夜の病院に、声が響く。 非常燈だけが足元に点った廊下で、一人の男が言葉を発する。 「・・・ああ、頼む・・・・・・書類を上に押収された以上、彼女を造ったのが誰なのか特定できそうなのは、 俺が知る限りお前しか居ない」 二十代の男だ。 黒のスーツに、赤いネクタイ 髪は白く、手には室内だというのに革手袋をしており、携帯電話を片手に壁に背を預けている。 電話口から声が返ってくる こちらは女の声だ。 凛とした、どこか鋭さを感じさせる声だ。 『・・・了解した・・・恐らくはエルゴ研の生き残りだろう・・・・・・ だが、いいのか?許可も無くこちらに彼女を預けて』 男はどこか遠くに眼を遣り、言った。 「・・・構わん、上は先日の件で押収したバイオノイドに注目している・・・ 比較験体として彼女の引き渡しを命令されるまでの数日の間にケリがつけばいい」 『そうか・・・なら、出来るだけ早く調べさせよう』 「・・・すまんな」 女の声に、男が眼を伏せて言う。 『・・・なに、構うものか・・・・・・だが、なぜ急に彼女の調査を?』 不思議そうに尋ねる声に、男が返す。 「・・・彼女には友人も、人生もあった・・・・・・だがそれを利用した裏で今回のような 事が行われたことに、個人的に納得が行かなくてな・・・・・・・・・それに・・・」 そこで男が言い淀む 『・・・・・・・・・・・・』 電話口では続きを待つような沈黙が流れた。 「・・・それに・・・・・・子供が親を知らぬまま逝くというのは不憫でならない」 それはかつて親を亡くした、また兄弟同様の親友を亡くした男だからこそ言える言葉だった。 『・・・お前らしいな』 苦笑しているのか、女の声に幾分か柔らかさが混じる。 「・・・勿論、公私混同だとわかっている・・・・・・だが」 男は言葉を続けながら、素早く廊下に眼を遣る。 『・・・どうした?』 電話越しにも男の様子が変わったのが伝わったのか、女が訝しむ。 「・・・すまん、誰か来たようだ」 『そうか、わかった』 「また折り返す」 短く交わして携帯を畳むと、計った様に一人の少女が現れた。 「真田さん・・・今の・・・叶鳴の・・・・・・?」 三編みを頭の両サイドで留めた、彼女――守本叶鳴――の友人、茅野めぐみだった。 男――真田明彦が無言で頷くと、めぐみは表情を変えて 「叶鳴のこと・・・・・・まさか、解剖とか・・・」 と呟いた。 真田は首を振ると、 「いや、そんな事は俺の権限に掛けて絶対にやらせはしないさ・・・ただ・・・・・・」 力強く言いかけて、また周囲に視線を巡らせる。 「あの、言ったらマズいコトなら・・・」 とめぐみが言いかけたのを制して真田は言った。 「いや、君はこの事について彼女の友人として知る権利がある・・・そして俺も、 聞かれた以上答える義務がある」 その言葉にめぐみは頷いて、 「・・・なら・・・聞かせてください」 と言った。 「・・・ほら」 「・・・・・・ありがとうございます」 電気の消えた休憩所で缶コーヒーを買い、設置された椅子に座る。 それから微妙に甘いコーヒーを啜り、話しはじめた。 「・・・彼女を造った人間を見つけてやりたくてな・・・俺の独断だが知り合いに調査を依頼したんだ」 俺の言葉に彼女は訝しげな目をした。 「・・・調査・・・・・・ですか」 「ああ」 「・・・知り合いっていうと・・・刑事仲間か誰かですか?」 「いや、桐条グループの奴でな・・・」 真田が呟くと、めぐみは驚いたような顔をした。 「桐条グループって・・・凄いところに知り合いが居るんですね・・・ってか、それと 叶鳴と何の関係が・・・?」 「・・・俺が、かつてペルソナ使いだったのは知ってるな?その時は俺以外にも何人か いてな・・・その中に、彼女の様な“心を持つ機械”がいたんだ。そいつを造ったのは 桐条グループだったから・・・もしかしたらかつてそこに勤めていた奴なんじゃないかと 思ってな」 「・・・叶鳴以外の・・・・・・」 めぐみはそう呟いて、黙ってしまった。 「そいつは人と機械の狭間で苦しむこともあったが・・・最終的に人と同等の・・・いや、 それ以上の“心”を得た・・・それを可能にしたのは、アイツのおかげかもしれん・・・ 今のおまえらを見てると・・・昔を思い出すよ」 そういって真田は眼を閉じた。 脳裏に浮かぶのは、今はめったに連絡を取らなくなったかつての仲間達だった。 (・・・めぐみは・・・岳羽に似ている、拓郎は・・・順平か・・・守本がアイギスなら・・・ アイツは慎ってところか・・・?) 今居るペルソナ使いの少年達と、かつての仲間を重ね合わせる。 それから、こんな事件にまたしても大人の都合でまだ若い彼等を巻き込んだことに 軽く自己嫌悪する。 (・・・アイツが命を張ったってのに、俺達はまたかつての過ちを繰り返そうとして居る・・・ まだ、お前があそこから解き放たれるのは先の様だ・・・すまんな) 眼を開けると、めぐみが真田の顔を興味深そうに覗き込んでいた。 それからうっすらと微笑むと 「…真田さんにとって、大事な人たちだったんですね」 と呟いた。 「…そうだな、今はあまり連絡を取っていないが…あの時あいつらに会ってよかったと 思っている」 「…私も、叶鳴だけじゃなくて…神郷君や、拓郎…それに、まゆりちゃんも 会って良かったって思います」 胸に手を当てて、呟く 「…だろうな」 真田も笑う 「俺たちの都合で巻き込んですまない、だが…あと少しだ」 「そうですね」 夜の病院で、二人は暫く絆を結んだ仲間に思いを馳せた。
PERSONAtrinity soulネタ小説です
親に録画したアニメをすべて消されて時系列とか展開うろ覚えですがorz
叶鳴ちゃんがいってしまったあとのイメージで、真田が過去話的な…
PtsとP3をどーしてもつなげたいと思いこうなりましたww