
「……今回行われた封鎖についてまとめてみましょう」
「はい、今回行われた封鎖は 宗教法人翔門会の教祖 九頭竜氏が神による試練を予測し、
 それに対抗しようとしたことから始まります 彼はかつてバベルの塔で試練に破れ、
 言語を分かたれた人類が、インターネットなどの技術を通じて再び言語の壁を越えたことから
 再び神の試練が起こると予想し、それを防ぐために…悪魔 ベル・ベリトと契約したことから始まります」
「…そもそもなぜ人間に悪魔が手を貸すんですかね?」
「…それはですね ベルベリトというのは 政府の発表によりますと、紀元前に存在したベル神という存在の一部で、
 今光臨している神が現れる前にこの世界に君臨していたんだそうです、で、
 その現在の神との戦いに敗れ、幾多にも分かれたうちの一体が ベルベリトなんだそうです 
 ベル神はその一件で神をうらんでおり、機会をうかがっていたところ、九頭竜氏の呼びかけを聞き、
 神を退けるという利害が一致したそうなんです そして現在 翔門会の主上として君臨し、信仰を集めて力をたくわえていた と」
「では現在六本木ヒルズの翔門会ビルに君臨する魔王とはベリトのことなんですか?」
「…いえ、そうではないようなんです」
「というのは?」
「ええ、今回の封鎖はそのベリトと手を結んだ翔門会が悪魔を呼び出したことで彼らの夏季大会に
 あわせて行われたものなんですが…どうやら封鎖内で悪魔が増えたことにより、
 ベル神というのはベリト以外にも何体かいまして…それらが王位争いを始めたみたいなんです」
「悪魔が出やすくなったことで他のベル達も好機とばかりにでてきたと?」
「そのようです で、王位争いをしていたところ 封鎖内にいたとある人間が偶然にも
 そのベル神の一体を倒してしまったらしく、彼が王位争いに巻き込まれてしまう…と」
「人間が!?」
「はい、封鎖内の情報なので定かではないのですが…われわれSNBの捕らえた情報によりますと、そのようなんです」
「人間までベルの王になる資格があるなんて…」
「それでその人間が現在ヒルズにいるとされる魔王なんですね」
「封鎖内で力をつけて勝ち上がり、頂点に達してしまったと…」
「はい、彼が…まだ正体は不明ですが…現在数人の悪魔使いを引き連れて封鎖での破壊によって
 移築が検討されていたあの建物を買い取り、先日インターネット上にこのような声明を発表しました」
(画面 アナウンサーの持つフリップを拡大)
 
われわれ魔王軍は、現在神と呼ばれる存在を滅ぼし、
人間が神の一方的な試練を恐れることなく暮らせる世界を
作ることを宣言する
 
われわれの敵は神であり、人間ではない
人間に危害を加えるつもりは一切無いが
われわれに仇成すものには容赦しない
 
また、天使が攻め入った場合市街に被害が及ぶ可能性があるが
われわれは一切責任を取りかねる
 
もしも日本政府あるいは他国政府が交渉を持ちかけてきたとしても
たとえどんな内容でも応じるつもりはない
 
「…このような内容が英語でインターネット上に公開されました」
「…なんなんですかこのふざけた遊びみたいな文章は」
「確かに傲慢だ」(コメンテーターが不快そうに言う)
「…ですが、政府が自衛隊STF(政府特殊部隊)を導入したにもかかわらず対処できず、
 悪魔を出さないためと封鎖を突破しようとした民間人を射殺するなどの暴挙に出るしかなかったなかで、
 魔王は悪魔を統一、そして封鎖解除に導いたのは事実です」
「だからといってこのようなものを認めてもいいのですかね…」
 
 
 
「……」
私はだんだん魔王の非難になってきたチャンネルを別のものに変えた
別の局でも似たような特集が組まれている
 
 
「…これが、封鎖内において悪魔を使役していたとされる携帯ゲーム機 
 コミュニケーションプレイヤー 通称COMPです これは民天堂が開発したゲームソフトで、
 メールやインターネットなどの機能がついているものなんですが…」
(アナウンサーが手に持ったCOMPを開く)
「ご覧下さい このように、トップ画面が違い、改造されたものであることがわかります…
 民天堂はこの”改造COMP”の製造の関与を否定しており、現在調査が進められています…
 また、封鎖内においてこの改造COMPが大量に出回ったことで、悪魔が大量に発生したとの報告もあります」
「なぜ COMPが出回ることで悪魔が大量に発生するんですか? これは悪魔を制御する装置ではないのですか?」
「それには こちらのVTRでお答えします 先日の封鎖で閉じ込められ、偶然COMPを手に入れ悪魔使いとなったAさんに話を伺いました」
 
(画面、とある部屋の画面に切り替わる カメラの視点は低く、モザイクのかけられた人物が椅子に座っている)
 
「…COMPはですね 最初に起動するとまず最初に悪魔がでるんですよ
 ええ、一体だけなんですけど…で、その悪魔と戦って勝つと”契約”といって
 勝った悪魔を使役できるようになるんですよ…はい、…で、その悪魔に負ける
 と…まぁ 要は死ぬってことなんですけど その悪魔は世界に放たれて、まぁ野に帰る
 ってとこですか? それで 俺達人間を襲うんですよ………
 え?COMPをどうやって手に入れたかって?…………
(暫くの沈黙)………路地裏でね、売ってる人がいたんですよ えぇ、
 改造COMPですよ? はい 何か翔門会の服をきててですね…売ってたんですよ 
 俺は友達に教えてもらって買ったんですけどね 契約のことなんか一切知らされな
 かったんですよ? マジで ありえませんって ホント そのせいで俺の友達も何人か
 死にましたよ これ絶対詐欺ですって もし見つけたらただじゃおきませんって…
 えぇ…」
 
(画面切り替わる 再びスタジオ)
 
「…という感じみたいですね」
「なるほど 契約 ですか……」
「COMPのメニュー画面には、メール、チーム登録 
 悪魔合体 などの項目が見られます…現在これらの機能を使おうとすると…
 ご覧下さい」
(アナウンサーがCOMP画面をカメラに向ける)
「…このように ”指定されたサーバーに接続できません” と表示されます」
「コレは封鎖の解除の何か関係があるんですかね?」
「…おそらくそうでしょう」
「COMPを売っていた翔門会の人物とは…?」
「えぇ、はい…封鎖解除の後、政府が調査を行い、翔門会内部でも調べたようなんですが…
 このCOMPを売りさばいていたのは 幹部の東間という男のようで…現在政府はこの男を
 逮捕、内乱罪として処理する模様です 現在は身柄を東京地検に移されており、
 ”金のためにやった”などと供述しているようです」
「…翔門会自体は関係が無いと?」
「…翔門会は現在 教祖が行方不明と言うこともあり、暫定的には教祖の娘であり、
 巫女をしている少女がまとめており、彼女によりますと COMP統括部門の筆頭であった
 彼の裏切りという形のようです ほかの信者もCOMPは総て上位の信者の手に渡っていると
 思っていたようです…」
「なんとも酷い話ですよ まったく…そのせいで 多くの人間に被害が出た…」
「ここで、今回封鎖に巻き込まれた方々に話を伺ってみました」
(画面が再び切り替わる)
……
 
 
私はニュースを聞きながら、この3日前にあった 封鎖について考えていた
直哉さんに呼ばれて、御貴とアツロウと私の3人で渋谷に行ったら突然巻き込まれた封鎖。
私達は必至で生き残ろうとみんなで頑張ってきたのに…
御貴は直哉さんについて魔王になってしまった アツロウもついていってしまって、
残ったのは私とケイスケ君とミドリちゃんだけ 御貴は私達の中でも一番強かったから 
ケイスケ君が暴走したときみたいに止めることすら出来なかった…
ずっとみんなで頑張ってここから出ようとベルの悪魔にも立ち向かって来たのに 
悪魔に襲われる人を助けてきたのに
「……なのに…」
私はテレビの前でひざを抱えて今はいない2人のことを考える
(御貴…アツロウ…今、どこにいるのよ……
なにしようとしてるの……)
 
……
「悪魔がさぁ すげー勢いで襲ってくるわけよ で、俺らふつーの人間じゃん? 
 逃げるしかないっつーか…」(17歳 学生)
 
「私は悪魔だけじゃなくて、やくざみたいな…悪魔使いにも襲われて…
 ちょうど通りかかった高校生くらいの悪魔使いに助けてもらったんだけど…」(24歳 OL)
 
「悪魔!? あんなのはあのピンクの服着た女がやったにきまってるじゃないか! 
 あいつは魔女なんだよ! あいつがいなけりゃ いまこんなことになってないよ!」(51歳 主婦)
 
「警官が悪魔を使って民間人を殺してたんだ! 俺の同僚も殺されて…
 高校生くらいの悪魔使いに助けてもらったんだけど…あいつだけ、助けられなかったよ…」(35歳 会社員)
 
「俺も悪魔使いだったんだけどさ いやマジだって ほらCOMPあるし…で、
 自衛隊のおっさんもCOMPもっててさ ”悪魔使いは全員死んでもらう”とかいってさ? 
 急に襲ってくんの ヤツラ銃もってんじゃん? 俺らかなうわけねーってか 
 俺も撃たれたし COMP持ってんならむしろ悪魔殺せよ! あの自衛隊員マジうぜぇよ!」(22歳 無職)
……

テレビでは未だにインタビューが続いている
私の知らないところでも 沢山の人が被害にあったみたい…
私は恐かった けれど アツロウも御貴も「事態を収束する」
っていうから…確かにそのほうがいいに決まってる けど 私は普通の女子高生で、
そんなマンガみたいなこと…いつも誰かが死んじゃうんじゃないかって恐かった
 御貴に心配かけたくないから、必至でこらえて…それで……
 
ピリリ…ぴりり……ピリリ…
 
物思いにふけっていると
隣においてあった携帯がなった
「…だれだろ…」
表示を見ると
「…ミドリちゃん……?」
ミドリちゃんたちとは、封鎖が解除されて 携帯が使えるようになってからアドレスを交換して
分かれた だからあの後もたびたび連絡を取り合っている
けれどミドリちゃんは今の時間帯 イベントで忙しいって言ってたから 何かあったのかな…
そんなことを考えながら「着信」のボタンを押すと
 
「…あ、ユズさん! 大変ですっ ニュースつけてください! ニュース!!」
と電話越しからも判る、切羽詰った声が聞こえてきた
「…え、何 どうしたの!? てかニュースなら今見てるけど…」
電話をもったままテレビ画面に向き直ると、封鎖についてアナウンサーがまた語っているのが見えた
「あ、そうじゃなくて…あの、えっと 東京中央テレビにチャンネル合わせてください!」
ミドリちゃんはやっぱりイベントだったらしくて、むこうでスタッフさんっぽい声が聞こえてきた
わたしはリモコンを取り上げ、言われたとおり東京中央テレビにチャンネルをあわせた
 
「……ご覧下さい! この沢山の自衛隊員を!!」
 
まず目に飛び込んできたのは、六本木ヒルズのビルを囲む、沢山の戦車と自衛隊員だった
「な…なによこれ…!」
思わず声に出してしまうと
「なんか、アメリカ軍があそこにミサイルを撃つみたいで…」
「はぁ? そんなことしたら…だって…」
ミドリちゃんの言葉に 思わず言葉を失った
 
あそこには今ミタカやアツロウが……
 
再びテレビに意識を向けると
「現在、自衛隊とアメリカ軍は 魔王がいるとされるこの六本木ヒルズ翔門会本部にミサイルを撃ち込み、
 その殲滅を図る模様です 魔王側は一切反応せず、現在周辺住民の避難が……」
 
断片的に状況が聞こえてきた
ミサイル……? 殲滅……?
そんな不吉な単語がいくつも耳に入ってきた
 
「いま控え室でテレビ見てて…それでコレ見て ユズさんにも知らせないとと思って…」
ミドリちゃんが呆然とする私に言う
「これ、やばいですよね!? 御貴さんたち しってるのかな… ユズさん どうしよう…」
ミドリちゃんは泣きそうな声で言った
 
「…ケイスケ君は?」
「さっきメールしたらもう向かってるって」
「…判った、私もあそこ行く」
「…でも、」
ミドリちゃんが弱弱しく反論する
「でも私達にはもう仲魔がいないんですよ?」
「それでも御貴たちにあって話をすることくらいは出来るかもしれない あの時は逃げちゃったけど、私 ちゃんと向き合いたいの」
わたしの言葉に ミドリちゃんも決意したようで
「わかった わたしも行く! あっちで合流しよう」
「うん」
通話を切って、私は家を飛び出した。

×

ヒルズ近くに来ると、ケイスケ君が私達に近寄ってきた
「やっぱり来たんだね」
「うん・・・それで、ミタカ達は?」
「さっき自衛隊とかの攻撃が始まって、たぶん 彼は あそこ」
ケイスケ君が指差した先は、高いビルの屋上だった。
「カイドーやマリ先生は地上で自衛隊の相手をしてるみたい」
確かに耳を済ませるとカイドーらしい怒号が聞こえる
「ヒルズの前まで行きたかったけど・・・自衛隊が危険だからって道を全部封鎖しててね・・・」
残念そうにケイスケ君が言う
「仕方ないよ、これはもう戦争みたいなもんだし・・・」
ミドリちゃんが寂しそうに言う
「近くに住宅街があるのに・・・どうしてこんなこと・・・」
「その辺は月森君も考えてるみたいだよ」
「えっ?」
慶介君の言葉に、うつむいたミドリちゃんが顔を上げた
「さっき近くに行ったときにデカラビアを沢山見たんだ、攻撃でもさせるのかと思
ってたんだけど どうやら“守りの盾”で住宅街に被害を及ぼさないようにするみ
たいだった」
「そっか・・・」
ミタカも、まだ人の心を持ってくれているのかもしれない
「これから、どうする?」
私の質問に、ミドリちゃんが考えるそぶりを見せる
「うーん ここからじゃ見えないけど、ヒルズ前は封鎖されてるんですよね・・・」
「私はミタカともう一度あって話をしたい だから、ただ見るだけって言うのもな
・・・野次馬に来たんじゃないんだし・・・」
私とミドリちゃんが悩んでいると、
「それなら首都高三号線に登ってみるのはどうかな あそこなら高さがあって屋上
も多少は見えるんじゃないかな・・・それで無理なら ビルの屋上に昇ってみると
か・・・」
慶介君が見やすそうな場所を教えてくれた
「じゃ、行こう!」
ミドリちゃんの言葉に、私達は動き出した。


通行の規制でもされているのか、首都高に車の通りはあまり無かった。
そのおかげか私達は楽に移動できた
「見える?」
「うん、戦車と戦ってる黒いマントの人がいる・・・あれは・・・マリ先生かな?」
慶介君の言葉を聞いて目を凝らすと、確かに黒い人影が悪魔につれられて自衛隊の
車輌を攻撃しているのが見える
「あっ見てください!ミサイル来ました!!」
ミドリちゃんの指差した先には
逆光で黒く見える黒い塊がいくつも見える
「うぅん・・・屋上はやっぱりよく見えないですね…」
手を目のあたりにかざして見るけど、逆光と高さで屋上にいる人間までははっきり
見えなかった
「やっぱり隣接するビルに登ってみたほうがいいのかもしれないね・・・」
慶介君も同じようにしながら言う
「でもビルって人いるんじゃない・・・?」
私の意見に慶介君が答える
「アメリカ軍が急に作戦を公表して、避難が慌しかったみたいだから、ビルは無人
みたいだったよ セキュリティは動作してると思うけど、非常階段のほうは外に設
置されてるものなら・・・ビル内は無理でも屋上ならいけるかもしれない」
「じゃあ・・・上るんですか? 高層ビルを?」
「・・・一番手っ取り早いんじゃない?」
少し驚いた様子のミドリちゃんに、私は言った


「・・・・・・はぁ はぁ はぁ・・・やっとで着いた」
「手っ取り早いとはいえ・・・アタシ無茶言ったかも・・・」
「と、とりあえず着いたから・・・いいんじゃないかな・・・ふぅ」
数十分後、私達は本当に屋上まで上ってきた
あの戦いから逃げ出した私は、直哉さんが何をミタカにさせるつもりなのか、せめ
て見届けないといけないと思う それに、もしまだ間に合うのなら ミタカとアツ
ロウを説得できるんじゃないかって思ってる そのためなら まずは2人に会わな
きゃいけない

「あ、見えるよ!あそこ!!」
ミドリちゃんが指差した先には、仲魔を従えて ミサイルを壊している三人の人影
一人は、ミサイルを拳で粉々にしていて
もう一人は、衝撃属性の魔法でミサイルを壊している
もう一人も同じく、魔法でミサイルを壊している長身の人
たぶん、アツロウとミタカと直哉さんだ
「あれは・・・ぺトラレイで石化させて砕いてるんだろうな・・・」
慶介君がいう
「そっか、そうすれば爆発しないもんね」
ミドリちゃんが納得したように言う
三人はしばらくミサイルを防いでいて
暫く―――私達が屋上に上ってから40分くらい経ったころ――して
「あれっ?」
ミドリちゃんが何かに気づいた
「どうしたの?」
私が聞くと ミドリちゃんは
「あそこ、2人で何か相談してるみたい 何かあったのかな・・・」
「ほんとだ どうしたんだろう・・・」
慶介君も首をひねっている
暫くすると、2人の人影のうち一人は空へ、もう一人はミサイルを壊していたもう
一人
――多分アツロウ――に何か指示をして形態をビルを三角形に包囲するように立つ
形から、
ビルの屋上で背中あわせにする形態に替えた

そのとき

アツロウに何か指示をした方の影――ミタカ――が身体を大きくのけぞらせてその
場に膝をついた
「えっ!?」
「何?どうしたの? 一体何が―――」
混乱する私達に慶介君が
「撃たれたんだ!あそこ!!」
と別のビルの屋上を指さす
その先には――銃を構えた自衛隊が
「そんなっ ミタカ!!」
私は思わずビルの屋上から身を乗り出した
ここからじゃ見ることはできても手が届くことは無いと知っていたけれど
それでもどうしようもなくなって私は屋上でうずくまる彼に手を伸ばした
「ユズさんっ落ち着いて!」
「そんなに乗り出したら落ちてしまうよ!」
ミドリちゃんと慶介君が私を支えるけど、私のことなんてどうでも良かった
「そんなことよりミタカを早く助けないと! 撃たれたんだよ!? 死んじゃうっ」
半狂乱の私を2人が必死で手すりから引き離す
私は伸ばした手を下ろし、ビルの屋上で膝をつく
「どうしよう・・・ミタカ死んじゃったらどうしよう・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
怪我をしたときにいつも彼を助けてくれた仲魔は、私達にはもういない
私達は無力だった。

×

俺たちはミサイルの根幹を断つために直接戦闘機を攻撃に行った直哉さんの抜けた
穴を埋めるべく、
ヒルズを囲むようにたった場所から、ヒルズ屋上に戻ってきた

そして、
それと同時に、ミタカが撃たれた
うずくまるミタカに駆け寄りたかったけど、やむことの無いミサイルがそれを阻んだ
「ミタカっ!!」
攻撃をしながらも叫ぶけれどミタカはうずくまったまま動かない
ヤバイ!
早く治療をしないと
いくらミタカが魔王になったからって、身体はまだ人間のはずだ
「くそっ」
俺は目の前のミサイルをすべて壊し、連れていたセイテンタイセイとレギオンに後
を任せて身を翻した
ヒルズはなかなかでかくて、すぐにミタカのそばまで行けない
・・・はやく、早くしないと・・・
焦りが余計に足をもつれさせて、思うように身体が進まない
それでもようやく側まで来てその身体を支えようとした時

ふいにその身体が掻き消えた

「え?」
空を掻く俺の手の先には何も無く
周りをみても見当たらない
「ミタカっ? どこだ!」
すると上空から
「アツロウ上だっ!」
戦闘機の破壊を終えたのか、直哉さんがこちらに戻りながら叫んでいた
上?
俺が上を見ると
ミタカは屋上のさらに上空に浮いていた。
「・・・ミタカ?」
「――……………」
呼んでも聞こえていないのか
上空で静止したままあいつは動かない
「おい、だいじょぶなのか? ミタカ!」
もう一度叫ぶと、今度は聞こえたのか 顔をこちらに向けた

「!?」
そのとき、フードの下から見えたあいつの目は
いつもの蒼っぽい墨色じゃなくて、
血を流し込んだみたいに真赤だった

―――あれは、あの眼は
封鎖中の……

俺はその目を知っていた
ユズやみんなが不安になるからと思って黙ってたけど
アイツがあんなふうになるのを俺は前にも見たことがあった。
封鎖の3日目と6日目 ベル・デルやベル・イアルと戦った日の夜
夜中に眼が覚めたときに、ミタカがいなくなっていて
探しに行ったらあいつは誰もいないところで仲魔も召還せず悪魔を一体残らず倒し
ているのを見つけた
・・・・・・倒している というよりは 俺には一方的な虐殺に見えた
そのときに長めの前髪からちらっと見えたのが、あの眼だった
朝になってそれとなく聞いてみたけど
アイツは「知らない」っていうから、俺が寝ぼけたんだと思っていた
けれど
6日目も同じようにふらりと姿を消して同じように悪魔を虐殺していて
夢じゃなかったんだと確信した
アイツがどうかなるんじゃないかと思っていたけど
その2日間以外は普段どおりで、俺の杞憂だと思っていた

「アツロウ ミタカをとめろ!!」
直哉さんの声に俺は我に返って
もう一度ミタカを見ると
アイツの広げた両手のあたりに魔力が渦巻いているのが見えた
あれは、確か永田町で戦ったルシファーとか言う悪魔の技………
フィールド上にいる敵全員に万能属性で最大ダメージを食らわせる―メギドラダイ
ン―とかいう奴だ
「そんなもん放ったら この辺一体全部死んじまう! おいミタカやめろ!」

―――殺したらまた面倒になるからね

作戦会議であいつが言ってた言葉を思い出した
けど今、それを言ったあいつ自身がその言葉をぶち壊そうとしている
このままじゃミタカが人殺しになっちまう それ以前に 本当の魔王になっちまう
それだけは、それだけはやめさせないと・・・!
「クソッ セイテンタイセイ!」
俺は直哉さんが戦闘機を倒したことでミサイル攻撃が止み、待機状態になっていた
仲魔を呼び、
どうやってとめるかとか そんなことは一切考えず
とにかくアイツの所まで行こうとした

(ヤバイ まにあわねぇっ!!)

あと数十メートル、というところで
ミタカが技を放とうとした
そのとき

「ぐうっ!?」

「!・・・直哉さん・・・・・・」
俺が行くよりも早く
直哉さんがミタカのところにたどり着いて
その鳩尾に拳を叩き込んだ
両手に溢れていた魔力が霧散し、ミタカは失神したらしく
目の前で拳を繰り出した直哉さんにもたれ掛った
「危なかったな」
直哉さんがミタカを担ぎながら言う
「すんません 俺、間に合わなかったっす」
俺が謝ると
「いい、気にするな 先ほど向こうにロキを向かわせた ミサイルはもういいだろ
う 俺はこいつを中に運ぶ、お前は下の後始末を手伝って来い 奴らが撤退したら
デカラビアに周辺の警戒を任せて、お前らは戻って来い いいな」
そう言って無限の具足か飛翔でその場から掻き消えた
俺は仲魔に下に運んでもらって、マリ先生とカイドーと一緒に自衛隊を倒すことに
専念した。
その間もミタカのことが気になってあまり集中できなかった
その後暫くして自衛隊は撤退していって、アメリカの戦闘機も(直哉さんに壊され
たもの以外は)同じく撤退していった
俺たちはデカラビアとオーディンに後を任せて ヒルズ内に戻って来た。

「オイ」
廊下を歩きながら、カイドーが俺に声をかけてきた
「何?」
「ミタカだがヨ・・・アイツどうしちまったんだ?」
「なんだか様子がおかしかったみたいだけれど・・・」
マリ先生も言う
「俺も・・・よくわかんないんだけどさ・・・・・・」
俺はさっきの顛末と、封鎖中に俺が見たことを説明した
・・・・・・・
説明を終えた後、カイドーはいきなり俺の胸倉をつかみ上げた
「馬鹿かテメェはっ!!」
さすが(元、というべきかも知れないけど)不良のリーダー 俺はその剣幕に思わず
首をすくめる
「タダシ君 乱暴は…」
マリ先生が止めようとするけど
「うるせぇっ!」
カイドーはそれを一蹴して俺に向き直る
「何で、そんな大事なこと俺たちにいわねぇんだよ!いえねぇってのか? なら 俺たちは仲間じゃねぇってのか!? あぁ?」
「違う、そうじゃないさ…忘れてたんだよ…あいつ、普段はああだから………」
俺は精一杯言い訳するけど
「それが馬鹿だってんだよ アイツは、普段どおりでも “人間”で魔王になっち
まったんだ 何も無ぇわけがねぇだろ! なんかあってからじゃおせえんだヨ!」
「!!」
・・・そうだった、アイツは自分の意思でも、人間のまま万魔の王なんてものになって
まだ不安定なんだ、・・・俺は、まだアイツに頼ったままだ…
うつむいた俺に言い過ぎたと思ったのか、カイドーは胸倉をつかんだ手を離して、
また歩き出した
「……まぁ なんだ 分かったならいい 次気ぃつけろ……行くぞ」
俺が乱れた襟ぐりを直していると
マリ先生が
「ふふふ…タダシ君は友達思いだから……乱暴したこと 許してあげてね?」
といって笑った
「…マリ先生」
「何?」
「俺……封鎖中も ずっとアイツに頼ってたんすよ 最後の決断とかそういうのも
全部あいつに任せて…あいつの負担とか、封鎖内でアイツも参ってるんじゃないか
ってこと あんま考えて無くて……そんなんじゃ、アイツの親友 失格ですかね……」
思わず本音が口をついて出ていた。
(…やべ、俺 何いってんだ急に……)
内心羞恥とかその他の感情で真赤になった俺に マリ先生は
「そんなこと無いと思うわ やっぱりいきなり魔王っていうのは不安だと思うし、
それに会って日が浅い私やタダシ君だけじゃミタカ君も遠慮してしまうかもしれな
い けど、アツロウ君が一緒で、気の許せる人が側にいるっていうのは 案外安心
するものなのよ?」
そういって微笑んでくれた
「そ…ですかね」
「そうよ、みんなで支えあって生きていくのよ」
そう言って歩き出した
「オイ、行くのか?いかねーのか? 早くしろよ」
カイドーが少し先で立ち止まって俺たちを催促する
「あ、ああ 今行くよ!」

俺たちが部屋に入ると 直哉さんはPC端末に座って何か作業をしていた
「ふ・・・アメリカ軍は俺たちをどうにかすることをまだあきらめていないらしいな」
「どういうことだ?」
カイドーが聞くと、直哉さんはPC画面の一つを反転させて俺たちに見せてくる
また英語の演説で、今度はニュースの画像なのか下に字幕がついている

“この圧倒的戦力を放置するわけには行かない”
“人間の脅威”
“戦争の発端となる可能性も…”
などという文章が見える

「ハッ 負け犬の遠吠えだろうがヨ」
カイドーが不愉快そうに吐き捨てる
「そうだな 奴らはいま軍事力の40%を使用不能にされたからな 暫くは動けん
さ 今はその修復で手一杯だろうな」
と笑う
「それで・・・ミタカ君の異変については何かわかったのかしら?」
マリ先生が聞くと
「ああ、単純に言えば―――ベルの暴走だな」
「暴走 だと?」
直哉さんの言葉に、カイドーが聞き返す
「何だ じゃあアレか、倒したベルの悪魔がアイツん中で暴れてるってのか?」
「いや、そうではない ベルの悪魔自体は倒され、力となってミタカに吸収され一
つになった…だが、アイツの身体は他とは違うとはいえ、人間と代わりが無い 基
本俺たちはスキルを精神力を使って放つが、アイツが得たものは魔力だ 馴染むの
に時間がかかるということさ」
直哉さんの説明に、俺たちは納得する
「で、今はどうなってるんすか?」
俺の質問に、直哉さんは
「今は仮眠室でアマテラスに看病させている 正直前例が無いからな、いつ目を覚
ますかは分からん」
「それ、大丈夫なんすか?」
「問題ない、あいつは普通の人間とは違い少々特殊だからな…」
「? どういうことだ?」
カイドーの質問に
「気にするな とくに今後に関係する話ではない」
「…そうかよ」
カイドーは釈然としない様子だったけど、あっさり黙った
「これからどうします?」
マリ先生の質問に直哉さんは
「…悪いが、各自怪我の治療や着替えなどが済み次第、2時間ほど外へ出ていろ」
「………………………?」
「何でです?」
全員が疑問の表情を浮かべたけど、俺が代表して聞いてみた
「あぁ、ここのセキュリティを強化せねばならん…ここの基礎セキュリティは以前
のままだから以前ここに勤めていた連中のパスが有効な可能性がある また、ヒル
ズの広さに対してこの人数では警備もなにもあったものではないだろう?」
直哉さんの言葉に、俺たちはまた納得する
「でも、わざわざ外に出なくてもいいんじゃ?」
「センサーに引っかかっていちいち警報が鳴っては煩いからな、こちらで警報をな
る端からとめていくと作業の邪魔になりかねん」
「なるほど・・・あ、なら 俺手伝ってもいいっすか!?」
俺が興味津々で聞くと、直哉さんは
「言うと思って用意してある」
と軽く息をつきながら俺にメモを差し出してくる
「? なんすか コレ」
疑問を浮かべながら受け取ると
「ここの設備じゃ道具が足りん 外出ついでに買って来い」
「えぇ〜! 俺、プログラミングのほうやりたいっすよ」
俺が文句を言うと
「何もやらずに外に出るか、何か多少は役に立って外に出るか のどちらかを選べ」
とつめたいことを言われた
「……分かりました 分かりましたよ買ってきますって」
「ならばいい お前たちが全員外に出たら、ヒルズの入り口をすべてロックするか
らそのつもりでいろ 携帯とCOMPは有効にしておく 何かあれば連絡しろ」
そう言ってその場はお開きになった。
俺は、とりあえず石化したミサイルの破片をもろに被ってざらざらするマントを脱ぎながら、
自室として使っている休憩室の一つへ向かった。

×

アツロウたちが出て行ってから、俺は管制室のPCを操作し、ヒルズ内の警戒レベル
を引き上げ、窓を含むすべての出入り口をロックした。
夏場だが先端技術の集まったこの建物内ではクーラーが完備されており、外の気温
など関係無い。
アツロウに頼んだ機器が届くまであまり作業は進まないためその間先ほど様子のお
かしかったミタカの様子を見に行くことにした。

建物のちょうど中間の階には、食堂や仮眠室などの事務とは関係の無い部屋が多く
、俺たちはそこをプライベートルームとして利用していた。ミタカは自室ではなく
空き部屋になっている仮眠室のベットに寝かせ、アマテラスに任せておいたが……
果たしてどうなっていることやら

ガチャリ―――と戸をあけると、
なかなか壮観な景色が広がっていた
もともとそんなに狭くは無い部屋に置かれたいくつかのベットのシーツやマットは
引き裂かれ、壁は若干へこんでいる。
あえて表現するならば、地震の後の惨状と大差が無いだろう。
「…………」
俺が部屋の入り口でその惨状を眺めていると
奥の方にいたらしいアマテラスが俺を見留めて近寄ってきた
「あら、直哉さん」
「どうだ、ミタカは」
たずねると、アマテラスはため息をついて
「……なんとも言えませんわね」
と言った
確かにこの部屋の惨状を見てあいつが大丈夫と思う奴はいないだろう
「S魔導結界・陽をつけていらっしゃったので、ギガジャマでスキルを封じるんです
が…如何せんあの術はすぐに解けてしまいますから…それで時たま暴れましてこん
な状況に……今は多少落ち着いてますがたぶんまたすぐにでも暴れなさるかと思い
ますのでご注意を」
アマテラスの先導で奥へ進むと、入り口近くよりもさらに物が散乱し破壊されたそ
の中心に、ミタカが立っていた。
「…………………」
きていたマントはズタズタに破け、壁の破片か何かで切ったのかだらりと下げた腕
からは血がにじんでいる。
もっとも、傷の名残はその血だけで、先ほどの銃創と同じく傷自体はすでにふさが
っているようだったが。
入ってきた俺の気配を感じたのか、ぴくりと肩が震え、次の瞬間には
まっすぐにこちらに襲い掛かってきた
(やれやれ…見境すらもついていないとはな)
俺はそれを避けず、あえてそのまま押し倒される
「直哉さん!?」
アマテラスが助けようとするが、俺はそれを手で制し、俺の上にのしかかり今にも
技を繰り出しそうなミタカを見据える
「………………」
「――……………」
ミタカの眼は俺のそれと同じように真赤に染まり、そこに意思の光は無く、無表情
で虚ろだった。
俺は軽くため息をつくと、そのままミタカの眼前に手をかざし、技をかける
“ギガジャマ”
「!?」
するとミタカが驚いたような顔をして、俺の上から跳び退る
俺は起き上がると距離をとったミタカに声をかける
「お前の力はそんなものか?たかだかベルの力を取り込んだくらいでその力を律し
きれず、あまつさえ暴走を許すとはな……ルシファーにすら認められた、この俺の
弟であるお前の力とは……その程度か?」
そういって軽く凄んでやると、ミタカの発していた殺気が緩み、眼が元の青みがか
った墨色に戻っていった。
「……直哉………」
「ようやく気が付いたか」
「おれ………ヒルズの…屋上に……いたんじゃ…なかった………っけ……?」
「!」
そういいながら力が抜けたようにまた倒れてしまいそうになるのを、駆け寄って支
え、そこまで破壊されていないベットに寝かしつける。
「……事情は後で説明してやる、今はとにかく休め」
返事は無かった
それはすでにこいつが眠りに落ちていたからだろう
「さすがですわね 一時はどうなることかと思いましたよ」
アマテラスに後を任せ、俺は部屋を出た。

×

「あー直哉さんって普通に人使い荒いんだよなぁ……」
俺は秋葉原の家電量販店で指定された品物をいくつか見て周り、値段の安いものを
探していた。
指定するだけ指定しておいて、その資金をもらうことを忘れていたため、すべて自
腹で買う羽目になったっていう……俺って馬鹿?
いちおうひととおりは買い揃えて、あとは2,3個の部品を残すのみだった。
今は近くのベンチで休憩中だった
「んーこれとこれがあるってことは多分…プロバイダー経由なのか?それとも多段
ルータを使うのか?」
俺がメモを眺めながら直哉さんがどんなプログラムやシステムを組むのか予想して
いたとき

「あっ…アツロウ?」
横のほうで知った声が聞こえた
「!」
見ると、つい4日前までは一緒に封鎖内で行動していた慶介だった
俺とミタカが直哉さんに着くと知って、袂を分けたのだったけど…
俺は慌てて立ち上がり、急いで走り出した。
何故走ったかは自分でも良く分からなかったけど、後で思い返すと 正義感の強い
ケイスケに、俺たちのやっていることを非難されて罵られるのが怖かったのかもし
れない。
「待って!アツロウ! 何で走るんだよ」
ケイスケはすぐに追いかけてきて俺の肩を掴む
荷物が多かったのが仇になったみたいだ
「………………」
俯く俺に、ケイスケは
「………ちょっと、話をしない?」
と俺がさっきまで座っていたベンチを示した。
俺はそれに促されるまま一緒にベンチにすわった
「今日、自衛隊とかアメリカ軍が来てたけど…怪我しなかった?」
ケイスケは俺が考えていたのとは違う言葉を発した
俺はてっきり魔王になって神を倒すことをやめろとか そういうことを言われるん
じゃないかと思ってたのに
「…いや、大丈夫だったよ 俺は、吸収追加で怪我一つしなかった 破片被って身
体全体がじゃりじゃりしたけどな」
と苦笑いすると、ケイスケも笑みを返した
「うん、見てたよ 月森君の様子がおかしかったけど…何かあったのかい?」
と心配そうに尋ねてきた
「よく見えたな そこまで」
と俺が言うと
「近くのビルの屋上に上ってね、ユズさんとミドリちゃんとで見てたんだ。 ユズ
さんがすごく心配してたよ、彼のこと」
「そっか…」
ユズたち、俺たちのやり方についていけないっていってたけど…
まだ心配してくれる“友達”でいてくれてんのかな…
「アイツ、な……直哉さんが言うには、ベルの力が暴走したんだ って…今はヒル
ズで休んでるよ」
「そっか……これって急に起こったものなのかな…急に魔王になったから……」
「いや、そうじゃないみたいだ 封鎖中も…ホラ、ベル・デルとベル・イアルを倒
した日の夜もあったし…」
俺が説明を付け加えると
「えぇっ!? なんで言ってくれないんだよ!」
案の定ケイスケも怒った
「わ…わりぃ……あいつも自覚して無くてさ…不安あおるよりは…って思っちまってさ」
「そう………」
ケイスケは釈然としないようだったけど、その辺の事情は汲んでくれるみたいだった
「で、今君たちは……その、神を倒すために…動いてる、んだよね……」
ケイスケが言いづらそうに言う
俺も正直その話題は今こいつと話したくなかった けど、袂を分けた後でも心配を
してくれる三人に対して、それは失礼だと思った。
だから俺も、話せる範囲でしっかり話をしておかないといけない。
「……ああ、そうだよ」
「それは、あの 月森君の従兄の人の意思なんだよね?……それとも アツロウも
神を倒そうって、ほんとに思ってるの?」
ああ、ケイスケは 俺やミタカにも神を倒す意思があるのか ってのが知りたいんだな…
意思も無いのにそんなことする必要はない って心配してくれんだな……
「…俺は正直、まだ迷ってるよ ミタカは…どうだろう 神を倒す意思かは分からないけど、
アイツに前訊いたんだけどさ…ほら、悪魔の中にはさ 神話の中の存在とか多いじゃんか?」
いきなりの話題の飛躍に若干呆然としつつも、ケイスケが話に付いてくる
「? …ああ、うん そうだね……シヴァやアマテラスなんかはわかりやすいね」
「うん、そうなんだよ で、ミタカがさ、あいつ すげ―本読むんだよな それも
節操無く、だからさ神話とか伝承もそれなりに知ってて、前にアマテラスに訊いてたんだよ
“日本の象徴である天皇の血統である天照大神が、なんで魔界で悪魔なんてやってるのか”って」
「またすごいことをするね……」
ケイスケが驚く
「ああ、俺も思った……で、アマテラスはさ それに対して、こう言ったんだ…
“確かに、日本は私が主神として祀られておりますがその日本に封鎖を行うように指示したのが
貴方がたのいうキリスト教というものの神である ということに疑問をもたれましたか?”って 

そこでミタカは“そういえばそうだ 言われてみればおかしい”って言ったんだ…

で、アマテラスは“現在日本では…いえ、日本だけで無く、他の国でも同じなのですが…
絶対的な 神 というときりすと教の神がイメージとして根付いているんですね。
これは、近代化によるわれわれを祀り、信仰する…貴方がたの言葉で言う…
宗 教…の力が弱まっているんですね それと、われわれは紀元前より世界のあちこちに存在しておりましたが、
西暦元年…つまりきりすと教の起こった年… このときに、世界の運行の全てを、今の神が握ってしまったのですね
 それで、われわれ他の神は 悪魔 として魔界におとしめられ、今にいたるというわけですわね”って」
「ベル神と同じだ……!」
ケイスケが驚く
「ああ、ミタカも同じようにいったんだ それで、アマテラスは今の世界についてさらにこんなこといっててさ…

“かつて世界は天界も魔界も人間界も同じ時空に存在していたんですね…
 北欧神話でいうアスガルド とミドガルド それと ニブルヘイム…でしたっけ…
 まぁ、それみたいなもので、それで、我々は我々で、また、人間は人間で暮らしていたんですね。
 超常の力を持つ我々を人間は恐れ、あがめ祀っていたわけなんですが…
 その中で最も力をもっていたベル神がいまの神により倒され…その神によって、
 世界は天界、人間界、魔界と時空を分断されるのです。当事は我々もまだ天界にいたのですが…
 われわれと世界を分断された人間たちがせめてもの統合の象徴として作ったバベルの塔を見た神が、
 人間の結束の力を恐れ、その言語を分断 そして、大天使長ルシファーの反乱により、
 我々も同じように反乱するのでは…と恐れ、彼と彼を補佐する天使たち以外の神、あるいは精霊、
 あるいは妖怪などをすべて魔界へと堕としたのですね。それで、人間界はかつて我々や
 精霊たちと暮らしていた頃のなごりとして、神話や伝承だけが数多く残った…
 というわけなのですね”って…俺、それきいて、ますますわかんなくなっちまってさ…」
「それは……また衝撃的な…」
さすがのケイスケもあまりのことに言葉が出ないみたいだった。
「俺は、正直どうしたらいいのか分からない アマテラスの話を聞く限りは、
 確かに元凶?とかは今の神かもしれない、けど 封鎖内で悪魔…っていっていいのか?
 まぁ、悪魔に人間が襲われたのも確かだ。悪魔は今ミタカが統率してるから大丈夫だろうけど…
 魔界にマッカって通貨があるみたいに、あっちにも国や町があるんだってジャア君が言ってた 
 だから、その時空の分断?とかを壊したりとかそういうことはしたらいけないと思うんだ…
 けど、神が言語を分断したのって、俺たちのためとかじゃなくって、あれの都合だろ?
 だから、そんなのに世界を任せていいのか…でもだからって人間が世界を支配するのは結局同じなんだよな……
 ああ、悪い 俺もまだよくわかんないんだ」
俺は考えるまましゃべってたら、なんか分けわかんないこと言ってたみたいだ。
「まぁ、確かにアツロウが悩むのも仕方ないんじゃないかな……」
ケイスケは今の俺の悩みが理解できたらしくて、同じく悩むような顔をしている
「まぁ、ミタカは俺と違ってその辺の理解力はあると思うから、ただ神を倒すって
 ことだけ考えてるわけじゃないと思うぜ」
俺の言葉にケイスケは
「うん、彼は封鎖内でも僕たちを引っ張ってくれてたもんね……」
「ああ、俺は あのときあいつに頼りすぎてた だから、今度は俺があいつを支えてやらなきゃ…」
ケイスケは
「そっか、神を倒す意思とかはまだ分からないけど、アツロウは月森君の助けになりたいんだね」
なんかケイスケなりに納得してくれたみたいだ
「うん? うん、まぁそうだな…そんな感じ…なんだろうな」
「僕はもうこのことに関しては何もできない、けど2人が今後も無事であることを願うよ」
「ありがとな」
「……うん、そういえば今日はどうして秋葉原に?あの騒動で疲れてるだろうに」
「ああ、直哉さんが…ってコレ言っていいのか?……まぁいいや なんかヒルズの
 セキュリティを強化するらしくってさ…その部品の買い物」

「そうなんだ…ここに来る前にユズさんが月森君のお見舞いに行く 見たいなこと
 いってたから…もし会ったら会わせる事 できないかな? すごく心配してたから」
「うーん…どうだろう まぁ、善処するよ」
直哉さんがなんていうだろう…まぁ、ユズ見ただけで決意が揺らぐような奴じゃな
いと思うけど…ミタカは…
「うん、頼むよ 後さ、封鎖最終日に空が真っ赤になっただろ?でも今は元に戻ってる
 これはどういう原理でやったの?」
ケイスケが俺たちと別れていた後のことを尋ねてきた
「んーとな、あの時 ベルの力の大元のバベルはベリトの手によって魔界にある って話は聞いたんだっけ?
で、それをミタカが手にするのに、ここと魔界を一つにしないといけなかったんだってさ 
直哉さん曰く で、アマネが前に倒した浅草のジゴクテン以外の四天王を倒して…
あ、こいつらは東京と魔界を隔てる結界を維持する役割だったらしいんだけど…
で、そいつらを倒して、魔界化したから世界が真赤になったんだってさ」
「…それ、危なくなかったの?」
今更だけどと前置きしながら、慶介が聞いてくる
「ん〜これも直哉さんからの受け売りなんだけどさ、あと数日もすれば霊的因子?
 のバランスが崩れて人間界は魔界に呑まれたんだってさ…だから、危ないのに何も
 しないのと変わらないってことで、倒したんだ で、その後にミタカが魔王になって、
 魔界つなげたままじゃ神倒して試練の足かせをはずすのに人間界がなくなって意味がない 
 ってことになって、合体で四天王…ジゴクテンだけ作れなかったんだけど…こいつらに
 また結界を張ってもらって、封鎖が起こる前の状態と同じにしてもらったんだ。
 悪魔召還も一応俺たちだけがやってるからバランスはそんなに崩れないみたいだ。
 オークションでも分かるようにさ、悪魔使いは俺たちだけじゃないから多分大丈夫だと思うぜ……
 まぁ、俺たちがやってることは大丈夫じゃないんだろうけどな……」
「なるほど……ごめん、アツロウ いろいろと話させて…なんかスパイみたいで…」
ケイスケが神妙な顔をしていう
「いいって、きにすんなよ 直哉さんも言うななんていってないし…
 それに、俺も誰かに話聞いてもらいたかったしな、まだ迷ってるけど、俺には俺のやるべきこと
 がわかった気がするからさ それに…賛同して無くても、理解してくれる人がいるってのは やっぱ大事だと思うんだわ 俺」
そう言って俺はベンチから立ちあがった。
「いくのかい?」
「ああ、あと2,3個買い残しがあるんだ」
「そっか、気をつけてね」
「ああ、サンキュな ケイスケ」
俺はなんだか軽くなった気持ちで残りの買い物を済ませ、帰途に着いた。

×

「…つー訳で、今悪魔どもに捜索させてる最中っす」
俺の報告に、ジンさんは神妙な顔をする
「…そうか」
「…生きてる、かはわかんないっすけど 悪魔どもに訊いたら10年位前にも人間が
魔界に来たことがあったってことで、そん時来たのはなんでも小学生のガキ2人らしいんすけど 
どっちも生きてこっち帰ってきたって言うんで、可能性はあると思うンすよ」
俺が励ますつもりで言った言葉に、ジンさんはやっぱり
「……そうか」
とだけ返した。
……この人は恨んでいるんだろうか アヤさんの好きだった世界を、こんなにしちまった俺たちを…
「………」
黙った俺に今度はジンさんが
「あぁ、悪いな 俺も感謝してるさ …ただな、俺には何もできないのかと思うと…どうもな」
ジンさんも、己の無力を呪った一人なんだろうか
大事な人一人守れねぇと自分を責めているんだろうか…
「タダシ、お前は意図的ではないにしろお前の大事な人を巻き込んだんだ ならばせめてものケジメとして、
俺みたいに守れなくなって消えられないように、しっかり捕まえとけよ」

ジンさんは言った
この人は…俺たちのやってることに恨み言一つ漏らさずに、自分の方は守れなかったってのに
まだ俺のほうにある大事なものの心配をしてくる、この面倒見のいい大人に俺は感謝の気持ちもこめて精一杯の返事をした。
「うっす!」

その後は、軽く世間話をした。
「…じゃあ、何か?お前ら自衛隊もぶっとばしちまったってのか?」
「まぁ、そうっすね」
「すごいな、魔王とやらは」
「…俺は力が手に入っただけでもう万々歳っすけどね」
「…はは、お前らしいよ……で、魔王は本当に あのミタカなのか?」
ジンさんはまだ信じられないというように聞いてくる。
「マジでアイツっすよ 今はちょっとヒルズで休んでますけど」
「!? アレで怪我でもしたのか?」
心配そうなジンさんに、俺は手を振って答える
「なんかまだ魔王の力を扱いきれないとか何とかってアイツの…従兄?がいってたっすけど」
「…そうか、まぁなんにせよ 乗りかかった船というし、決めたなら 何を言われ
ようとお前らのやることを果たせよ それが務めってヤツだ」
ジンさんのアドバイスに、俺は思わず
「恨んでないんすか?」
と訊いちまった
「は?」
聞き返すジンさんに
俺はもう一度聞く
「ジンさんは…世界をこんなにしちまった俺たちを…恨んでないんすか 正直、俺
は後悔してないんすけど」
ジンさんは瞬きした後、葉巻を取り出し火をつけて
うまそうに煙を吐きながら言う
「恨んでない…といえば嘘になるのか…それは俺にもわからねぇが……少なくとも、
アヤが戻ってくる、もしくは行方不明以外の形で何らかの決着がつけばそれでもいいんじゃねぇかとは思う、
まぁ戻ってきたアヤがなんていうかはしらねぇが…お前らのこの動きのおかげでアヤへの手がかりがつかめそうなんだ、
それを恨むってのも…何か違う気がしてな…悪ぃ、俺もやっぱりよくわかってねぇわ 忘れてくれ」
そういって点けたばかりのタバコをもみ消した
「イエ、こっちも変なこと訊いてすいませんっした」
「いいさ」
やっぱりジンさんは俺の目標だと改めて思わされる
俺にもこれくらいの寛容さがあるとマリ姉にも…アイツらに対しても…良くしてやれるかもしれない。
改めて俺の先に行くこの人をスゲエと思った。

×

「…えっと…どうしよ」
私は自衛隊とアメリカ軍が撤退した後のヒルズに戻ってきた
あの時ミタカが撃たれて、何か分けわかんないことになって、すごい攻撃をしようとしたらしいミタカを
直哉さんが殴って止めた…のかな…アレ
とにかく、あんな怪我でいきなりあんな技を出そうとしたんだから、やっぱり大事に至ってるんじゃないかって思って、きてしまった
…………けど……
「どうやって入ろう…」
ビルの脇から見ているヒルズは、デカラビアが何体も警備していて、
しかも入り口のまん前にはオーディンが立ってる
オーディンとは面識あった…というか、封鎖中もお世話になったけど…
正直COMPの制御を離れた今でも覚えてくれてるかどうか……もし覚えてなかったら、多分雷で一発だし…
「…どーしよ……せっかく来たのに…」
そんなことを、もう何度考えただろう…さっきからこの辺をうろうろとしているだけで…
「……ぐだぐだ考えても仕方ないよね うん」
と、せめて非常階段とかから忍び込めないかと思って、
(よし!)
と足を踏み出したとき

「ユズ?」

と声とともに肩に手をかけられて―――
「きゃああぁぁぁあぁぁぁっっっ!!!!?!?!?」
「うわっ!?」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいっっ!!!」
「は?おい待てって、慌てんなって 俺だよ アツロウだよ」
やばい、見つかった!と思って逃げようとした手を
声をかけてきた人物が私の腕を掴んで引き寄せた
「へ……え?………あ、アツロウっ?」
見ると、見慣れた顔がそこにあった
もう片方の手には何か大型家電量販店のロゴの入ったスーパー袋を抱えている
「おう、どうしたんだよ こんなとこで」
とつかんだ手を離す
「……うん」
アツロウに言っちゃって大丈夫なのかな…アツロウは今じゃ魔王軍の一員だし…
でもそれ以前に友達で……
「…ミタカの見舞いだろ?」
躊躇していると、アツロウが指摘してくる
「えっ!? あっ なんでわかったのっ?」
驚く私をよそに、アツロウは
「こいつ買いに行ったらケイスケに会ってさ 訊いたんだ」
とスーパー袋を掲げながら言う
「あ…なんだそっか……びっくりしたぁ」
と胸をなでおろしていると
「来いよ、たぶんだいじょぶだから」
と先に歩き出して手招きしてくる
「え、いいの?」
「おう、たぶんな まだセキュリティも完全じゃないし ばれなきゃいいだろ?」
とアツロウが言う
会える、ミタカに会える ということでなんかもう 胸がいっぱいになってしまった
「ちょっと待ってろよ…いまロック開けてもらうから」
とアツロウは携帯を取り出して、電話を始めた
「…あ、もしもし? 直哉さん?今帰りました え、すいません 
だって資金くれなかったじゃないすか 自腹っすよホントに…後で請求しますからね 
で、途中ミタカの見舞いしたいんで、パーツ仲魔に運ばせるんで、仮眠室までのセキュリティきってくださいよ 
じゃ、お願いしまーす」
どうやら相手は直哉さんみたいで、なにかやり取りをしたあと、携帯をポケットにしまう
「じゃ、行くか」
と私を振り返るので、私はうなずき
アツロウの後ろにくっついて、ヒルズの中に入る
「…そんなにくっつかなくても、だいじょぶだって」
苦笑するアツロウをよそに、私はアツロウの服のフードを掴んだまま
「だって知らない人間 って襲われたら怖いじゃない 私、もうCOMP使えないんだし…」
「そういう奴がいたら俺が守ってやるって」
アツロウは朗らかに行って入り口をくぐる
そのときに立っていたオーディンが気づいて軽く会釈する
「ん、ご苦労様 ありがとな」
アツロウもそれに答える
とそのとき
「おや、ユズ殿?」
「! はいいっ」
いきなり名前を呼ばれて思わず声が裏返っちゃった……あれ、でも今、『ユズ殿』って…
オーディンを見ると
「ひさしぶりですな 息災か?」
とオーディンが訊いてくる
「…私のこと…覚えてる…んだ?」
私が恐る恐る訪ねると
「覚えておりますとも お元気そうで、何より 今日は我らが魔王・ミタカの元に?」
オーディンは笑って言った
「う、うん…お見舞いに…」
私が答えると、オーディンは
「それは彼も喜ばれるでしょうな」
って言って おきをつけて って見送ってくれた

「な、だいじょぶだったろ?」
アツロウが言う
「うん…よかった……」
そしてエレベーターに乗って、ミタカが寝ているっていう仮眠室…?に向かった
途中でアツロウは、COMPからモー・ショボーを召還して、荷物を直哉さんのもとへ届けるようにいった
モー・ショボーは私に気づくと
「あら、久しいですわね お元気でした?」
って挨拶をして飛び去った
「…この階だな」
エレベーターが止まったときにアツロウが『開』のボタンを押しながら言った
「ここはさ、食堂とかがそろってる階でさ、俺たちの部屋もここにあんの で、今ミタカが寝てんのは…あの部屋だな」
と廊下の奥のほうを指差していった
そしてエレベーターから出たとき、不意にアツロウの携帯が鳴った
「うおっ!?なんだ?」
とりあえずポケットから携帯を取り出して出ると、
「ハイ……はい……う゛、やっぱばれてましたか…今回だけってことで お願いしますって…
え、いいんすか? ありがとうございます! はい、え?奥じゃなくて、その向かい? 
…あ、はいわかりました じゃ」
携帯を切ったあと、アツロウは苦笑して
「やっぱバレてた」
といった
「え!?ちょっと、ヤバイじゃん 私どうなるのよ!」
と思わずアツロウに掴みかかると
「どー どー どー…落ち着けって 直哉さん 今回だけ許すって許可してくれたから 
だいじょぶだから な?」
となだめられて、掴みかかった手をおろす
「はぁ…もう、びっくりさせないでよ……直哉さん怖いんだから…怒ると」
「悪い悪い…あ、それとさ ミタカの部屋 奥っていったけど 
その向かいになったって まぁ、まだ入ってないし大差ないよな 行こうぜ」
と大して悪いと思ってないような感じで また歩き出した
部屋に入ると
ミタカはベットで眠っていた
封鎖内でもそうだったように身じろぎ一つせずにぐっすり眠っている
「何よ……もっと重症っぽいの想像してたのに…無事じゃない…」
と私がつぶやくと
「うーん、まぁ そうだな」
アツロウもあまりの平和そうな寝顔に思わず苦笑をもらしていた
「…あ、でも 顔色はあんまりよくないんじゃない? もともと白いから分かりづらいけど」
私の指摘に、アツロウは顔を近づける
「あ、ほんとだ 少し悪いな」
それから今日は鉄分の多いメニューにしないといけないかな 
なんて お母さんみたいなことを言っていた
あの時すごく心配した分、今普通に眠っているミタカの顔を見ているたら 安心してしまった
これなら大丈夫かな
説得しようと思ってたけど、いろいろありすぎて、なんかもうそんな気分じゃなくなっちゃった
………それに…
「…アツロウ、私、そろそろかえるね」
「え、もういいのかよ 今回だけって言ってたんだし もう少しゆっくりしてけよ」
なんなら眼が覚めるまでいてもいいし
とアツロウが言うけど 私は断った
「…ううん、いいの あの時私は付いてけないっていったのに、また会っちゃってる 
だから いま話しちゃうと…やっぱり残っちゃいそう 
でも、覚悟も無いのに残って文句ばっかり言ってたら 迷惑だもん」
「……そうか…? それでもミタカは喜ぶと思うぜ? 
俺もユズやミドリちゃんやケイスケが戻ってきてくれるなら、
それはそれでうれしいし…」
とアツロウは言ってくれるけど、やっぱりそれではダメだと思う
「…私、待ってるから」
いきなりの言葉に アツロウは眼をしばたかせて、訊き返してきた
「え、何?」
「だから、アツロウとミタカが、その…神様?を倒したら 
ちゃんと私達のところに戻ってきてくれるように…私、待ってるから……だから 
絶対に無事でいてね 間違っても魔界とかそっちに住んじゃったら嫌だよ?」
決意にちょっとだけ不安をにじませて言うと
アツロウは分かってくれたようで
「……わかっ た 努力する、俺たちは、天使に人間が弱点だって思われないように、
人間を助けたりかばったりはできない………けど、被害が広がらないように 頑張るから…」
待っててくれ
と言って微笑んだ
「うん、じゃあ またね」
私はもう一度だけミタカの寝顔を見て、仮眠室を後にした
アツロウに召還してもらった仲魔に案内してもらって、ヒルズから出た
そのときにオーディンは
「ご無事で」
って言ってくれたから
私も「身体に気をつけてね」
って返して、お母さんの待ってる家に帰った。

×

「……ミタカ」
俺は誰もいなくなった仮眠室で
近くにあったいすを持ってきて座り、眠ったまま動かないミタカの寝顔を眺める
「…たとえ、どんなことがあっても…絶対に、生きて返ってこような」
ミタカは反応しない
「俺…まだ迷ってるけど……お前の支えになれるように がんばるから」
ミタカは反応しない
「だから……何かあったら、ちゃんと俺たちに吐き出してくれよな」
ミタカは反応しない
俺はミタカの白い手を握り願わくば、この手があまり血に染まりませんように
できることなら、人間を傷つけませんようにと願った

窓の外では、魔界の到来のような 赤々とした夕日が輝き、ゆっくりと傾いていく
そして2人の少年を優しく照らし出していた。




アトガキのようなもの
だいぶ妄想入れまくってます。あと名前がカタカナになったり漢字になったりすいません。
なんていうか、ベルの力の暴走とかを書きたかった今回…
管理人の中では ベルの力=すべての悪魔の技を使うことが出来る という感じなので、
メギドラダインも飛翔もばっちりです。たぶんあと変身とかも出来るんでしょう(笑)
時間在ればまた主人公設定とかも載せてみたいです。 この小説の続きになる話も考えてるので
是非また載せたいと思ってます。



フレーム未対応、携帯電話の方は以下のリンクから戻ってください。
対応している方がこちらを押すと携帯用Topに戻ってしまいますのでご注意ください

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